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十返舎一九 ―― 自分の死を笑いのタネに その5

2017年09月27日 00時08分56秒 | 健康・老いについて
 「江戸の定年後」 ご隠居に学ぶ現代人の知恵 中江 克己 光文社文庫 1999年

 十返舎一九 ―― 自分の死を笑いのタネに その5

 ベストセラー作家なのに貧乏暮し その3

 遊び心が起こると、ふらりと出かけ、京や大阪などを遊び歩き、二ヶ月も三ヶ月も帰ってこなかった、という逸話もある。
 一九がよく旅へ出たのは事実だが、それは取材旅行で、いつも熱心にメモを取り続けていた。こうして、伊勢、播州、信州松本、上州草津、越後などにも足を運んだ。

 おそらく一九は、根がまじめ人間だったのだろう。ただし、自由奔放に生きたい、という思いが強かった。だから武士をやめ、町人たちのあいだで暮らしながら、軽妙で明るい滑稽譚を書きつづけたのにちがいない。つまり、一九は人を楽しませるのが好きで、それをまじめにやり通した、といってよい。
 とはいえ、底抜けの楽天家ではなかった。どこか屈折したところがあったからこそ、稼いだ金を酒や遊びにつぎ込み、さらに借金までして酒を呑む、という暮らしをしたのだろう。だが、つねに明るく、暗い陰の部分がないところを見ると、心根のやさしい人間だったように思える。


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