元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「訴訟」

2017-02-03 06:28:50 | 映画の感想(さ行)
 (原題:CLASS ACTION)91年作品。一流自動車会社の重大な不手際という題材は、とてもハードで興味深い。しかしあまりにも予定調和の面が出すぎていて、諸手を挙げての評価は差し控えたいと思う。

 ベテラン弁護士のジェディダイア・タッカー・ウォードは、全米有数の自動車メーカーが製造する乗用車メレディアンの爆発事故により重傷を負ったオーナーがメーカー側を訴えた案件に取り組んでいた。メーカーの弁護士マギーはジェディダイアの娘だが、長年にわたる親子の確執により父親の社会的弱者優先の姿勢に背を向け、今は主に大企業や富裕層を顧客とする法律事務所に勤めている。



 2人の法廷でのやりとりは熾烈を極め、それを目の当たりにしたマギーの母親はショックで倒れてしまうが、それでもジェディダイアとマギーのバトルは続く。そんな中、マギーはメレディアンの設計チームのメンバーから、もともとこの車は欠陥車であり、そのことはメーカー幹部も当時の顧問弁護士も承知済であったことを聞き出す。事実を知った彼女は態度を一変。メーカーの不正を暴く方向に舵を切る。

 自動車会社が引き起こす不祥事は、この映画が作られた時期に比べて現在は減るどころか逆に目立ってきている。また本作では、全欠陥車をリコールするよりも訴えられた際の裁判費用の方が安く済むので手を打たなかったというメーカーのとんでもないスタンスが明らかになるが、いかにもありそうな話である。その意味で、この題材が持つ訴求力は高いと言えよう。

 だが、ジェディダイアを演じるのがジーン・ハックマンというのは“出来すぎ”である。60年代から反体制派リベラルの象徴みたいな役柄をこなしてきた彼が出てくると、たとえこの主人公の私生活が褒められたものではなくても、映画の結末は分かってしまう。さらに言えば、マギーが事実を知るプロセスやジェディダイアとの和解を果たすプロセスが丁寧に描かれてはいない。御都合主義に思える。だからサスペンスが盛り上がらない。

 マイケル・アプテッドの演出は今回はキレに乏しく、ここ一番のクライマックスを提供できていない。マギーに扮するメアリー・エリザベス・マストラントニオは好演だが、ヤン・ロービッシュやコリン・フリールズといった脇のキャストが弱い。なお、ジェームズ・ホーナーの音楽は良好。薄味になりがちな映画全体を多少なりとも引き締めていた。

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