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十返舎一九 ―― 自分の死を笑いのタネに その4

2017年09月25日 00時09分22秒 | 健康・老いについて
 「江戸の定年後」 ご隠居に学ぶ現代人の知恵 中江 克己 光文社文庫 1999年

 十返舎一九 ―― 自分の死を笑いのタネに その4

 ベストセラー作家なのに貧乏暮し その2

「借金は富士の山ほどあるゆえに そこで夜逃げを駿河かな」

 これは一九が作中に書いた狂歌だが、彼自身、相当に稼いでいながら、いつも掛け取りから追いかけられていた。それだけ金遣いがあらかったのである。
 ときには、家財道具を売り払い、酒代にすることもあった。家財道具がなにもなくなった家に、一九は壁に白い紙を貼ると、簞笥や置物などの絵を描いた。すべて、あるつもりの暮らしだが、一九の家を訪ねた人びとはそれを見て、唖然となった。

 一九は貧乏など気にもとめず、ゆうゆうと仕事をし、酒を飲んだ。むしろ、いまを楽しむために仕事に励む、というところがあった。とてもほかの人に真似のできることではない。
 しかし、それでいながら作品を書くときは、まじめそのものだった。書斎にとじこもると、硯や筆、紙をきちんとそろえた机に向かい、家人を寄せ付けずに執筆に没頭したという。


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