英文讀解自修室

  - in the historical Japanese kana/kanji orthography

・用例研究 132 <直説法と假定法>

2018-06-11 | 用例研究

[用例研究 132]  <直説法と假定法>

 

  (SHOE  By Jeff MacNelly)

 

1  I know Mr. Chisel is gonna ask me, and I don’t know.

2  Oh well, the best defense is a good offense...

3  He’ll never call on me if he thinks I know it.

 

[解説]

・gonna: =going to

・Chisel [tʃízəl]: スコットランド系の family name と思はれます。chisel には「鑿」とは別に、俗語で「ごまかす」「不正をする」といつた意味があります。

・offense: ふつうは [əféns] と發音しますが、defense [diféns] と對比させて「攻撃」の意味で使ふ時には [fens / ɔ́:fens]、併せて「防禦」の意味で [dí:fens] と發音することがあります。offense は「攻撃」の意味では抽象名詞で不可算ですが、形容詞がつくと具體的な例や種類を表はし、a / an をつけることもあります。

  漫畫の “the best defense is a good offense”(最良の防禦は有效な攻撃である)の表現には次のやうな言ひ方もあります。

□參考例文

132.1     The most effective defense is offense.

                 攻撃は最大の防禦なり。(←最も效果的な防禦は攻撃である。)

132.2     Offense is the best defense.

                 攻撃は最良の防禦。

・call on: (授業で生徒に)あてる

・3の文は、接續詞 if を用ゐて「~であれば…だらう」といふ譯になり、日本語譯で文の上面だけでみれば直説法か假定法かの區別はできません。この文では假定法ではなく直説法の動詞、助動詞が使はれてゐます。

  英語には、話し手の意識・心的態度によつて3種類の動詞・助動詞のかたちがあり、「法(Mood)」と名づけられてゐます。

1  「直説法(Indicative Mood)」: ある事柄を(話し手の意識の上で)事實として或は現實に起こる可能性があることとして述べる動詞のかたち。

2  「命令法(Imperative Mood)」: 命令・要求・提案などとして述べる動詞のかたち。

3  「假定法(Subjunctive Mood)」: 話し手が心の中で考へた假定として或は現實に反する事態の假定として述べる動詞のかたち。

  接續詞 if を使ふ例文を眺めてみませう。例文は、下記の書物からの引用です。

(a) If it is fine tomorrow, we’ll go fishing.

(b) If it should be fine tomorrow, we would ( will ) go fishing.

(c) If it were fine today, we would go fishing.

(d) If it had been fine yesterday, we would have gone fishing.

(堀口俊一・吉田劭, 英語表現文法, [聖文社, 1984], p. 287 から)

[解説]

(a) 「明日天氣なら、私たちは釣りに行きます。」これは、假定法ではなく直説法の文です。話し手は、あり得ないやうなことを假想して述べてゐるのではありません。単に明日の豫定・條件を述べた文で、天氣の見込みには觸れてゐません。晴れれば行くでせうし、雨が降つたらやめるかもしれません。どちらもあり得ます。漫畫の3のせりふはこのタイプです。先生がどう思ふかわからない状況での條件設定であり、結果の推定です。どちらもあり得ます。

(b) 「明日天氣になつてくれたら、私たちは釣りに行きます。」これは、今雨が降つてゐたり、雨になる見込みが大きい状況で述べてゐる文です。未來のことを述べるから、「假定法未來」と名づけられてゐますが、should が使はれるため假定法過去に分類する人もゐます。混亂を嫌つて should / were to などとそのままで分類に使ふ人もゐます。

(c) 「けふ天氣だつたら、私たちは釣りに行くのだが。」これは、今日天氣がよくなくて釣りに行けないといふ現實の状況にあつて、話し手が假想として述べてゐる文です。「晴れてゐれば行くのになあ」と殘念がつてゐるのでせう。現在の氣持を述べてゐるのですが、動詞、助動詞の過去形を使ふので「假定法過去」と名づけられてゐます。

(d) 「昨日天気だつたら、私たちは釣りに行つたのだが。」これも話し手の假想で、昨日天氣がよくなくて釣りに行けなかつたことを殘念に思ふ氣持で述べてゐます。過去のことについて現在の思ひを語つてゐるのですが、過去完了時制を使ふため「假定法過去完了」と名づけられてゐます。

(※「假定法現在」は、條件文では今はほとんど使はれてゐませんのでここには含めなかつたものと思はれます。)

 

[意味把握チェック]

1  「Chisel 先生はぼくに訊かうとしてるつてわかる、でもつて(答が)わからない」

2  「あ、さうだ、最良の防禦は有效な攻撃である…」

3  「(ぼくが)答がわかつてると先生が思つたら、ぼくには決してあてないだらう」

 

[笑ひのポイント]

・小賢しい目論みで Skyler 君は手を擧げてゐます。「うまい考へ」で笑ひを誘ひます。