[用例研究 153] 〈直説法の條件節〉
現在や未來の單なる假定を表はす假定法現在(※動詞の原形を使ふので假定法原形と呼ぶ人もゐます)をif 節で用ゐるのは古風な英語であり、現在ではif need be(「必要なら」)のやうな慣用句や法律關聯文を除いてはあまり見かけるものではありません。直説法現在の動詞で代用してゐます。
□參考例文
153.1 You won't be able to pay by check if you don't have your ID card.
身分證明書がなければ、小切手で支拂ふことはできないでせう。
なほ、假定法現在は提案・要求・當然などの意味を表はす that節で用ゐられることがあります。話し手の腦裏に架空のこととして想定されてゐる事態を表はします。
□參考例文
153.2 She suggested that I be the leader.
彼女は私がリーダーになることを提案しました。
153.3 It's important that everybody be told all the facts.
すべての人がすべての事實を知らされるのが大切です。
※ イギリス英語では〈should+原形〉となります(ここでは should be)。
[用例研究 153] 〈直説法の條件節〉
(BLONDIE By Dean Young & Stan Drake)
1 How would you and Blondie like to come over to our house for dinner tomorrow night?
1 Sounds great! Can we bring anything?
2 Sure! Have Blondie make some of those terrific rumaki appetizers ... oh, and that onion and cheese thing she invented ... and what about those chicken puffs with the cream sauce ...?
3 Listen, maybe it would be easier if Cora and I just come over to your place.
[解説]
1
・How would you like ~: 「~はいかがですか」。ここは不定詞句がつづいてゐますから「訪問すること」を提案・勸誘してゐるのでせう。助動詞を過去形 would にして控へ目、叮嚀な表現にしてゐます
□參考例文
How would you like Japanese food?
日本の食べ物はいかがですか。
How would you like to live in Tokyo?
東京に住んでみたらどうでせう。
・Sounds great: sound は動詞で「~と聞こえる」。ここは主語(it や that か?)が省略されてゐます。〈SVC〉の第二文型であり great は形容詞です。
・can: (話しことばで、好意・意圖を示して)「~してあげる」「~してくれる」
□參考例文
Can I give you a ride?
車に乘せてあげませうか。
2
・使役(have): 〈have+O+C〉 「(當然してもらへることを)~させる / してもらふ」の意味。have は「持つてゐる」の意味ですから、靜的な印象があります。意味の幅が廣いため文脈に注意することが大切です。
□參考例文
Shall I have him call back?
彼に折返し電話をかけさせませうか?
I must have my car repaired by Saturday.
私は土曜日までに車を修理してもらはなくてはならない。
We'll soon have your car going again.
車をじきに元通り動くやうにいたします。
(※他の使役動詞(make / get / let)については、「英文讀解のヒント(4)」(2014年5月28日付)に解説や例文があります。畫面右の Back Numbers で該當の月・年をクリックし、Calendar で該當日をクリックしてご利用ください。)
・rumaki: ポリネシア由來の前菜。
・what about ~?: 「(相手の意嚮をたづねて)~はどうかね」「~についてはどう思ふかね」
・chicken puffs: 鷄の胸肉を使つた料理。
3
・ it would be easier if Cora and I just come over to your placeの部分は、上述のやうに、條件節を直説法現在で代用し、あとの助動詞を過去形にして控へ目な推定・結論にしたものかと思ひます。
・it: いはゆる「状況のit(Situation it / Indefinite it)」で漠然とその状況を表はしてゐると解するか、或は「豫備のit / 先行のit(Preparatory it / Anticipatory it)」として、名詞使節を代表してゐると解するか紛はしいところがあります。[意味把握チェック]では「ことはもつと簡單だらう」としてみました。
□參考例文: 紛はしい it の主語でif 節がつづく例文を擧げてみます。上は直説法現在、下は假定法過去の例です。
It will be a pity if we have to ask her to leave.
彼女に去るやうお願ひしなければならないとすると殘念です。
It would be sad if my father had to leave his job.
(可能性は乏しいと思ふが)父が退職しなければならないとしたら悲しむべきことでせう。
[意味把握チェック]
1 「明日の晩は君と Blondie とでうちに夕食を食べに來ないか」
1 「いい(話)ですね。何か持つて行きませうか」
2 「もちろん。Blondie にあのすばらしい rumaki の前菜をいくつか作つてもらつて…ああ、それに彼女の考案したあの玉葱とチーズの料理…またクリームソースを添へたあのchicken puffs はどうだらうな」
3 「なあ、Cora とわしが君の家に行けば、ことはもつと簡單かもしれんな(/簡單だらうな、多分」
[笑ひのポイント]
・招待・被招待を逆にしてしまひました。