元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「巫女っちゃけん。」

2018-02-05 06:33:31 | 映画の感想(ま行)

 題材は面白そうなのだが、演出と脚本がイマイチなので凡作に終わっている。ストーリーを練り直した上で、別の監督に担当させた方が良い結果が得られたように思う。

 福岡県福津市にある宮地嶽神社で巫女のアルバイトをしているしわすは、実は宮司の娘である。この仕事は好きではなく、父には就職が決まったら巫女なんかすぐにやめると言っている。夜中、しわすが境内を見回りをしていると、社殿に5歳の少年・健太が隠れているのを発見する。最近頻発する窃盗事件やボヤ騒ぎの犯人は、どうやら健太らしい。一切口をきかない彼をしばらく神社で預かることになり、しわすはいやいや世話係をすることになる。

 やがて母親の美和が迎えに来るが、数日後に健太は境内に舞い戻り、しかも顔には殴られた痕があった。児童相談所のスタッフを交えた話し合いの場で、何と健太に暴行を加えたのはしわすだということになってしまう。警察も動き出すに及び、切羽詰まったしわすは健太を連れて遁走する。

 確かに健太の境遇は可哀想だが、だからといって窃盗や放火を正当化出来るものではない。しかも、しわすに濡れ衣を着せようとする。ハッキリ言って根性の曲がったクソガキだ。こんなのは即刻児童相談所に対応を任せるべきなのだが、なぜか宮司は神社で世話することを決めてしまう。ならば神社側で健太の“更生プログラム”みたいなものを提示するのかというと、そんなものは全然ない。すべてをしわすに丸投げした挙げ句に、騒ぎを大きくしてしまう。

 そもそも、せっかく神社を舞台にしているのならば、その方面の薀蓄を大量動員して観客を感心させる方法を採用するべきだが、そのあたりは変に淡白だ。それだから、しわすが終盤で神楽を舞うシーンに全くカタルシスが感じられない。これがもし矢口史靖や(全盛期の)周防正行あたりが演出を担当したら快作に仕上がったと思うが、監督グ・スーヨンの仕事ぶりは凡庸でキレ味も無い。

 また、感情移入出来るキャラクターが主人公を除いて一人もいないというのも痛い。特に女性に対しては、妙なバイアスが介在しているのではないか。美和や離婚したしわすの母親の真紀の描き方は、悪意がこもっているとした思えないし、しわすの同僚の巫女達にもロクな奴はいない。

 主演の広瀬アリスはこういう不貞腐れた役をやらせると絶品で、特に序盤にクレーマーめいた参拝客を“塩な対応”であしらう場面には笑った。対して、父親役のリリー・フランキーは事なかれ主義(?)の演技に終始。MEGUMIや飯島直子、仁村紗和といった他のキャストもパッとしない。ただし、宮地嶽神社およびその周囲の風景はとてもキレイに撮られていた。この神社は私も初詣などで何度も足を運んでいる。以前は近くまで電車が通じていたが、今は廃線になってしまった。残念なことである。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「マルコムX」 | トップ | 「クライング・ゲーム」 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映画の感想(ま行)」カテゴリの最新記事