元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「クラウド アトラス」

2013-04-12 06:33:26 | 映画の感想(か行)

 (原題:CLOUD ATLAS )ウォシャウスキー兄弟・・・・じゃなかった(笑)、ウォシャウスキー“姉弟”らしい、底の浅い世界観が全面展開されており、ストーリー面では退屈至極。さらに共同監督が二流のトム・ティクヴァで、おまけに上映時間が3時間近い。どう考えても駄作っぽいのだが、多彩なキャストの“コスプレ大会”として見ればそこそこ楽しめるシャシンである。

 1849年の太平洋上の船において九死に一生を得る青年弁護士の話から始まって、1936年のスコットランドでにおける名曲“クラウド アトラス”の誕生プロセスなど、過去から未来にかけて6つのエピソードが同時進行する。もちろんそれらには共通したテーマがあり、その意味では一本の映画として体を成しているとは言えるのだが、主題の練り上げ方に関してはお寒い限りだ。

 早い話が、本作の主題は“抑圧からの解放”をシュプレヒコールとしてブチあげようという、そういうレベルなのである。もっとも、いくらテーマが青臭くても語り口や段取りがシッカリしていれば万人を納得させられるだけのクォリティは確保できるのだが、この映画はとことんダメである。

 プロットがあまりにも図式的。救いようが無いほど単純だ。いつの世も民衆を虐げている“権力”みたいなものが存在していて、主人公達はそれに敢然と立ち向かう・・・・って、今時少年マンガでもやらないようなナイーヴ過ぎるモチーフが漫然と並べられ、作り手はそれをさも“至高のもの”であるかのように得意満面で差し出している。まるで茶番だ。

 映像面でも見るべきものはない。「マトリックス」シリーズのような凝った造型はどこにもなく、どこかで見たような画像構成の二番煎じばかり。特に未来のソウル市の光景は「ブレードランナー」の劣化コピーでしかなく、観ていて脱力した(ジョークでやっているとしても、全然笑えない)。

 さて、本作の売り物に各キャストが複数のエピソードに別のキャラクターで賑やかに顔を出していることが挙げられるが、冒頭に書いたように、それだけは面白かった。特殊メイクと衣装で顔立ちどころか体型や人種・性別までもチェンジさせて、画面のあちこちに出没する。どこに誰がいるか探すのもゲーム感覚で楽しめる。いわば映画版“ウォーリーを探せ”であろう(笑)。

 ただし演技に関してはほとんど特筆すべきものはない。トム・ハンクスもハル・ベリーも、大した仕事はしていない。わずかに興味を惹かれたのがペ・ドゥナである。整形美人みたいなのが持て囃される韓国映画界にあって、彼女は突出した個性派で、それだけ各方面からの“引き”が多いのであろう。この映画でも人間離れしたテイストを醸しだし、強い印象を残す。今後もハリウッドに呼ばれるのかどうかは分からないが、面白い素材であることは間違いない。
コメント
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