アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

指揮者アバドの思い出

2014-02-20 19:00:00 | 音楽/芸術

先月20日(1月)、指揮者アバド氏が自宅のあるイタリアのボローニャで亡くなった。享年80歳。

カラヤンの後任としてベルリン・フィルの常任指揮者となり、その後病に倒れラトルに常任を渡すことになるが、その後もルツェルン祝祭管弦楽団を立ち上げるなど精力的に活躍していた指揮者だ。日本でもファンが多く、アントンKの周りにもアバドを支持していた友人も多かった。ベルリン・フィル常任がカラヤンからアバドへと変わった時、随分音色が変わったことに驚いたものだが、絶対的権力で指揮していたカラヤンと違って、アバドの音は、もっと自由でオケも意欲的に鳴っていたと思う。アバド/ベルリン・フィルは実演に触れる機会が残念ながらなかったが、ウィーン・フィルでブルックナーを聴いた時(1989年11月)、当時久々に鳥肌がたったことを思い出す。楽曲は第4番だったが、冒頭のウィンナホルンのソロが素晴らしく、展開部での木管とホルンとの掛け合いの何ともチャーミングだったこと。さすがVPOだと再認識したものだ。そして贅沢にもブルックナーを聴くには、VPOに限ると思わされた瞬間だった。この時も、アバドの譜面の読みは鋭いことは聴いていて良くわかったが、改訂版からの引用がこの時の演奏には多かった(以後の演奏内容は、原典版に戻っていると思われる)ことには、ちょっと違和感があったことも思い出される。

アバドと言えば、ブルックナーよりもマーラー指揮者と言えるだろうか。交響曲も全曲録音で残している。アントンKは、その中では第3交響曲が特にお気に入りだ。(これもVPOの方)第6楽章「愛が私に語ること」での何とも言えぬ高揚感は、何度聴いても素晴らしく美しい演奏だ。

自分にとってのアバド指揮の愛聴盤を1枚選ぶとすれば、ベートーヴェンの第6交響曲かもしれない。(VPO)確かにアバドのマーラーはどれも素晴らしく、優劣を付けるのに苦労するくらいだが、マーラーは他にも個性的な演奏が数多く、1枚選択となれば話が変わってしまう。この「田園」交響曲では、まるでワルターを思わせるほどの内容で、この曲の奥深さを再認識させてくれた演奏であった。こう考えると、益々アバドの死が残念でならない。ご冥福を祈りたい。