元・副会長のCinema Days

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「ホワイトナイツ 白夜」

2015-08-30 06:44:36 | 映画の感想(は行)

 (原題:White Night )85年アメリカ作品。テイラー・ハックフォード監督作の中では「愛と青春の旅立ち」(82年)に次ぐ出来だ。キャストの頑張りはもちろん、冷戦末期にあった当時の世界情勢を振り返る意味でも興味深い内容である。

 ロンドンから東京に向う旅客機が、シベリアのとある空港に不時着。乗り合わせていた世界的なバレエダンサーのニコライは、8年前にソ連からアメリカに亡命して祖国では犯罪者扱いになっていた。収容された病院のベッドで意識を取り戻した彼は、KGBに身柄を確保されてしまう。

 ニコライを監視するチャイコ大佐は、新装オープンされるキロフ劇場に彼を出演させようと考え、その説得役として黒人タップダンサーのレイモンドを任命する。レイモンドは以前アメリカ人であったが、アメリカの国策に反対してニコライとは逆にソ連に亡命していた。だが、亡命当時は何かとチヤホヤされた彼も、今ではほとんど仕事も無く“飼い殺し”の状態だ。反目し合う2人だが、やがてダンサー同士意気投合してニコライはダンスをすることを了解。同時に、西側への再脱出を密かに画策することになる。

 後半の逃避行の段取りや展開には無理があるものの、ダンスを重要なモチーフに採用しているメリットは大きく、観ていて引き込まれてしまう。主演の2人を演じるのはミハイル・バリシニコフとグレゴリー・ハインズで、言うまでもなくその道のエキスパートだ。

 同じように芸術に生きる者として、以心伝心で考えていることが理解し合えるプロセスに無理がない。2人で踊るシーンは特に素晴らしく、攻めの姿勢をキープするカメラワークがスリル満点の構図を演出する。イザベラ・ロッセリーニやヘレン・ミレン、ジェラルディン・ペイジといった脇の面子も申し分ない。

 もしもこの時期より10年ぐらい前の“冷戦構造の真っ直中”が舞台ならば、最初から重苦しい雰囲気でストーリーも気勢の上がらないものになったと思われるし、それ以前に東側の様子など少しも顧みられなかったはずだ。しかしベルリンの壁の崩壊を4年後に控えた本作の製作時には、微妙に“何かが変わるかもしれない”という空気が流れていたのかもしれない。ハックフォードの演出は堅実で、冗長な部分は見受けられない。ライオネル・リッチーによる主題歌「セイ・ユー・セイ・ミー」はアカデミー賞主題歌賞を受賞したが、確かに名曲だと思う。

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