元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ぼくの好きな先生」

2007-03-29 06:41:41 | 映画の感想(は行)
 (原題:Etre et avoir)2002年作品。フランス中部のオーベルニュ地方の小さな村。全校生徒13人が同じ教室で学ぶ小学校を舞台に、定年退職直前の教師と生徒達の交流を描くドキュメンタリー映画である。

 ニコラ・フィリベールの演出は奇をてらった部分がなく、対象を自然に捉えようと腐心している。ナレーションによる説明などを排し、インタビューの挿入も一か所のみである。ドラマ性には欠けるかもしれないが、こういう題材では頷けるだろう。印象的なのは子供達の生き生きとした目である。

 教師歴35年のロペス先生は学年も違う生徒達を実に丹念に教える。安易な詰め込み教育ではなく、本当に理解させるまで粘り強く生徒に付き合うのだ。教師だけではなく、生徒の家族も総出で子供の宿題を見てやる。結果、この学校には落ちこぼれが一人もいない。ここに学校教育のひとつの理想型(少人数の複数学年同居形式)が提示されていると感じる向きも少なくないであろう。

 しかし、よく見ると生地達は個性を生かされて伸び伸びと学習しているものの、学力的に特筆するようなものはない。それどころか中学に上がれば勉強の遅れやイジメに苦しむおそれのある子もいる。悲しいかな、中学校以上では教師が生徒一人一人にかまっているヒマなどない。ロペス先生のように平等に落ちこぼれなくカリキュラムを進めるのは「非効率」だというのも、また事実なのである。教育とは難しいものだ。オーベルニュ地方の四季を追った映像は非常に美しい。

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