民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

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「昔話の伝播・昔話の語る日と語る場」 水沢 謙一

2012年06月24日 01時03分26秒 | 民話(語り)について
 「雪国の炉ばた語り」越後・栃尾郷の昔話  水沢 謙一

(3)昔話の伝播

○北魚の広瀬から、箕(み)売りじさがきて、泊まった夜にムカシカタリをした(西中野俣)
○見附からくる反物屋のおかかは、丸まげ結って、キリキリしたあねさで、泊まって炉ばたで、ムカシを語った(北荷頃)
○二十村のカタリジサが、三晩もムカシを語った(吹谷)
○二十村の種苧原(たねすはら)から、ヤネヒキ(屋根葺き)ジサと箕売りジサがきて、泊まった晩にムカシカタリをした(西中野俣)
○栃尾郷の親類のカタリジサが、泊まって、ムカシを語った(一之貝)
○今町のトギヤ(研ぎ屋)のじさが、秋のすがれにきて何日も泊まり、夜になると、村の子供に、ムカシを語った(西中野俣)
○チョンガレ語り(大道芸)のザトウが、ムカシを語った(入塩川)
○ゴゼが、ムカシを語った(本所、下塩谷、吹谷、栗山沢)
○町からくるイモジヤ(鍋、釜、やかんなどを修理する)が、ムカシを語った(森上)

(4)昔話の語る日と語る場

 「秋餅ムカシの正月バナシ」のコトワザがあるように、昔話は、農の民俗と深くかかわっていた。
昔話は、秋餅(とりいれ祝、収穫祭)の晩か、小正月の予祝祭の作祝いに、昔話を語った。
 たまたま、栃尾郷の山郷にも、北魚の山郷にも、「イロリのハダカマワリ」という行事が、小正月の晩におこなわれました。夫は、褌をとって「アワボ、ブラブラ、ヒエボ、ブラブラ」と言いながら、
赤々と燃えるイロリを三度まわり、妻も腰巻をとって、「このかますに、ななかます」などと言って、
だいじなところを、シャモジでたたきながら、三度、イロリをまわったという。
カンノ(焼畑)の作祝いでした。
 そういうように、炉ばたは、ときにはハレの日の聖なる祭場となり、昔話もまた、年夜に語られ、
また小正月の農耕儀式の予祝祭の夜にも、アキモチ(収穫祝い)の晩にも、語られてきました。