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ごまめの歯ぎしり・まぐろのおなら

サンナシ小屋&京都から世界の愛する人たちへ

藻場造成というまやかし

2006-12-07 | 環境
広島県の瀬戸内海に「ハチの干潟」というところがある。20ヘクタールくらいの狭い干潟だが、干潟がほとんど埋め立てられた瀬戸内海では残された貴重な干潟なのだ。そこには30年もむかしの子供たちが遊んだままの干潟が残されている。種類は減ったとはいえ、いろんな生物がまだなんとか生き延びている。干潟にはコアマモという海草が生え、干潟の沖にはホンダワラやアマモの藻場が広がっている。

 藻場は、海の生物のゆりかごと言われている。いろんな魚やエビやカニが子供の頃に藻場で生活し、大きくなる。瀬戸内海では昔はいたるところに藻場があった。いまではそのほとんどが干潟と共に埋め立てられてしまった。だから瀬戸内海の漁業は大きい痛手を受けた。とくにマダイやクロダイなどの高級魚が減少した。だから漁師は藻場が復活することを望んでいる。

 このハチの干潟で藻場造成工事が行われようとしている。漁師の希望に添って藻場を増やすために工事をするというのがその大義名分である。しかし、ハチの干潟にはコアマモやホンダワラやアマモの藻場が広がっている。そこに藻場を造成するという。なぜ藻場のあるところに藻場を造成するのか?

 その事業の詳細を知ると、なぜ藻場を造成しようとしているかがよくわかる。藻場造成工事には、干潟にどこからか土を持ってきて大規模に土を入れ、その上に海草を植え付ける工事をする。その土とはいったいどんな土か?そしてそれはどこから来るのか?いったい誰がそんな工事をするのか?それを知れば、なぜこんな工事をしようとしているかがよくわかる。けっして漁業者のためなんかではないのだ。

 この藻場造成工事を請け負っているのは、産業廃棄物処理を請け負っている海洋土木会社である。ようするに、浚渫などで出たヘドロを干潟に入れ、ヘドロ処理と藻場造成を一挙にやってしまおうと言うことなのである。たしかに業者にとっては一石二鳥でしょう。処理するのにお金がかかるところを別のところに利用してお金を生んでくれるのだから。しかし、埋め立てられる干潟の生物はどうでしょう。そして造成された藻場は役に立つものが出来るのでしょうか。

 実は藻場の造成というのは、全国いたるところでやられているが、成功した例はほとんど無いのだそうだ。植えて2~3年はなんとか海草がみられるが、そのあとはまず無くなってしまう。しかもハチの干潟はいまでも藻場があるのだ。そこに藻場造成と称してヘドロを埋め立てその上にアリバイ工作のような海草の移植をしても、いまある藻場が無くなるだけで造成なんかできっこない。しかし、行政の評価は、工事が終わった時点で検査をして、そのときに藻場があったら造成できたことになってしまう。あとは藻場が無くなろうとどうしようと知ったことではないのである。業者は金が入ればあとのことは知らない。

 そうして自然再生とか藻場造成とか言って、どんどん自然が破壊されていく。この行政の構造をなんとかしなければいけない。そうしないと、自然と共に生きている多くの生き物たちは、あっという間に絶滅してしまう。生き物が絶滅するような環境に人間は長く生きることは出来ない。彼らの運命は人間の明日の運命なのだ。

 とにかく、いますぐハチの干潟を守らねばならない。藻場造成は直ちにやめて欲しい。「藻場造成」という言葉を聞いたら、まずは眉に唾を塗ることから始めよう。