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「Best I faced」:フェリックス トリニダード(08‐07‐22)

2022年08月07日 05時29分54秒 | ボクシングネタ、その他雑談

*米国のリング誌が不定期的に行っている「Best I faced」というコーナーがあります。これまで自分が対戦した相手で誰が一番強かったか、というインタビュー形式のものです。特に引退した選手のものになると、その選手を含めた当時の記憶と記録が蘇るため、非常に重宝しています。

昨年4月23日以来の主人公は、ウェルター級からミドル級までの3階級で世界王座を獲得した、プエルトリコ、そして1990年代を代表する名ボクサーであるフェリックス トリニダードです。

(1990年代を代表する名ボクサー フェリックス トリニダード)

オスカー デラホーヤ(米)やフェルナンド バスガス(米)、バーナード ホプキンス(米)等、当時の超一流選手たちとしのぎを削ったトリニダードは、下記の各項目の名手として、一体誰を挙げたのでしょうか。

ジャブの名手(Best Jab):
ロナルド ライト(米)。2005年5月に、当時のミドル級統一王者バーナード ホプキンス(米)への挑戦権を賭けライトと対戦したトリニダード。当時を代表する技師のジャブの前に、ほとんど何も出来ずに完敗。この試合直後、ティト(トリニダードの愛称)は引退を表明しています。

(ロナルド ライトの技術の前に、予想外の大敗を喫したトリニダード)

ジャブと高いガードを主体とする基本に忠実なボクサーだったライトは、地味な選手でしたが、スーパーウェルター級の王座統一に成功した、当代きっての実力者。シェーン モズリー(米)にも2度快勝しています。

防御の技術(Best Defence):
パーネル ウィテカー(米)。1999年2月に対戦。ウィテカーは、1984年のロサンゼルス五輪で金メダルを獲得し、ライト級で3団体王座の統一に成功(当時のすべてのメジャータイトル)。その後、スーパーライト級、ウェルター級、そしてスーパーウェルター級でも、圧倒的な技術で世界王座を獲得したボクシング史に残る名選手。その技師を相手に、トリニダードは勢いで圧倒し、保持していたIBFウェルター級王座の13度目の防衛に成功しました。しかしこの一戦が数年前に行われていたら、ウィテカーのワンサイド勝利となっていた可能性もあったでしょう。

「ウィテカーに明白な勝利を収めたのは自分だけ」と、大満足な様子。

(最巧ウィテカーには勢いで勝つ)

頑丈なアゴ(Best Chin):
ヘクター カマチョ(プエルトリコ)。1994年1月に、トリニダードが世界王者としてまだまだ駆け出しだった時期に対戦。当時のネームバリューでは、カマチョがティトを圧勝。しかし、若さと、パンチ力、そして体格で勝るトリニダードが、同胞の先輩を終始圧倒。大差の判定勝利を収め、IBFウェルター級王座の3度目の防衛に成功しました。

カマチョと言えば、1980年代にスピードスタートして大活躍した名選手。実際にタフな選手ではありましたが、KOパンチャーだったトリニダードにタフだと認められるとは。凄いものです。

(「マッチョ」カマチョにも快勝したキャリア前半のトリニダード)

プエルトリコの同胞対決となりましたが、ティトは生粋のプエルトリカンに対し、カマチョはニューヨーク生まれのニューヨーク育ち。プエルトリコの母国語であるスペイン語も、あまり上手くありませんでした。トリニダードはカマチョを、「偉大なるプエルトリカン・ボクサーの一人」と称賛しています。

ちなみに「トリニダード対カマチョ」戦が行われた興行では、伝説のメキシカン、フリオ セサール チャベスがフランキー ランドール(米)に初のダウンを奪われると同時に、プロ91戦目にして初黒星を喫しています。

パンチのスピード(Fastest Hands):
カマチョ。カマチョの特に右ジャブ(カマチョはサウスポー)が早かったそうです。

足の速さ(Fastest Feet):
パンチのスピードと同じく、カマチョを挙げています。カマチョのフットワークは早く、また、技術も素晴らしく、パンチを当てるのが難しかったそうです。

賢さ(Smartest):
ここではウィテカー。スピード、技術面では、カマチョ、ウィテカーが双璧と言っていいでしょう。

トリニダードの同世代のオスカー デラホーヤ(米)や、一時代前のチャベスもこの両選手と対戦しました。デラホーヤはウィテカーに疑惑の判定勝利、カマチョには大差判定勝ち。チャベスはウィテカーと分の悪い引き分けを演じるも、カマチョには大勝。トリニダードはデラホーヤを僅差の判定勝利。デラホーヤはチャベスに2連勝を収めています。

強さ(Strongest):
デビット リード(米)。2000年のひな祭りに、トリニダードが2階級制覇を目指し、WBAスーパーウェルター級王者リードに挑戦。3回にダウンを喫したティトでしたが、ダウンをエンジンを全開にさせ大勝。リードは「パンチもあり、体も大きかった」そうです。リードは1996年アトランタ五輪の米国唯一の金メダリストですが、リード以降アメリカからはボクシングのアマチュア世界王者は誕生していません。

(アメリカ最後の金メダリスト リードに打ち勝つ)

パンチ力(Best Puncher):
リード。トリニダード戦を含め、それまでのリードの試合を見れば納得出来ます。しかしリードの終身戦績は17勝(7KO)2敗(1KO負け)と並。リードからすれば、偉大なるプエルトリカンに2項目も支持されたとは名誉な事でしょう。

技術者(Best Skills):
ジョーンズ。次の項目をお読みください。

(遅すぎたジョーンズとの一番)

総合(Overall):
ロイ ジョーンズ(米)。2008年1月に、ロイとの対戦のみにリング復帰を果たしたトリニダードは、自身再最重量の170ポンド/77.11キロの体重でリングに登場。体格とスピードで大きく勝るロイに大差の判定負けを喫しました。この試合後、ティト(トリニダードの愛称)は再度、正式に引退。正直、トリニダードのキャリアに不必要な戦いでした。ティトは、「ジョーンズはボクサーとして完成した選手であり、尊敬している。そのパンチは早く、強かった」とコメント。

ジョーンズはミドル級から、何とヘビー級まで制覇したスーパーマンでしたが、トリニダード曰く、「ロイの能力なら当然」、だそうです。

42勝(35KO)3敗(1KO負け)という素晴らしいレコードを残しリングを去ったトリニダード。キャリア最終戦となったジョーンズとの一番は、不必要な戦いでしたね。トリニダード、ロイとも全盛期がとっくに過ぎており、茶番劇の一言で片付けられる試合でした。

ティトの唯一喫したKO負けは、バーナード ホプキンス(米)につけられたもの。そのホプキンスはその後、ライトやジョーンズ(再戦)をも飲み込み、自らもボクシングに残る実力者であることを実証しました。今回、ホプキンスの名前は挙がりませんでしたが、トリニダードにとりどのような存在だったのか気になるところです。

トリニダードの試合を見直したのですが、パンチ力、多彩なパンチ、打たれ脆さが目につきましたが、それと同時に、常に一定のバランスを保っていたことに驚きました。単にパンチが強いだけでは、ウェルター級王座を15度も防衛することは出来なかったであろうし、数々の強豪選手たちとの対決を制することも出来なかったでしょう。もし現在のウェルター級の頂上を二分するテレンス クロフォード(米)やエロール スペンス(米)も、ティトと対戦すれば最終的にフロアに沈むことになるでしょうね。


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