元・副会長のCinema Days

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「ビューティフル・ライフ」

2023-06-17 06:17:25 | 映画の感想(は行)
 (原題:A BEAUTIFUL LIFE)2023年6月よりNetflixから配信されているデンマーク作品。はっきり言って、内容はそれほどでもない。ならば鑑賞する価値は無いのかというと、そういうことでもない。音楽好きならば、観て損したとはあまり思わないだろう。特に主人公を演じるのが本当の歌手である点が大きく、時間を掛けたPVだと思えば納得できる。

 若い男エリオットはデンマークのユトランド半島北部の港町に暮らす漁師で、住居も自身の持ち舟だ。天涯孤独である彼だが、曲を作って歌うことは得意で、その夜も相棒と一緒にパブのステージに立っていた。そこに居合わせたのがかつての有名歌手の妻で、今はプロデューサーとして腕を振るうスザンヌとその娘リリーだった。



 彼女たちはエリオットの才能にほれ込み、メジャーデビューのサポートを申し出る。自らの境遇と音楽業界に対する不信から気乗りしなかったエリオットだが、取りあえずレコーディングした楽曲がネット上で大評判になり、一躍売れっ子になる。だが、以前の相棒との関係が拗れ、リリーとの仲もしっくりくいかず、エリオットの行く手に暗雲がたちこめてくる。

 スザンヌの夫でリリーの父であったスーパースターが世を去った顛末や、何かと彼女たちの面倒を見るスタッフの生い立ちなど興味深いモチーフはあるが、上映時間が約100分と短いこともあって深掘りされていない。また、エリオットがあっさり有名になるのも芸が無い。リリーとの関係性も想定の範囲内で、ラストはやや唐突だ。

 メヒディ・アバスの演出は破綻は無いがアピール度には欠ける。しかしながら、主人公に扮するクリストファーの存在感は圧倒的だ。とにかく歌がうまく、楽曲の出来も良い。またルックスもイケており、本国ではかなりの人気者だという。英語圏以外のヨーロッパ諸国にも、まだまだ日本では知られていない逸材がけっこういるのだろう。

 ヒロイン役のインガ・イブスドッテル・リッレオースをはじめ、クリスティーヌ・アルベク・ボーエ、アルダラン・エスマイリ、セバスチャン・イェセンといった顔ぶれは馴染みは無いが、皆良い演技をしている。そして、ダニエル・コトロネオのカメラによるユトランド半島の海浜地帯の風景は本当に美しい。
コメント
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