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大台ヶ原 観光客と山

2010-07-19 | 花と自然

一年に350日雨が降るといわれる大台ヶ原。年間降雨量は5000ミリを超えるという。その大台ヶ原に梅雨明けの一日、出かけた。今度も加賀白山登山をあきらめて、大台ヶ原にやってきた。大台ヶ原は、吉野熊野国立公園の中にあり、山伏修行で有名な大峰山系のとなりの山系にある。頂上付近は広大な平原状をなし、雨の多さから苔が岩や木を覆う深い樹林が特徴であった。青木ヶ原の樹林が標高1500m付近の頂上に広がっているようなものだった。ところが、近年、樹林が枯れ始め、下草にミヤコザサが一面に覆うようになり、苔に覆われた樹林帯は姿を消してしまった。いまは頂上のすぐ下に広がる正木ヶ原の枯れたシラビソの幹が立ち並ぶ風景が大台ヶ原の風景になってしまった。

 その変化の原因に鹿による食害を挙げる人が多い。現地で自然再生の試みを行っている環境省などの事業でも、鹿を追い出す防鹿柵を延々と並べている。たしかに鹿の影響もあるだろうが、それはしかし、結果であって原因ではない。原因はあきらかに人間にある。大台ヶ原ドライブウエイは、この山系を縫って延々と続いている。そこに連休や紅葉の時期には無数の車が列を作る。頂上付近にある駐車場は満員だった。このドライブウエイの建設が、現在の大台ヶ原を作ったといって良いだろう。それを鹿のせいにするのは、自分たちの愚かさを指摘されたくない人たちの言うことだ。そしてそれを真に受ける研究者たち。

 私は麓の駅からバスに乗った。一日たった一便のバス。連休のこの日でもそれが二便に増えるだけだ。なのに乗客はたった5名、帰りのバスは4名だった。大台ヶ原の道に溢れている大勢の人たちはほとんどすべて自家用車で来ている。

 大台ヶ原の西半分は、現在、原則として入山禁止になっている。特別の許可をもらった人が人数を限って西大台ヶ原にはいることを認められる。それも有料である。この制度は始まったばかりなのだが、自然をとりもどし、保全するために試験的に始められた。一方、東大台ヶ原は、観光客のために道路は整備され、木道がかなり設置されている。車で来た観光客がかなりの部分を革靴でも歩ける。Gパンにサンダルの若者たちがウロウロしているかと思うと、本格的な山姿の登山者もいる。標高1500m付近は高原のさわやかな風が吹いている。

まずは、観光客に混じって大台ヶ原の最高峰である日出ヶ岳(1695m)に登る。写真で見ていた木の階段はさすがに息を切らせたが、距離はほんのわずか。あっというまに頂上である。それでもさすがに歩けば汗がしたたり落ちる。頂上でお弁当を頬張り、ゆるゆると大台ヶ原周遊のコースにかかる。近年の大台ヶ原のシンボルであるシラビソの枯木の立ち並ぶ正木ヶ原を通るが、こんな風景は北海道のトドワラでよく見ているので、あまり感動もない。どんどん歩く。

 尾鷲辻からコースを外れて堂倉山を目指す。登山道もなく、大台ヶ原の本来の自然が多少とも見られる。苔に覆われた岩や樹木を見ながら、踏み跡を探しながら歩く。最初はしっかりした踏み跡があったが、そのうちよく分からなくなった。それらしいものを探しながら歩くが、どうもはっきりしない。そのうち誰かが付けたテープを目印にどんどん下っていくと、とうとう沢に降り立ちそれ以上行けない。テープも無くなってしまった。その近くで大きな枯れ木が目に付いた。幹にツキヨタケがびっしりと付いている。そしてその幹の下の方を見てびっくり。あきらかに熊が木の幹を削って穴を開けた跡が見える。大台ヶ原にはツキノワグマがよく出現しているというのをネイチャーセンターで見てきたところだ。木くずは真新しい。きっと昨日か今朝の仕業だろう。ちょっと警戒を強めて、どうするか考えた。どうやら堂倉山への道には迷ったらしいし、このまま沢を越えることもできそうもない。そう決まればすぐにコースに戻ることにした。

 コースまで戻る途中、灌木のミヤマシキミが美しい葉を拡げているのを見、美しいきのこのオオダイアシベニイグチを見つけた。コースを外れて歩いた成果だ。コースだけではやはり得るところは少なかっただろう。だが、時期が遅くてツクシシャクナゲの美しい赤色は見られなかった。バイケイソウの花はいまが盛りだ。



 コースに戻って大蛇ヶに向かう。なかなか高度感があり、今日の中では唯一高山の雰囲気を味わえるところだった。大峰山系はこのような峨々たる峰が続くらしい。とすると、大台ヶ原は、奇跡のような場所なのかもしれない。コースを全部回ってバス停に帰り着いた。合計4時間。コースを外れて歩いた時間が約50分だから、コースタイムよりは早く歩けたようだ。一月に35日雨が降るとか、年間350日雨といわれる大台ヶ原だったが、梅雨明けから2日目、無事に雨にも遭わず歩くことができた。奇跡的かも。日本百名山56座目だった。

帰りのバスもがらがらだ。テープの観光案内を聞きながらつい眠り込んでしまった。窓の外は大台ヶ原から西に向かう吉野川の流れだが、川砂利を採取している事業所があちこちに見られる。川を管理するという名目の事業もいろいろなされているようだ。川をもういじらないで欲しい。川が死にかかっている。吉野川、熊野川などの大きい川の水源である大台ヶ原の自然をこれ以上壊さないようにしたいものだ。

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