東京観光(2)

  ウチの母が秋田から上京して2日目、9月2日(日)は手に汗にぎる緊迫のスケジュールでした(←おおげさ)。

  この日はボリショイ&マリインスキー・バレエ合同公演を観る予定でした。それが午後2時から。よって、午前中は何をしたいか新幹線の中ででも考えといてね~、と母に言っておいたのがマズかった。

  母親は「隅田川を川下り」、「月島でもんじゃ焼きを食べる」プランを持ち出してきたのです。例によってガイドブックに影響されたらしい。もんじゃ焼きについては、別に月島でなくても食べられるよ、と言ってみたのですが、母にとっては「月島でもんじゃを食べる」ことに意味があるらしいのです。月島には「もんじゃストリート」という通りがあって、たくさんのもんじゃ焼きのお店があるのです。

  提案するのは母ですが、手配するのは私です。あわてて隅田川の水上バス(隅田川ライン)の時刻表と路線図を調べ、月島の位置を確認して(←名前しか知らなかった)、午前中にこの二つの計画がこなせるかどうか、何度も脳内で予行演習しました。

  隅田川の川下りは浅草から出ていて、その始発は10時、次の便は10時40分です。そこで、時間になるべく余裕を持たせるため、10時ぴったりの便に乗ることにしました。「東京の川は汚れている」という先入見が私にはありましたが、隅田川は意外ときれいで悪臭などもなく、川風がすがすがしかったです。

  隅田川川下りの目玉は、川にかかっているいくつもの橋をくぐることらしく、それぞれの歴史をガイドさんが説明していました(でも船のエンジンの轟音でほとんど聞こえなかった)。それにしても、ア○ヒビール本社ビルの屋上に据え付けてある金色の巨大オブジェは、どーみても金色の巨大一本○ソにしか見えませんなー。

  船は東京湾に入りました。築地市場が見えてきました。すると母親は突然「築地市場を見物したい」と言い出しました。私は焦って「今日は日曜日で市場は休みだと思うよ。それに築地市場に行くのなら月島行きはなし!」と厳然と申しわたしました。母はおとなしくなりました。彼女の脳内で魚市場よりもんじゃのほうが勝ったようです。

  乗船すること35分、船は浜離宮恩賜公園の船着場に着きました。ここで下ります。浜離宮はさほど広くはなく、キバナコスモスの花が見ごろでした。公園を突っ切って、都営大江戸線汐留駅に向かいます。浜離宮の向こうには「どーだ、最先端のデザインで超高層でエラいだろ」と言わんばかりの汐留高層ビル群が聳え立っています。

  浜離宮の出口から都営大江戸線汐留駅までは徒歩5分、とガイドブックには書いてありましたがとんでもない。どう割り引いても15分はかかりました。直線距離にすると確かにすぐそこなのですが、汐留はまだあちこち工事中で通り抜けできない箇所が多く、しょっちゅう回り道をしなければならなかったのです。

  この日は久しぶりに晴れて太陽が顔をのぞかせた日で、川下りには最適でした。でも高層ビルの間を歩くには最悪です。汗だくになって歩き、なんとか汐留駅に行き着きました。そこで大江戸線に乗車して月島へ向かいました。月島まではたった2、3駅です。

  ガイドブックを見ると、紹介されている有名なもんじゃ焼き店の営業時間はほとんどが夕方から深夜まででした。果たしてこの時間(まだ11時半前)に開いている店はあるのだろうか?とちょっと心配でした。月島駅近く、「もんじゃストリート」の角には案内所があったので、そこで昼からやっているお店があるかどうかを聞いたところ、もう開店していて、しかも地元の人間にも好評だというお店を紹介してもらいました。

  そのお店に行くと、まだ早い時間のせいか、お客はほとんどいませんでした。月島は築地市場に近いから美味に違いない、という母の根拠なき提案で、海鮮もんじゃとカニ塩やきそばを注文しました。メニューの飲み物の中に「下町コーラ」、「下町オレンジ」というのがあったので、店員のお兄さんに「普通のコーラやオレンジジュースとどう違うんですか?」と聞いたら、苦笑いしながら「いや、ホントはあんまり意味ないっス」と言ってました(笑)。

  実は、私も母も、もんじゃ焼きを食べるのは初めてなのです。どんなものなのか具体的には知らず、ただガイドブックの写真を見て、お好み焼きの親戚みたいなものだろう、と思っていました。どんぶりにのっかった具が来ました。作り方を店員さんに指南してもらいながら(時に代行してもらいながら)作りました。

  1.最初に海鮮や野菜などの具を2枚のヘラで細かくきざんでよく炒めます。
  2.きざんだ具でドーナツ状の土手を作ります。
  3.その中にだし汁を半分だけ入れます。
  4.だし汁がとろとろしだしたら、残りのだし汁を入れます。
  5.だし汁全体がとろとろしたら、周りの具とよく混ぜて薄く伸ばします。
  6.ペースト状になったところで、小さなヘラを使って食します。

  もんじゃの味はやはりお好み焼きに似ていました。大阪のたこ焼きと同じく、東京の地元の人はみな家でもんじゃをよく食べるのでしょうか。

  お腹もいっぱいになったし、12時半過ぎになったし、そろそろ新国立劇場に向かうことにしました。再び都営大江戸線に乗りました。月島から新宿までたった24分です。便利な世の中になったなあ、と思いました。しかも大江戸線と初台駅(新国立劇場最寄り駅)のある京王新線の新宿での乗り場は隣同士(てか同じ)です。うまくできているものです。

  で、浅草から船で隅田川を下って汐留に行き、そこから大江戸線で月島に行ってもんじゃと焼きそばを食べ、また大江戸線で月島から新宿に行って、京王新線に乗り換えて初台駅で下車し、地下通路から新国立劇場に入りました。折しも開場時間の1時15分でした。

  母親はきれいな新国立劇場を見物してはしゃいでおりましたが、私は午前からお昼にかけてのハード・スケジュールがうまくいってくれたことで、すでに燃え尽きておりました。
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