家の前の今朝のストリ-ト。昨日に降り積もった雪が朝日に光っている。気のせいか、こんな天気のいい日は何でもないつまらない風景が、どこかあたたく感じるから不思議である。雪の白い陰影もフトンのようにやわらかく見える。雪の中に、濃い薄い大小の影がグラデーションしていて、平面と思いきや立体を成しているのだったし、立体はまた、遠く平面世界を造形するのである。透きとおった空の青さを深く吸い込んで、春の新雪は一層白く輝いている。下の写真は隣家の小さな石塔で、かたむく雪の綿帽子が、いい。
山のおくの谿(たに)あいに
きれいなお菓子の家(いえ)がある。
門の柱は飴(あめ)ん棒(ぼう)、
屋根の瓦(かわら)はチョコレイト、
左右の壁は麦落雁(むぎらくがん)、
踏む舗石(しきいし)がビスケット。
あつく黄ろい鎧戸(よろいど)も
おせば零(こぼ)れるカステイラ、
静かに午(ひる)をしらせるは
金平糖(こんぺいとう)の角時計(かくどけい)。
誰(たれ)の家(いえ)やら知らねども
月の夜更(よふけ)におとずれて、
門の扉におぼろげな
二行の文字を読みゆけば、 ―
「 ここにとまってよいものは
ふたおやのないこどもだけ 」
( 新潮文庫版 『 赤い鳥傑作集 』 より西条八十作詞 「 お菓子の家 」 全文を引用 )