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久しぶりに1000m峰へ

2010-12-13 | 花と自然
年も押し詰まった今日、今年最後になるかもしれない山行を思い立った。低山歩きでも少しは山らしい山にしようと思って、比良山系の釈迦岳を選んだ。朝ゆっくり出たこともあって、JR湖西線の北小松駅に着いたのは10時20分を回っていた。でもバスを使わず駅前からすぐに登山道に入れるというのが、ここを選んだ理由でもあった。駅を出ると小雨が降っている。今日は晴れたり曇ったりの天気ではなかったのかなと悔やみながらも、たいした雨でもないからと合羽を着て出発する。

 駅前から急な車道を歩いて観光名所の楊梅の滝を目指して登山道にはいる。京都周辺の山がどこも人工林なのとちがって、ここ比良の山は常緑広葉樹林だ。快適に登って雌滝への入り口から登山道を離れる。雌滝は16mの滝だが、その上に20mの中間の滝があり、一番上に40mの雄滝があり、連続させると滋賀県ではもっとも長い滝なのだそうだ。JR湖西線の車窓からもその勇姿が見える。雌滝から滝を回って雄滝に登る。さすがに雄滝は大きいだけでなく水量も豊富で、夏の暑いときならきっと楽しいだろう。だが、今日は雨模様。滝の水滴か雨滴かわからないけど、身体が濡れる。登山道まで登り返して、涼峠へと登っていく。途中、花一と言うところがある。地元の唄の歌詞に、「涼むきあげ 花一下りる 大滝小滝は唄で越す」というのがある。昔、柴を麓の民家に売りに行った山人が涼峠まで汗水垂らして登りあげ、花一の方に下りてくる。下の方の二つの滝までくれば街は近い。もう鼻歌がでる。というような意味だろうと勝手に解釈した。花一というくらいだから、きっと昔は花が咲き乱れる場所だったのだろう。いまでは花が咲くような場所ではない。きっと常緑樹が生い茂ってしまったので、花もあまりない場所になったのだろう。雨はほとんど上がったので、雨具を脱ぐ。

 涼峠に出た。きっと昔はここで峠越えの人が一息入れ、汗を乾かしたのだろう。涼峠とは良い名だ。いまでもここで登山者が休憩するにはなかなか良いところだ。ここから釈迦岳方面の登山道から外れ、寒風峠に向けて歩く。ほとんど上り下りのない平坦な道が寒風峠まで続いている。この道を歩くのは、涼峠から寒風峠までの間に湿地帯があり、なかなか良い風景があるというガイドブックの情報からだった。涼峠を過ぎる頃には、山はほとんどが落葉広葉樹林に変わっていた。落ち葉が地面に厚く散り敷いて、明るい樹林帯が続く。といっても今日は雨模様だから、ちょっと淋しく暗いが。秋の天候の良い頃なら、ここを歩くときっと素晴らしいだろう。天候が悪くてもこの道のすばらしさは、折り紙付きだ。地面はもろい花崗岩地帯。比叡山と大文字山の間にあるもろい花崗岩と非常によく似ている。きっとここまで続いているのだろう。寒風峠までの道は、狭い湿地帯を流れる渓流沿いの道だ。ときおり花崗岩が現れて、美しい渓流の景観を作る。この小川のほとりで弁当にしようとしたが、一番良い場所に親子連れ3人が七輪を持ち込んで料理をしていた。邪魔をしては申し訳ないので、挨拶だけにして私は少し先のあまり景色は良くない川のほとりで昼食をとった。この湿地は川の両側に狭い湿地があるばかりだが。源流に近いところに少し広くなった湿原があった。全体がミズゴケ群落で覆われており、京都に来てから近畿地方で初めてミズゴケ群落を見たような気がする。



 寒風峠のそばは、杉林が広がっている。天然の杉林なのか人工林かよくわからないが、どうも人工林のような気もする。山の上にこれだけ平らな場所が広がっていれば、あの拡大造林の時代に杉を植えないはずがない。寒風峠は名前からいかにも寒風が吹きすさぶ吹きさらしの峠と思っていたが、周りには落葉広葉樹林があり、風はほとんど吹いていない。むかし寒風峠と名前を付けて頃からずいぶん変わったのだろう。風は寒風峠からヤケ山への急登にかかる頃、強くなった。気温が急に下がり始め、雷も遠くで鳴り始めた。前線が通過したのかもしれない。雨もまた降り始めたが、気になるほどではないので、合羽も着ないで歩く。ヤケ山を越え、さらに急登が続く。木の根や石にすがりつきながら登る。今日の登山は標高差が約1000mだ。時間は短いが急登が続くため、かなりきつい。しかし高度はどんどんかせげる。800mを超えた頃から、登山道の周りに雪が現れ始めた。やがてまだらな雪がつながり、ヤケオ山に着く頃は、一面の雪原となった。降ってくる雨もどうやら雪に変わったようだ。気温は0℃近くになったらしい。合羽を防寒着代わりに着て歩く。手袋も出して防寒をしないと手が凍える。

 ヤケオ山から釈迦岳まではほとんど上り下りのない尾根歩き。危険はあまりないが、それでも雪があるので、左側の崖に滑り落ちないように、慎重に歩く。ガイドブックには、この尾根歩きは左に琵琶湖を一望にしながら歩けると書いていたが、今日は雲と霧に覆われて、展望はまったくきかない。周りの葉を落とした樹木の幹と地面の落ち葉と雪を見ながら歩く。この尾根はしかし、芽生えの頃にはきっと美しい林なのだろうと想像できる。地面にはいっぱいのイワウチワの群落が広がる。春はこの薄いピンクの可憐な花を楽しみながら歩けるのだろう。



 釈迦岳頂上に到着。標高1060m。久しぶりの1000m超えだ。一面の雪と霧。頂上と言っても展望はない。写真だけを撮って早々に下り始める。帰りはリフトかロープウエイを利用しようと思っていたから、もうそんなに歩く必要はないと高をくくって歩き始めたが、なかなかの急坂で、下るのも大変だ。途中、シャクナゲの大群落に出くわした。大木になっているシャクナゲが青く大きい葉を拡げている。もちろん花はないが、立派なシャクナゲに感動した。そこでふっと思い出した。「比良のシャクナゲ」という井上靖の小説があったなあと。昔読んだことがあるが、中身までは思い出せない。でもたしかに比良のシャクナゲという題だった。これがその比良のシャクナゲなんだなと、あらためて思った。春にはきっと素晴らしい花を咲かせるのだろう。小説になるほど比良のシャクナゲは有名だったんだ。比良に来たこともなかった私はその小説を読んでも何の感興も起こさなかったような気がする。

 リフトの駅までほうほうの体で下りたが、リフトの駅は閉鎖。どうやら動いていないらしい。ロープウエイも動いている気配はない。しかたなく歩いて下りる。歩き始めてそろそろ4時間を超えた。急な下りで足が痛み始めた。標高500m付近まで下りたところで、足が痛くて歩けない。足を引きずるようにしながら、痛みをこらえながらの下山だ。リフトが動いていればと恨み節もでる。リフトの下の駅までようよう下りたが、そこにあるはずのバス停もなくなっている。ちょうど前後して下りてきた人に聞くと、ロープウエイもリフトも数年前に閉鎖し、したがってバスも無くなったとのこと。琵琶湖畔のJRの駅まで歩いていくほかないとのこと。いや、泣きたくなったが弱音は見せられない。舗装道路になったので、足の痛みはごまかしがきくようになった。結局、1時間以上かけてJRの駅まで歩いた。比良山系は主峰の武奈ヶ岳を始め、有名な山が多く、登山者もきわめて多い山だったが、ロープウエイを利用できなくなって、いまではほとんど登る人が亡くなったと聞いた。武奈ヶ岳に登るのも倍近い時間がかかるから、登れる人が限られてくる。今では登山道も荒れてきているという。これは何とかして欲しいものだ。

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2 コメント

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よくぞ無事ご帰還で・・・ (mmadoka)
2010-12-13 19:01:07
 読んでいて、最後の方は、どうなっちゃうんでしょう・・・と思いました。
 ブログを書いているのですからご無事だとはわかっていても、、、^^。
 最後、ヒッチハイクとか考えませんでしたか? その元気さに脱帽です!!
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ヒッチハイクも無理 (比呂志)
2010-12-14 16:41:32
ご心配をおかけしました。なんとか無事に・・・^^;?

ヒッチハイクできればなあと思ったのですが、車も通らないし、途中から駅まで近道ということで林の中のハイキング道路を歩いたので、車に出会ったのは駅の近くの国道が初めてでした。

そのせいか、今日は筋肉痛(笑)
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