元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「トラフィック」

2011-10-11 06:24:44 | 映画の感想(た行)
 (原題:Traffic )2000年作品。メキシコと米国とを結ぶ麻薬ルートをめぐって、捜査官やマフィアのボス及びその妻など多数の男女の人生が交錯していく様子を描く。高踏的ケレン味が身上のスティーヴン・ソダーバーグ監督と実録風ドラマツルギーが完璧にマッチした快作である。

 三つのエピソードを解体しながら相互に絶妙なリンクを張るように再構築した脚本といい、卓越した画面処理といい、各キャストの見事な仕事ぶりといい、すべてに申し分なく、クォリティとしてはあの「L.A.コンフィデンシャル」に肉迫する。たぶんこの年のアメリカ映画ではトップの出来映えだろう。



 オスカー受賞のベネシオ・デル・トロもいいが、開き直った腹ボテ悪女のキャサリン・ゼタ・ジョーンズが儲け役。マイケル・ダグラスやドン・チードルの的確な演技もドラマに奥行きを与えている。

 それにしても、メキシコや南米など、麻薬が完全に社会の一部として食い込んでしまった国家は悲惨である。ただし、我々はそれらの国に対し、ほんの少しの同情と大きな諦念を持つしかないのだろう。この映画のマイケル・ダグラス判事のように“ヨソの国はヨソの国。我々は「今そこにある危機」として自国を守るしかない”と割り切るべきなのか。

 さらに突き詰めてゆくと“人々が麻薬に頼る必要のない社会”の構築が急務なのだが、そこまでの求心力を国家に求めるのは筋違いではないのか。結局はこの映画の終盤にも描かれたように、ミクロ的に自分の周囲の人々を救うべく地道な努力をおこなう他ないとも言えるのだろうか。

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