元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「摩天楼を夢みて」

2014-03-02 06:37:06 | 映画の感想(ま行)
 (原題:GLENGARRY GLEN ROSS )92年作品。落ちぶれた不動産セールスマン、シェリー・レビーン(ジャック・レモン)。逆に今トップを走るリッキー・ローマ(アル・パチーノ)。成績のいい者には優良顧客情報が与えられるが、ダメな奴にはいつまでもクズのようなネタしか入って来ない。ある日本社から若手役員(アレック・ボールドウィン)がやって来て、月間成績最下位の者をクビにすると言い、グレンガリー高原の優良ネタを見せつけた。顎然となるセールスマン達は、雨の夜の中をアテのないセールスに出ていく。

 デイヴィッド・マメットの戯曲の映画化だが、これほど厳しいアメリカ映画は珍しい。弱肉強食のアメリカのビジネス界。勝者には富がもたらされるが、敗者はプライドのかけらさえ残されない。マメットの脚本は、リアリズムに基づいた口語体の台詞をテンポよく構成しているところが特徴。とうとうと水をたたえた川の流れのように、よどみないそのダイアローグは、現代のアメリカ社会の矛盾や問題点を浮かび上がらせる。



 ドラマを一晩の出来事に集約し、画面展開が極端に少ない。ジェームズ・フォーリーの演出は舞台の雰囲気をほぼ再現しているが、寒色系を多用した画面構成や、登場人物の表情を何気なく捉えるカメラワークやライティングに映画ならではの工夫が見られる。ジェームズ・ニュートン・ハワードの音楽はいつもとは違ってジャズを主体にしたクールなもの。作品のタッチに実に良く合っている。

 それにしても一点の救いもないストーリーながら、このわくわくするような映画的高揚。芸達者のキャストの火の出るような演技合戦はどうだ。ギリギリの境遇で生きる男たちが醸し出す独特のエロティシズム。特にレモンとパチーノの存在感には圧倒された。パチーノは「セント・オブ・ウーマン」みたいなワンマン映画ではなく、この作品でオスカーを取るべきだったと思う。
コメント
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