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【 コラム 】 温泉分析書の見方 (うつぼ流・初級編)の補足編

なんか御朱印ブログみたくなってきたので、たまには温泉の話題をば。
↑の記事、(つづく)といいながら、11年間も放置プレー(笑)してるので、ちと手を入れてみました。

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最近、温泉本などで、先生方がやたら「温泉分析書をCHECKすべし!」と説かれていますが、「んな、化学記号のラレツ、わかるわけないじゃろが、、、」と思われている方も多いのではないでしょうか。
でも、ツボをつかむと意外に簡単だし、自分好みのお湯を探しやすくなります。
で、温泉分析書の見方(うつぼ流・初級編)を、思いつくままに書いてみます。

1.温泉分析書のさがし方
まずはブツをさがします。
ふつうは脱衣所入口か脱衣所内浴室入口のカベあたりに貼ってあります。
玄関やロビー、浴場へ向かう廊下のカベも要注意、忍者のごとく八方にガンをとばしながら浴場へ向かいましょう (笑)
温泉スタンドがあるところはそこで探すのがベター(館内よりメモりやすい)。

たまに、フロントの奥深くに掲げられていることがあり(これ、「見やすい場所」じゃないのでじつは温泉法14条違反 ^^;; )、その場合、指さして「あの分析書写させてちょ~だい」と直談判します (^^;。
たいていギョっとされますが、温泉好きでいろんな温泉のデータ集めている旨説明するとふつうは快く写させてくれます。(掲示がないときも同様に頼む)
最近はHP上で公開されていることも多いので助かります。

■ 温泉分析書の実例 →こちら
 源泉名:富士眺望の湯ゆらり(山梨県南都留郡鳴沢村)
 泉質名:カルシウム・ナトリウム・マグネシウム-硫酸塩・塩化物泉
    (Ca・Na・Mg-SO4・Cl泉)

2.データを読みとる
「見てから入るか、入ってから見るか」は、気分次第のお楽しみですが、だいたいつぎのようなところをCHECKします。

1) 泉温
高ければいいというものじゃない。泉温が高いとどうしても加水しがちになるし、絞り投入の場合は鮮度落ちが速くなる。
40℃台後半~50℃台くらいのものは非加温、非冷却でつかえる可能性が高いので、わりに湯づかいがいいことが多い。(ただし湧出量がある場合)
泉温が低くても30℃台であれば、加温かけ流しなどという豪快なワザを繰り出してくるところがあるので油断できない。

2) 湧出量
利用施設の数・浴槽の大きさや揚湯・排湯規制との関係などにより湯づかいが決まることが多いので、よく雑誌などにある「湧出量**L/min以上あれば、かけ流しとみていい」的な短絡的な記事はあまり信じないほ~がいいです。(笑)
とはいえ、自家源泉で小ぶりの浴場の施設なら、50L/minもあれば新鮮な湯づかいが楽しめるような・・・。
湧出形態欄に、自然湧出や掘削自噴とあるお湯もポイントが高い。
関東平野部の温泉スパ銭では、自家源泉で数百L/minの湧出量のケースもめずらしくないので、揚湯規制をくらってもなお、良好な湯づかいを確保しているところがあります。

3) pH
さりげに浴感を演出する大きな要素。高くても(pH8~)、低くても(~pH3)、お肌ヌルすべ。
(ただし成分との関連強く、高くてもぜんぜんヌルすべしないことあり。)
→陽イオンでNa^+(ナトリウムイオン)が多いとヌルすべ湯になりがちです。

4) 成分総計
いわゆる成分の濃い薄いをあらわす。
0.1g/kg(100mg/kg)台以下だと地下水や入浴剤入り自宅風呂なみ。
3g越えてくるとけっこう濃い感じ、からだの浸透圧8~10g超だとかなり濃い。
これより濃い高張泉になるとからだの中の水分をもっていかれる感じが出てくる。

ただし濃ければいいというものではない。超薄くても神懸かり的な名湯があるので奥がふかいです。(成分との関連強い)
あまりに濃いと設備維持や排湯規制の関係から大量加水されがちなので、じつはスカ風呂指数もあがる。
総計が載っていないときは、溶存物質総量や蒸発残留物計でおおまかながら代用可。

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さて、つぎは、頭がいたくなる例のやつです。

5) 成分・分析および組成
「慣れないうちはすべてを見ない」、これがポイントです。(^^)

<おおまかな泉質イメージ>
陽イオンで、
Na^+(ナトリウムイオン) と Ca^2+(カルシウムイオン) と Mg^2+(マグネシウムイオン)

陰イオンで、
Cl^-(塩素イオン) と SO4^2-(硫酸イオン) と HCO3^-(炭酸水素イオン)

この6つをみれば十分です。最初は左からふたつの欄(mg/kgとmval)は無視してmval%だけを見るのがベター。
おおまかな泉質イメージは、このmval%の大小できまります。

たとえば行田「茂美の湯」の例では、このように読みとれます

(例題) <分析書データ(抜粋)>
Na-炭酸水素塩・塩化物温泉 41.4℃、pH=7.8、660L/min(1,500m掘削揚湯)、成分総計=1.31g/kg、Na^+=338mg/kg (87.03mval%)、Ca^2+=31.6 (9.34)、Mg^2+=4.13 (2.01)、Fe^2+=2.05、Cl^-=212 (36.06)、SO_4^2-=0.8 (0.10)、HCO_3^-=643 (63.39)、陽イオン計=382 (16.9mval)、陰イオン計=859 (16.6mval)、メタけい酸=50.2 <H16.9.24分析>

陽イオンの欄で、Na^+=87.03mval%、Ca^2+=9.34mval%、Mg^2+=2.01mval%。
ここでmval%が20未満のもの(この場合Ca^2+とMg^2+)は主副成分になれないので除外します。Na^+=87.03mval%だけが残りました。
で、陽イオンの主成分はNa^+、副成分は”なし”です。

陰イオンの欄で、Cl^-=36.06mval%、SO_4^2-=0.10mval%、HCO_3^-=63.39mval%。
ここでmval%が20以上のものを比べます(20未満のもの(この場合SO_4^2-)は主副成分になれないので除外)。
Cl^-=36.06とHCO_3^-=63.39では、HCO_3^-のほうが大きいのでこれが主成分。小さいCl^-が副成分。

泉質名は、
〔陽イオンの主成分〕 ・ 〔同 副成分〕 - 〔陰イオンの主成分〕 ・ 〔同 副成分〕
でつけるので、うえをあてはめると、
Na-HCO3・Cl泉(ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉)となります。

で、お湯の基本イメージは、Na-HCO3・Clから、「ちょいとツルすべ入ったやわらかな温まり湯かな?」となります。

なお、溶存物質総量が1g/kg未満のものは療養泉*になれず、↑のような塩類泉式の泉質名はつきません。
で、単純温泉(これはいちおう療養泉*)や規定泉*になりますが、泉質イメージを捉える基本的な考え方は同じです。
*)規定泉・療養泉についてはこちらをみてね。

ex.規定泉(メタけい酸)(Na-Cl型)
メタけい酸の含有量(50mg/kg以上)で温泉(規定泉)になり、Na^+とCl^-がそれぞれ20mval%以上の主成分であることをあらわします。

※ mg/kg値しか載っていない分析書もよくありますが、その場合も数値の大きいものがたいてい主副成分となります。
(ただし、mval%はmg/kg値を原子量で割りイオン価数を乗じたmvalのパーセンテージなので、mg/kgの数値が近い場合にはmval%で大小が逆転することがあります。例えばNa^+=520mg/kg、Ca^2+=490mg/kgの場合、mg/kg値はNaのほうが多いが、mvalではNa^+=22.6mval、Ca^2+=24.4mvalとなり、Caの値の方が大きくなる。)

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<隠し味的な成分>
イオウや鉄、炭酸など、ときには主要成分以上にお湯にアクセントをつけるものがあります。
これらは「特殊成分」といわれ、おのおの温泉法と鉱泉分析法指針により規定値が定められています。(「鉱泉分析法指針」の規定値を越えると泉質名がつく)
ここらへんの考え方はやませみさんの「温泉の科学」をみてね。(と、逃げる・・・ ^^;; )

経験値ですが、下の数値があってまともな湯づかいをしていれば、たいていおのおのの成分の浴感的特徴が出てきます。

総硫黄:1mg/kg以上 総鉄:2mg/kg以上 炭酸(二酸化炭素):350~400mg/kg以上

<さらに隠し味的な成分>
CO_3^2-(炭酸イオン)、メタけい酸、メタほう酸などは湯ざわり、F^-(フッ素イオン)は浴後感、NH4^+(アンモニウムイオン)、Br^-(臭素イオン)、I^-(ヨウ素イオン)などは温泉臭にそれぞれ関係しますが、いきなりここまで把握しようとすると結局グチャグチャになるので、最初は無視しましょう ^^)
(つづく)

【 BGM 】
■ Biggest Part of Me - Ambrosia


■ What A fool Believes - Doobie Brothers


■ The Best Thing - Richard Page


■ (I Could Never Say) It's Over - B.B.&Q.Band


■ CRAZY - Bill LaBounty
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