今月5日、この10年間常に世界ボクシングのトップ戦線で戦い続けてきたワシル ロマチェンコ(ウクライナ)が、現役生活からの勇退を発表しました。
2008年の北京五輪と2012年のロンドン五輪の2大会に出場し、金メダルを獲得したロマチェンコ。それ以外にも数々の大会に出場し、ほとんどの大会でトップとなりました。アマチュア時代の戦績は396勝1敗(396勝1敗1引き分けとも言われています)という、現実からかけ離れた記録を残しています。
(伝説に残るであろう名選手ロマチェンコが勇退)/ Photo: Reuters
2013年にプロに転向後は、アマチュアで培った技術に加え、一戦ごとに力強さも増していったロマチェンコ。そのプロキャリアを、ザっと振り返ってみましょう。
2014年10月:世界ランカーだったホセ ルイス ラミレス(メキシコ)に圧勝し見事なプロ初陣戦を飾る。同時にWBOインターナショナル・フェザー級王座を獲得。
2015年3月:プロ僅か2戦目で世界挑戦。オーランド サリド(メキシコ)に1対2の判定で敗れ、史上最速の世界王座奪取成らず。
2015年6月:ゲリー ラッセル(米)に判定勝利を収め、プロ3戦目で世界王座獲得に成功。センサク ムアンスリン(タイ)と並び、史上最短での世界王座獲得に成功。
2016年11月:ローマン マルティネス(プエルトリコ)に快勝し、WBOスーパーフェザー級王座を奪取。7戦目で世界2階級制覇を達成。
2017年12月:2000年シドニー五輪と、2004年アテネ五輪の2大会で金メダルを獲得したギレルモ リゴンドー(キューバ)に快勝。
2018年5月:ホルヘ リナレス(帝拳/キューバ)とダウン応酬の好試合を演じ、最後はTKOで勝利。WBAライト級王座を獲得し、12戦目で自身3階級目の世界王座を獲得。
2018年12月:ホセ ペドラサ(プエルトリコ)に大差の判定勝利を収め、WBO王座を吸収。
2019年8月:ルーク キャンベル(英)に勝利。WBCタイトルも併合。
2020年10月:テオフィモ ロペス(米)にまさかの判定負け。前半戦は肩の負傷のため、ほとんど手が出せず。このあたりから自身の怪我との戦いが顕著になっていく。
2023年5月:デビン ヘイニー(米)の保持する4団体統一ライト級王座に挑戦するも僅差の判定負け。
2024年5月:ジョージ カンボソス(豪)に終盤TKO勝利を収めIBFライト級王座を獲得。満身創痍のロマチェンコにとり、この試合がラストファイトとなる。
プロでの最終的戦績は18勝(12KO)3敗。敗れた試合はいずれもロマチェンコの手が上がってもおかしくないほどの大接戦でした。プロではフェザー級からライト級の3階級で6つの世界王座を獲得したロマチェンコ。普通の選手なら(もしくは一般的にいう名選手でも)、大変すばらしい戦績だったと言っていいでしょう。しかしロマチェンコの実力からすると、全然物足りなく感じてしまうのは私(Corleone)だけでしょうか?
4階級制覇を達成し、そのすべての階級で4団体王座を統一、そして全勝で引退。このあたりがロマチェンコには妥当のような気がします。
ロマチェンコ同様にアマチュアの名選手で、プロでもライト級を含め大活躍した選手と言えば、パーネル ウィテカー(米)を思い浮かべます。ロマチェンコと同じくサウスポー(左構え)だったウィテカーは、1984年に行われたロサンジェルス五輪に出場し、ライト級で金メダルを獲得。201勝13敗というアマチュア・レコードを引っさげてプロに転向しました。
(ロマチェンコと比べてみたくなる技巧師ウィテカー)/ Photo: Sports Illustrated
ウィテカーもまた、世界初挑戦では王座獲得なりませんでした。花の都フランスのパリで、歴戦の雄ホセ ルイス ラミレス(メキシコ)の持つWBCライト級王座に挑戦したウィテカー。しかしその試合前に自身の左腕を負傷していたため、試合はほとんど右一本で戦うことを強いられてしまいました。それでもタフなメキシカン相手にフルラウンド戦い抜き、自身の名前が勝者としてコールされてもおかしくない大接戦を演じています。
その後、2度目の世界挑戦で当たり前のように世界王座を獲得すると、ラミレスへの雪辱を含めあっという間に3団体のライト級王座統一に成功(当時、主要団体はWBOを除いた3つでした)。その後あっさりとIBFジュニアウェルター(スーパーライト)級タイトルを奪取すると、さらなるビックマッチを求めウェルター級に進出。同時代を代表するテクニシャン・ジェームス マクガート(米)との技術戦を制しWBCウェルター級タイトルを獲得。
ウェルター級王座の初防衛戦では、伝説のメキシカン・フリオ セサール チャベスに事実上の初黒星を与え、その評価を不動のものにしました。その後、ジュニアミドル級/スーパーウェルター級まで触手を伸ばし、見事4階級制覇を達成。キャリア後半には、オスカー デラホーヤ(米)やフェリックス トリニダード(プエルトリコ)の若手選手に敗れはしましたが、40勝(17KO)4敗1引き分け1無効試合という素晴らしい記録を伸ばし現役を終えています。
全盛期のウィテカーとロマチェンコが対戦すれば、どちらが勝利を収めるのでしょうかね!?サウスポーの技巧者同士の対戦は、さぞジャッジを泣かせる試合となるでしょう。
(全盛期のウィテカーとロマチェンコが対戦すれば、どちらが勝利を収めるのでしょうか!?)/ Photo: Youtube
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