アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

再認識した朝比奈隆の魅力

2013-03-24 07:58:06 | 音楽/芸術

世の中春休みになり、新しい年度に向けて何かと慌しい今日この頃だ。時間が自分を追い越していくようにどんどんと進み、時代に取り残されていく感覚の毎日だが、こんなとき、何も考えずに音楽に身を置くことは自分とって大切な時間だ。

今から35年前に衝撃を受けて以来、アントンKの宝となっている朝比奈音楽。当時を考えれば、一生聴いていくだろう音楽に出会えた喜びを感じて心踊っていた。しかし、この35年の長い月日には、音楽趣味上、あるいは自分自身にも色々な局面が訪れ、経験、体験を余儀なくしてきたわけで、あの頃感じていた朝比奈音楽と今とでは、少し変化してきたことは確かなことのように思える。

もちろん、アントンKのメインデッシュは、昔からクラシックであることは変わりないが、若い頃から、今でいうJ-POPや、海外アーティスト、ハードロックまで手を伸ばして聴きこんでいた。特に、X JAPANは、いまだに気になるアーティストの一人であり、復活してからもツアーには必ず参戦している。最近、目立った国内における活動がないことが残念ではあるが、きっと今年は何か動いてくれるのではないか。

クラシックの演奏会に限ると、最近の数々の国内のコンサートについて考えれば、総じてどれも優劣付けがたい素晴らしい演奏ばかりで、誰にでも、誰と聴いても外れのない演奏会なんだと思う。昔とは違って演奏技術も上がり、それなりに聴衆を引っ張り感動へと導く力量は大したものだ。しかし、アントンKには、なかなかそこまで響かなくなってしまった。そつのない上手い演奏。スマートでカッコ良い内容。これが、現代の演奏の集大成か。違う・・

求めているのは、もっともっと人間味溢れる目に見えない精神性の高いもの。技術より気持ちが優先する演奏だ。誤解を恐れず言うと、たとえ音が揃っていなくても、フォルテが汚くても、気持ちが出れば良いという中身の演奏だ。今は、時勢を反映してか、安全運転のプロ、安全運転の演奏が多いように思えてならない。サラリーマンの演奏者たちとでも言えるだろうか。そりゃ演奏家たちだって生活があるから、仕事として演奏していることぐらいは理解しているつもりだ。でも、朝比奈時代は、少なくともこんな感じではなかったように思えてならない。彼は、いつも演奏者に、「本番が終わるまでは、演奏する曲を好きになってほしい」と言っていたそうだ。好きでなければ、どうしても、仕事としてやらされている感が強くなってしまうだろう。もし仮に好きな曲の演奏となれば、全く内容は違ってくるはず。全体としてまとまった良い演奏になるだろう。

あの時代、可能な限り朝比奈のコンサートに通った頃、共通して求めていたものは「一体感」だったのかもしれない。生きていくことに必死だったけど、数々の演奏会に接することができて幸せだったと、今さらながら懐かしく思っている。

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そんな中、朝比奈の演奏会で忘れられないのは、やはり暮れに行う恒例の第九の演奏会だった。晩年の何回かだけだが、大阪まで行って聴くことができたことは、今も自分の誇りになっている。写真は、その第九のオーケストラスコア。朝比奈自身のものだ。左ページに、演奏歴を綴ることが彼の常とされているが、さすがに第九は演奏回数が多くて、ページ溢れている。