元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ピアニスト」

2011-06-06 06:40:33 | 映画の感想(は行)
 (原題:The Pianist )91年作品。トロント郊外に引っ越してきた日本人ピアニスト、タカハシ(奥田瑛二)をめぐるふたりの姉妹(マーシャ・グレノン、ゲイル・トラヴァース)の愛の遍歴を描く。行動的な姉の方はタカハシに憧れていたが、実は妹も彼を真剣に愛していて・・・・、という三角関係の顛末を映画は追って行く。

 粗筋だけ聞くと、外国人監督が日本人を描いた場合にありがちなミョーな雰囲気を連想し、しかも外国を舞台に日本人男性がモテモテになるという設定から、何かとんでもないキワ物映画ではないかと懸念する向きも多いとは思うが、監督のクロード・ガニヨンは日本在住経験があり、「Keiko」(78年)という日本女性を主人公にした秀作をモノにしている実績があることから、さすがにソツのない話の進め方で、納得のいく映画作りをしている。不自然さなどまったくない。

 映画はタカハシが当時高校生だった姉妹の住む街に越してきた10年前と、現在とを並行して描く。姉妹が最初にタカハシと知り合う過程を描いた10年前の部分は、なんとかタカハシの気を引こうという姉妹の涙ぐましい努力がユーモラスで笑いを誘う。対して二人が大人になり、人生の辛酸をなめた後、タカハシに再会する現在の場面は、登場人物たちの精神的成長とそれぞれの孤独が感じられて心に迫るものがある。

 姉妹の両親の友人で、その昔彼女たちの母親の恋人だった男が登場する。彼は親友である姉妹の父親に恋人を譲ってしまい、そのことを後悔するあまり、世捨て人のような生活を現在も送っている。そんな彼に自らの境遇を重ね合わせる妹の苦悩、そして夫がありながら不倫の果てに結局はタカハシにふられてしまう姉の不幸。人生いろいろあるけど、それでもみんな自分なりに生きていかなければならない、という作者の控え目だが確固とした主張が感じられる。

 カナダのブリティッシュ・コロンビア州にロケした映像は透明で美しい。アメリカの隣の国なのに、雰囲気はまるでヨーロッパ映画だ。映画の語り口は静かである。アンドレ・ガニオンによる音楽も良い。

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