元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「どこまでもいこう」

2014-01-24 06:32:21 | 映画の感想(た行)
 99年作品。これまでいくつかのヒット作を手掛けてきた塩田明彦監督の、初期作品にして最良作。とにかく、観ている側をアッという間に子供時代にタイムスリップさせてしまう映像の喚起力と巧妙なディテールに瞠目させられる佳篇である。

 郊外のマンモス団地に住む小学校5年生のアキラと光一は、低学年の頃からの悪友同士。ところが新しい学年になって二人は別々のクラスになり、それが彼らの関係に微妙な影を落としていく。アキラは母子家庭で育つ少年と仲良くなるが、些細な行き違いから悲しい別れを経験。一方で光一は、素行の悪い転校生とつるむようになる。



 いわゆる“子供の世界を大人側から見下す態度”がほとんど感じられない、子供の視点に徹底的に特化したスタンスには好感が持てる。勉強とか塾とかいった鬱陶しい素材を巧妙に廃しているのも正解だ。

 アキラと光一はやがて仲直りをするものの、それまでの自分たちとは違う見方で互いを認識せざるを得なくなる。それがいわゆる“成長”というもので、このあたりを違和感なく提示しているのは納得できる。作品の冒頭から流れるマーチング・バンド風のドラム独奏が、中盤で「史上最大の作戦」のテーマ曲のピアニカ合奏に繋がっていくプロセスは最高。

 出てくる子供が皆(日本映画には珍しく)良い味を出しているし、舞台となる多摩ニュータウンの風景の切り取り方も申し分なし。個々のエピソードには少々話をいじり過ぎた部分もないではないが、後味は良い。塩田監督も本作のような感性を取り戻して新作に臨んでほしいものだ。
コメント
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