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今年もやってるやってる~

この階級、この選手(フリオ セサール チャベス:スーパーライト級②)

2017年11月19日 01時09分11秒 | ボクシングネタ、その他雑談
1990年代初頭からの約四半世紀、それぞれの階級で印象に残った選手を挙げていっております。記載上のルールは各選手、登場するのは1階級のみ。また、選んだ選手がその階級の実力№1とは限りません。まあ早い話、個人的に思い入れのある選手ということになります。

今回登場するのは史上最強のメキシカンと言われるフリオ セサール チャベス(メキシコ)。スーパーライト級、メキシコという枠を超えて、ボクシング史に残る名選手の一人です。


(メキシコの英雄フリオ セサール チャベス)

2月20日(9ヵ月も前か)からスーパーライト級に階級アップしましたが、その時にお届けしたのは元WBA王者の平仲 明信(沖縄ワールド)。平仲が世界王座を獲得した1992年4月、同じ興行でチャベスはWBC王座の防衛戦を行っており、アンヘル エルナンデス(プエルトリコ)という曲者を5回TKOで破っています。これは有名な話なんですが、平仲は「チャベスはボクシングの神様みたいな存在。自分は彼とは王座統一戦を行うつもりはない」というコメントを残しております。

自分(Corleone)がボクシングに興味を覚え、海外の選手にも目を向け始めたとき、最強の選手として挙げられていたのがこのチャベス。自分にとって、ボクシングの原点的選手の一人であります(もう一人は当然の如くリカルド ロペス)。

当時、チャベスの名前は頻繁にボクシング・マガジンで目にしていました。どの号だか記憶にありませんが、

「かつてのヘビー級王者で49戦全勝のまま引退したロッキー マルシアノ(米)という偉大な選手がいた。しかしそのマルシアノの記録を驚愕する選手がいる。その選手とはフリオ セサール チャベス。70数戦して全勝。すでに世界3階級制覇を果たした選手でこれまでにダウンの経験はゼロ」

そのようは触れ込みでチャベスの記事が載っていましたが、それを読んだ時、率直に「すげー」と思いました。世界3階級制覇の選手は結構いる2017年11月末現在。しかし1990年代初頭は、世界主要団体は2.5。IBFは半主要団体で、WBOはまだまだマイナー扱い。驚くなかれ老舗のWBAとWBCの管理状態は非常に優れていました。そんな時代にチャベスはWBCスーパーフェザー級王座を皮切りに、WBAライト級王座を獲得し2階級制覇に成功。ライト級のWBC王座の統一に成功した後、WBCスーパーライト級王座を獲得し3階級制覇達成。そして同級のIBF王座の吸収にも成功しました。

チャべスのボクシング・スタイルは非常に地味です。堅いガードからプレッシャーをかけていき、得意の右クロス、左ボディーで相手を徐々に弱らせていく。パンチは思い切って振らず、8割方で放っていきました。その80パーセントのパンチが常に連打で飛んできて、しかもフルランドに渡って放たれていきます。チャべスのガードは固く、加えてブロッキングの技術と言ったら神業。しかし顎はとんでもなく頑丈。スタミナは天下一品ときます。相手にとったらこんなに嫌な選手はそうはいないでしょうね。


(チャベスと言えば左ボディー。写真は1993年2月に行われたグレグ ホーゲン(米)戦)

パンチは8割の力で放つと書きましたが、通算115戦(!!!)してのKO率は75%。これは驚異的な数字ですよ。速攻型ではないため、初回KO勝利は10未満。世界戦での初回KO勝利はゼロだったと思います。


(お化けみたいな戦績の持ち主、フリオ セサール チャベス)

ブロッキングの件ですが、1994年1月にチャべスが91戦目(!!!)で初の黒星とダウン喫したあと、名トレーナーであったエマニュエル スチュワート氏に短い間でしたが従事しました。スチュワート氏といえばトーマス ハーンズ(米)やレノックス ルイス(英)、ウラジミール クリチコ(ウクライナ)を育てた、または再生させた方です。そのスチュワート氏が「チャべスのブロッキングの技術の高さには驚いた」と言わしめたのですから、それがどれだけ高いレベルのものだったかは察しが出来るでしょう。

スロースターターのチャベスのKO/TKO劇がよく見られたのは中盤戦以降。8割方の力で放つ連打による対戦相手のダメージは計り知れなく、敗れていった選手の顔は大抵パンパンに腫れていました。

100戦以上のキャリアを誇るチャベスの一番有名な試合が、1990年3月に行われたメルドリック テーラー(米)とのスーパーライト級王座統一戦です。その試合は最終回終了2秒前でチャベスがストップ勝利を収めました。テーラー陣営は試合を優位に進めていたと思っていたために、その試合のレフィリーを務めたリチャード スティール(米)に猛抗議。実際に試合後に発表された公式採点でも、テーラーが2対1の判定(108-101、107-102、104-105)でリードしていました。「もし」というのは禁句ですが、この試合が判定決着となっていれば、テーラーが勝利を収めていたことになります。しかし「もし」、その試合が15回戦で行われ、試合が継続されていれば、大げさではなくテーラーは生命に関わるほどのダメージを被っていたことでしょう。ダウンから立ち上がったテーラーの顔はパンパンに腫れ上がっており、逆にチャベスはケロンとした表情をしていました。この伝説の一戦(1990年の年間最高試合に選ばれています)、採点では測れない両者の力の差があったように思います(チャベスが圧倒的に上)。

 
(テーラーも多いにチャベスを苦しめたのですが、徐々に徐々にとダメージを深めていきました)

チャベスが獲得した王座(獲得した順):
WBCスーパーフェザー級:1984年9月13日獲得(防衛回数9)
WBAライト級:1987年11月21日(2)
WBCライト級:1988年10月29日(0)
(*ライト級王座の統一に成功)
WBCスーパーライト級:1989年5月19日(12)
IBFスーパーライト級:1990年3月17日(2)
(*スーパーライト級王座の統一に成功。IBF王座は2度防衛後に返上)
WBCスーパーライト級:1994年5月7日(4)

チャベスがプロデビューを果たしたのは1980年の2月5日。そして最終戦は2005年9月。まあ、よく戦いました。チャベスの世界初挑戦は1984年9月、同胞マリオ マルティネスと当時空位だったWBCスーパーフェザー級王座を争いました、その時までにチャベスはすでに、43戦全勝という記録を誇っていました。特にデビュー最初の3年間はほぼ毎月試合をしていました。

スーパーフェザー級の王座の9連続防衛したあと、当時の中量級きっての実力者エドウェイン ロサリオ(プエルトリコ)の持つWBAライト級王座に挑戦。実力伯仲の選手同士の対戦と思われていたんですがどうしてどうして。チャベスは実力者にほとんど何もさせずに勝利。世界2階級制覇の達成とともに、その実力は広く認知されることになりました。またこの試合は、チャベスのベスト試合と
して挙げらる事が多いようです。

   
(チャベスの最高傑作、対ロサリオ戦)

その後、ライト級王座の統一、フロイド メイウェザー(米)の叔父にあたるロジャーを破りメキシコ史上初の世界3階級制覇を達成したチャベス。その後上記のテーラー戦を迎えたわけです。

チャベスの終身戦績は115戦107勝(86KO)6敗2引き分け。こんな戦績を持つ選手、今後ボクシング史で現れないのではないでしょうか。

最近の多くのチャベスに関する記事に目を通すと、1世代、いや2世代違うオスカー デラホーヤ(米)やコンスタンチン チュー(豪)の踏み台になった古豪程度にしか認知されていないようです。チャベスの全盛期を知る人間にとって、それらの記事は無知の極み以外の何物でもありません。チャベスのピークは1980年代の中盤かあ1990年代の後半。世代の違う選手同士が戦えば、古いものが敗れるのは自然の理というものです。「もし」全盛期のチャベスとデラホーヤ、チュー、メイウェザーやマニー パッキャオ(比)が対戦していれば、チューとパッキャオは確実に負けていたでしょうね。

チャベスのベスト試合を3つ挙げるとすれば、上記のロサリオ戦、テーラー戦に加え、1992年に行われた、こちらも同世代のスーパースター、ヘクター カマチョ(プエルトリコ)戦ではないでしょうか。その3つの試合、何度も何度も見ました!

   
(最強チャベス相手にカマチョも大奮戦。好試合でした)

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9 コメント

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マリオ・マルチネスの時代が!? 思ってたんですよ!? (中野吉郎)
2017-11-23 22:17:48
当時マリオ・マルチネスが次のチャンプ言われてて,どんなに強いのかな!? ワクワクしてたんですがね…とマガジンの表紙に対ロジャー・メイウェザーⅠが表紙に成ったの今,思えばナイス選択ですよね!! 素晴らしい!!
Unknown (Corleone)
2017-11-28 00:15:03
マリオ マルチネスについて調べてみました。チャベス戦後、4度世界に挑戦するも結局はタイトルを取れませんでした。
1995年7月に自身最後の試合で勝利を収めると同時に、マイナー団体のIBO王座を獲得。プロ15年のキャリアでそれが最初で最後のベルトだったようです。同じころ、チャベスは自身最後の王座である2度目のWBCスーパーライト級王座を何とか死守していました。やはり時は重なるものなんですね。
Unknown (Corleone)
2017-11-28 00:16:04
同じコメントが重複していたので、一つを削除させていただきました。
マリオ・マルチネス情報ありがとうございます!! (中野吉郎)
2017-11-30 00:04:05
滅茶,感謝してます!! 特にメキシコでは?! ってかボクシングでは度々,噂の期待のホープもエッ!? て期待はずれな選手が!? けどノーマークも凄い選手が!? 面白いです(^^)!!
Unknown (Corleone)
2017-12-11 04:51:19
チャベスの実子をこの親父さんと比べると、やはりかわいそうですよね。しかしジュニア、普段の生活面などには注意を払って貰いたいです。
Unknown (あん)
2019-12-03 17:46:41
メイウェザーはカスティージョ第一戦で負けてますよね。
カスティージョにあんな感じではチャベスには到底勝てません。
Unknown (あん)
2019-12-03 17:52:56
マリオ・マルチネスはアズマー・ネルソンに初戦で勝ってように見えながら判定負けしましたね。
今いたら確実に世界チャンピオンになってると思います。
Unknown (あん)
2019-12-03 18:00:13
チャベスのディフェンス技術は凄いですね。
もしディフェンスに徹したら誰もパンチを当てられないと思うくらいです。
マルケス、バレラ、モラレスなどのスターが生まれましたが、チャベスはさらにその上をいくボクサーでした。
メキシコ史上最強 (Corleone)
2019-12-05 22:12:01
だと思います。
メキシコではチャベス、サルバドール サンチェス、ルーベン オリバレスがトップ3と言われているようです。

チャベスの全盛期と言われるライト級で比較した場合、メイウェザーでは歯が立たないでしょうね。
マルケスはともかく、バレラ、モラレスも数段落ちるでしょう。

チャベスの防御技術の件ですが、特にブロッキングとパーレングの技術がとんでもなく優れていたと、名伯楽エマニュエル スチュワート氏が絶賛していたことをいまでも鮮明に覚えています。

コメントを頂きありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

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