BAMBOO-JET  ~うみの部屋~

タケノコジェットでどこへでも!
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神の守り人

2009-10-15 21:47:14 | 読書感想文
久々の読書感想文。
守り人シリーズです。
去年出た「虚空の旅人」から一年ぶりに夏に文庫版の続きが出た。
うれしいことに上下巻2冊もある。
これまで1冊完結だっただけに、2冊同時というのは驚きだ。
前回は旅人シリーズだったのでチャグム皇子が主役だったのですが、今回はまた「守り人」に戻り主役は女用心棒バルサです。
タンダも出てくる。
それでもって今度の舞台は、ヨゴの西に位置するロタ王国。
前回のサンガル王国に引き続き、ヨゴを取り囲む周辺国々が登場してきて、ますます世界が広がります。
このロタ王国を巡る旅、狼に襲われたり吹雪にあったり、北の果てのシベリアのようなイメージですね。
今回は国境の町で、たまたま温泉湯治場でバルサはわけありの兄妹を救います。
しかしその兄妹には恐ろしい秘密があった。

今回もまた用心棒であるバルサの強さがよく現れてる。
森の中でロタの「猟犬」の追跡を見事に免れる術、
シハナを躊躇せずにたたきこなす身のこなし、
一瞬の迷いもなく相手の目をつぶす動きなど、
なんてプロフェッショナルなんだろうと思います。
そうしないと自分が殺される。
それゆえの強さなんでしょうが、
一方で自分の身に宿った恐ろしき力の残虐さに気がついたアスラの苦悩を察するバルサ。
人を傷つけることの怖さを知っている、それゆえのやさしさ。
バルサは自分の子供時代とアスラを重ねてしまい、
彼女がこれから背負うであろうその苦悩に同情してしまう。
実はものすごく強い人なのに、ものすごく人の心に(特に幼い子供に)やさしいバルサ。
その人間臭いギャップがすごく好きです。
アスラはその力を自らの身に封じ込めるために最後は自分のみを犠牲にしてしまう。
そのせいで自分で自分を封じ込めてしまったアスラに、
バルサはそれでも目覚めなさいと言う。
生きるのがつらいと思うだろうが、
自分が生きていいと思えるようになるまでは長くなるけれど。
バルサと一緒に涙するタンダもほんとにこの二人は一緒なんだなーと思いました。
なんていうか絆の強さみたいなものを確認できたお話でしたね。
ますますこの話の世界観が広がっていくので、次回作も楽しみ。
次はどこの国が舞台なのか。。。

○神の守り人(上)来訪編(下)帰還編 上橋奈穂子 新潮文庫