元・副会長のCinema Days

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「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」

2021-08-02 06:26:03 | 映画の感想(さ行)
 明らかに前作(2019年)よりも面白い。もっとも、終盤で失速してしまうという欠点があり、その他にも突っ込みどころはあるのだが、言い換えればそれらを除けば万全の出来だということだ。特に活劇場面の盛り上がりは尋常ではなく、まず観て損はしない娯楽編であり、多くの観客を集めているのも当然だと思わせる。

 前回から引き続き、大阪で妹分のヨウコと暮らす凄腕の殺し屋“ザ・ファブル”こと佐藤アキラは、デザイン会社“オクトパス”での勤務にも慣れ、カタギの社会人としての生活を送っていた。そんな中、NPO団体“子供たちを危険から守る会”が町中で支持を集めていた。主宰している宇津帆は一見人格者だが、実は若者から金を巻き上げて次々と殺害するという犯罪組織のボスだった。



 かつて弟を殺したアキラが大阪にいることを突き止めた宇津帆は、アキラの同僚である貝沼を拉致するなど、復讐を果たすべく動き出す。一方、宇津帆と行動を共にしている車椅子の少女ヒナコは、偶然にアキラと知り合う。彼女は、過去にアキラのミッションに巻き込まれてしまい、以後歩けなくなってしまった。アキラは彼女のリハビリの相手をしながらも、宇津帆との抗争に身を投じていく。南勝久によるコミックの映画化だ。

 宇津帆は数人の仲間と共に“仕事”をやっているはずが、途中で何の前触れもなく山のような数の手下が現れるのには脱力した。極端な猫舌でお笑い好きな主人公の性質は、今回特にクローズアップされておらず、飼っているインコの存在が希薄なのは前作と同じだ。展開は中盤で少し緩み、後半で盛り返すものの、ラスト近辺は要領を得ない話の運びになる。

 しかし、挿入されるアクション場面は一級品だ。冒頭のアキラのスピーディーな“仕事”の描写に続く、カーアクションの切れ味には驚いた。そしてハイライトは、改装工事中の団地内での銃撃戦だ。段取りの良さと豊富なアイデア、そして速い展開と派手なスタントで、ハリウッド映画にも負けない盛り上がりを見せる。間違いなく邦画における活劇場面の歴史に残る快挙だと思う。監督の江口カンの健闘は評価されて良い。

 アキラをはじめとするキャラクターは十分“立って”おり、多少のドラマの瑕疵も笑って済ませられる。主演の岡田准一は絶好調で、アクション監修にも参画しているのは大したものだ。木村文乃に安藤政信、佐藤二朗、安田顕、そして敵役の堤真一らも申し分ない。演技に難のある山本美月の出番を減らしたのも冷静な判断だ(苦笑)。ただし、ヒナコ役に平手友梨奈を持ってきたのはどうかと思う。終盤の扱いはドラマを無理に彼女に“寄せる”ためだったというのは一目瞭然で、キャスティングは話題性よりも堅実さを求めたいところだ。
コメント
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