民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

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「日本語の学校」 鴨下 信一 はじめに その4

2016年09月15日 00時18分48秒 | 朗読・発声
 「日本語の学校」 声に出して読む<言葉の豊かさ> 鴨下 信一 平凡社新書 2009年

 はじめに その4

 ドラマを演出している間に、ドラマでない作品を「朗読」で音声化することに深い興味を覚えるようになって、白石加代子さんと『百物語』『源氏物語』をもう十年以上やってきたのをはじめ、『朗読21』『向田邦子小劇場』等、数々の朗読の舞台を手がけてきました。ひっくるめて、この本はこうしたぼくのキャリア、<日本語の音>に関する経験をもとにして書いたものです。
 ここのところ、<声に出して読む日本語>が関心を呼んで、本もずいぶん出ています。しかし、<どう声に出して読んだらいいか>を書いた本となると、なかなか見当たらないのです。
 この種のことは、」こうして文字に書いて本にして他人に伝えることが、とても困難です。でもこの何年か、「日本語の学校」と名づけてプロからアマチュアまで、さまざまな人を集めてワークショップを開いた経験では、なんとか文字で相当の部分を伝えられるのじゃないか、と思えるようになりました。
 読んでいただくとわかりますが、いわゆる朗読の本とこの本はだいぶ違います。この本はいわば<声に出して読む>ことで、その向こう見えてくるだろう<何か>、日本語の<何か>、日本語の文章、日本語の文章、日本語の本、日本文学の<何か>を探るための本です。だから「日本語の学校」なのです。単に朗読が巧くなるためだけの本ではありません。