(原題:ZOMBIELAND)数多いゾンビ映画の中で“史上最大のヒット”を記録したという触れ込みにもかかわらず、さっぱり面白くない。ストーリーに起伏があるわけでもなく、キャラクター設定はいい加減だし、ギャグはスベりっ放しで、中盤以降には眠気を抑えるのに苦労した。個人的には“ゾンビ映画史上に残る駄作”と断言したいほどだ。
ゾンビウィルスにより、大半の人間がゾンビ化してしまったアメリカ合衆国。そんな中、テキサス州在住の引きこもり学生コロンバスは自分で策定した“生き残るための32のルール”を遵守することにより、何とか難を逃れていた。しかし、両親の消息をはじめどうしても他地域の状況を知りたくなった彼は、当て所もない旅に出る。道中で知り合ったのが武器オタクのマッチョおやじと、若い女詐欺師と、その妹である中学生。彼らは襲いかかるゾンビを次々と片付けながら、とりあえず目的地に設定した西海岸の遊園地を目指す。
通常ヒーローになれない落ちこぼれが生き残っているという設定は、ティム・バートン監督あたりがすでに実行済で新味はない。コメディタッチのゾンビ映画としては「バタリアン」シリーズや「プラネット・テラー in グラインドハウス」「ブレインデッド」などには完全に負ける。ロードムービー仕立てにするのも“ありがちなパターン”でしかない。
プロット面でも突っ込みどころが満載で、いくらゾンビウィルスが蔓延していても軍などの当局側が早々に無力化してしまうことは考えにくいし、世相に疎い引きこもり野郎が生存出来る可能性は低い。普通に考えれば、最初に隣人が襲ってきた時点でアウトだろう。後半、閉店状態の遊園地をわざわざ稼働させてゾンビの大群を呼び込んでしまうくだりなど、あまりのお粗末さに泣けてきた。
主演のジェシー・アイゼンバーグをはじめ、ウディ・ハレルソン、アビゲイル・ブレスリン、エマ・ストーンという顔ぶれも微妙で、つまりは“悪くはないが、無茶をやらかしてくれるほどには濃くはない”といった程度に留まっている。ルーベン・フライシャーの演出はメリハリがほとんどなく、平板な画面が漫然と流れるのみ。特別ゲストとしてビル・マーレーも登場するが、大した見せ場もないうちに退場してしまったのには脱力した。
この低調なシャシンが本国でヒットした本当の理由は分からないが、おそらくは“ゾンビ映画にしては全く怖くない”というあたりがウケたのではないかと想像する。マニア御用達のコアなネタも登場しないし、極度にグロいシーンも見当たらない。
ボーッと画面を眺めているだけでヒマが潰せる、または仲間内でキャーキャー言いながら楽しめる(酒でも入っていればまた格別 ^^;)、ある意味便利な映画である点がアピールしたのだろう。当然、まともな面白さを求めて劇場に足を運んだカタギの映画ファン(?)にはお呼びでないシロモノだ。