元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ハーフ」

2014-03-03 06:27:44 | 映画の感想(は行)

 とても興味深いドキュメンタリー作品だ。冒頭、厚生労働省の統計によれば、日本の新生児の49人に1人が日本人と外国人との間に生まれていることが提示される。いつの間にか、日本は多様性を含んだ社会へと変質してきているのだ。こういう事実は知るだけでも、本作を観て良かったと思える。

 映画は親の国籍がそれぞれ異なる5組のハーフたちを追う。オーストラリアで生まれ育ったが、自らのルーツを探求するため東京に住むことになった若い女。ガーナ人の母親と日本人の父親の間に生まれたが、主に日本で育ったため母親の故国をよく知らず、成人後に一念発起してガーナを訪ねた若い男。

 メキシコ人と日本人の夫婦とその子供達が味わう、何かと屈託の多い日々。小さい頃は自分を純粋な日本人だと思っていたが、15歳になって初めて自分の戸籍を見た際、日本に帰化した韓国人の父親と日本人の母親の間に生まれたことを知った女。ベネズエラ人と日本人を両親に持つ男は、疎外感を感じつつも何とか居場所を見つけようと奮闘する。

 境遇は様々ながら、彼らに共通して言えるのは、生まれながらに2つの文化を背負っていることだ。好むと好まざるとにかかわらず、彼らはその2つの文化とどう折り合いを付けるのか、それを決定しなくてはならない“宿命”を負っている。たとえそれがスムーズに実行出来なくても、一方の国の文化は自分に要らないと勝手に決め付けても、その出自は一生付いて回る。そんな状況の者達は、確実に国内に増えているのだ。

 登場人物の中で最も印象深かったのが、ガーナ人と日本人との間に生まれたデイビッドである。彼がバーテンをやっていた頃、ある日客に“君は母親の故国のことを良く知らないのか。ダメじゃないか”と言われ、すぐさまガーナに旅立ったという。そして故国の教育環境がよろしくないことを知り、今はガーナに学校を建てる基金集めの運動に参加している。

 何より感心したのは“僕は日本で一年に千回は自己紹介をしている。でもそれを面倒くさいとは全然思わない”と断言していることだ。自分のルーツを知り、それを他人に対して表明することを苦にしていない。むしろ、そこからコミュニケーションを立ち上げられるのだと信じている。こういう人材こそが、多様性が高まるこれからの日本には不可欠なのだと実感した。

 また、映画は多彩な文化への関心を高めるために設立されたミックスルーツ関西なるサークルを紹介している。この集まりが具体的にどういう成果を上げているのかは示されていないが、日本に住むハーフ達のポジションの確保のため、いろいろな方策が試されていることは理解出来る。監督は西倉めぐみと高木ララの若手女流二人で、ケレン味のない穏やかな展開には好感が持てる。なお、この二人もハーフであり、しかも美人だ(笑)。
コメント
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