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今回の衆院選で感じた違和感

2021年11月11日 19時42分32秒 | 戦争・改憲よりも平和・人権
 
この前の総選挙。「今度も自公与党が過半数確保」「野党で勝ったのは維新だけで野党共闘組は敗北」とマスコミで報じられてきた。でもなんか違う?そう思って、これまで9年間の衆院選結果を時系列で追ってみた。すると、マスコミ報道とは違い、与党は議席をずっと減らし続け、逆に野党が議席を増やしていた。維新も今回躍進したとは言っても、それでも9年前と比べたらまだ負け越している。
今回、多くの選挙区で与野党が接戦にもつれ込み、選挙予測が二転三転した事からも、野党共闘は確実に自公与党を追い詰めていた。しかし結局は競り負け、維新に「漁夫の利」を奪われてしまった。それに対する感想が下記の私のツイートだ。
 
衆院選過去9年間の議席推移
総定数480→465(▲15)の内訳
自公与党325→293で▲32
民主政権与党67→現立憲96で+29
左派野党(共社れ)10→14で+4
中間野党(国民民主)0→11で+11
保守派野党(大半維新)73→41で▲32
無所属5→10で+5
何だかマスコミ報道と大分違う。投票率が上がればもっと変わる
 
 
政党分類別に更に詳しく見ていく。まず自公与党から。公明党=創価学会で、それ以外の票の出入りがほとんどないので、自民党の党勢がそのまま議席の増減となって現れる。
 
2012年 325議席
2014年 326議席 前回比+1
2017年 313議席 前回比▲13
2021年
公示前 305議席 前回比▲8
選挙後 293議席 前回比▲12
差引▲32議席
 
岸田首相は今回選挙の勝敗ラインを自公で過半数の233議席に設定していた。公示前の305議席から72議席も少ない目標設定に、何と志の低い事かと呆れたのを覚えている。わざと低めに設定して、「敗北を最小限に食い止めた」と言い逃れるつもりだとしても、余りにも低過ぎる目標設定だ。
 
この様な異常に低い目標設定をしたのも、実は小選挙区での野党の候補者一本化で、自民党が予想以上に追い詰められていたからだ。最終盤での巻き返し、金に物を言わせての物量作戦で、からくも逃げ切る事が出来たが、勝った選挙区の多くも、数千票差の際どい勝負だった。
 
 
次にリベラル野党。このリベラル野党に限らず、政党分類の基準そのものが、ごく大雑把なものである事は予めご承知おきたい。今の立憲民主党の母体となった旧民主党自身も、元自民党や元社会党出身者からなる寄合所帯だった。それが離合集散を経て、次第にリベラル色を鮮明にしていく中で、今の立憲民主党が形成されて来た。
 
2012年 67議席
2014年 75議席 前回比+8
2017年 55議席 前回比▲20
2021年
公示前 109議席 前回比+54
選挙後 96議席 前回比▲13
差引+29議席
 
民主党政権が当初掲げた公約を次々と反故にする中で、2012年に自民党が政権に返り咲いた。この時は野党らしい野党は旧民主党の67議席しかなかった。今から思えば、よくこれで憲法改正が強行されなかったものだと思う。
 
しかし、アベノミクスの化けの皮が剥がれる中で、次第に民主党の党勢は回復していく。2014年の議席増は、基本的には維新や自民からの移籍組によるものだろう。そして、2017年に小池百合子がリベラル派排除を目論んで結成した「希望の党」が瓦解する中で、立憲民主党が自民党の対抗軸として浮上して来る。
 
しかし、この立憲民主党も、旧民主党と同様の寄合所帯だった。リベラル政党を自称しながら、右派の萩原仁や泉健太も票欲しさに擦り寄る中で、当初のリベラル色は次第に色あせていった。
 
自民党も表向きは「新自由主義の見直し」や「格差是正」を言い始める中で、立憲民主党と自民党の違いが次第に曖昧になって来た。どちらも表向きは「格差是正」を公約を掲げる中では、より大きい政権与党に票が流れるのは避けられない。今回の自民党との競り負けは、ある意味必然であったと言える。
 
 
今は衰退傾向の左派野党にも、昔は輝いていた時代があった。50年代から60年代にかけての安保闘争・沖縄返還闘争・ベトナム反戦運動の高まりや、70年代の公害問題など高度成長の歪みに対する批判を背景に、社会党や共産党が躍進した。
 
しかし、これらの党も、90年前後に起こった天安門事件やソ連崩壊を機に、次第に人気を失うようになる。「幾ら良い事ばかり言っても、中国・北朝鮮みたいな国になる位なら、今の自民党政府の方がまだマシだ」という事で、幾ら自民党の悪政が酷くても、政権批判票が左派野党には流れず、維新などの保守系野党(自民党の補完勢力)に流れるようになってしまった。
 
共産党は、アベ政治への批判を背景に2014年には8議席から21議席に増やす事が出来たが、新たに立憲民主党やれいわ新選組が反自民の受け皿として登場すると、浮動票は全てそちらに流れてしまった。社民党はそれ以上に衰退し、もはや泡沫政党と化してしまっている。
 
しかし、今の資本主義では、格差拡大も環境破壊も押し留める事は出来ないのは明らかだ。成長一本槍、競走一本槍のままでは、貧富の差は極限まで拡大し、最後には地球温暖化などの環境破壊によって、いつか地球は滅んでしまうだろう。
 
元々マルクスが「資本論」で主張したのは、一握りの金持ちが富を独占するのではなく、共同で管理し分配する共同社会の実現だった。それが社会主義本来の意味なのに、「共同体」を意味するコミューン(commune)から来たコミュニズム(communism)の概念を「共産主義」と訳してしまった為に、何でも国有化すればそれで良いのだと、ソ連や中国の指導者が誤解してしまったのだ。
 
だから、本来は共同社会の実現を目指した思想が、それとは正反対の、一部の特権官僚が国の富を独占し、個人の自由を抑圧する社会を生み出してしまったのだ。
 
社会主義本来の理想を実現する為にも、共産党は党名変更も含め、今までの在り方を変えなければならない所に来ているのではないか。幾ら共産党が頑張って立憲民主党に票を流して野党共闘の勝利に貢献しても、立憲民主党の票は共産党に流れず、自民党や維新に流れてしまっている。その状況を変えない限り、野党共闘は成功しない。
 
 
2017年衆院選を前に旧民主党が希望の党に再編され、それに反発したリベラル派が立憲民主党を結成。その希望の党が国民民主党と名前を変えて今日に至る。国民民主党を支えているのは連合(日本労働組合総連合会)だ。
 
連合は、名前こそ日本を代表するナショナルセンター(労働組合の連合体)だが、その中身は大企業正社員中心の御用組合だ。電力会社と一緒になって原発の再稼働や新増設を主張する電力総連なぞ、その最たるものだ。だから、連合は共産党を目の敵にし、共産党と引っ付く位なら、まだ自民党や維新と引っ付く方がマシだと、国民民主党を野党共闘から離反させたのだ。
 
しかし、内部には野党共闘を志向する人達も決して少なくはない。立憲民主党に合流する前は国民民主党に籍を置いていた、小沢一郎や森ゆうこがそうであったように。
 
国民民主党も、党幹部は反共で凝り固まっているが、下部党員や下部組合員は必ずしもそうではない。連合内部にも非正規労組が少なからずあり、ワーキングプアやシングルマザーの人権擁護の為に孤軍奮闘している。その為に、政党分類では維新の様な保守系野党(自民党の補完勢力)とは区別して、中間野党として位置付けた。
 
 
2012年に保守系野党として衆議院に議席を有していたのは、維新の会54議席と、みんなの党18議席、新党大地1議席の計73議席だった。
 
それが2014年には、維新41議席と次世代の党2議席の計43議席に激減している。減少分は多分、旧民主党に吸収され(57→73議席で+16)、残りは棄権に回ってしまったのだろう(投票率59%→52%で▲7ポイント)。
 
そして2017年には希望の党に流れ、維新は11議席と大敗。今年2021年衆院選で維新が11議席から41議席へと約4倍増と躍進したのが話題になったが、何の事はない、ただ単に失地回復を果たしただけだった。
 
2012年 73議席
2014年 43議席 前回比▲30
2017年 11議席 前回比▲30
2021年 41議席 前回比+30
 
それもマスコミの力を借りての「大躍進」だ。それが証拠に、維新の支持者に何故維新を支持したか聞いてみるが良い。大抵は「大阪府知事の吉村がイケメンで、コロナ対策に成功したからだ」と答えるから。
 
しかし、実際は全て嘘だ。コロナの医療崩壊が全国で最初に始まったのは大阪で、重症患者率や死亡率が全国最多を記録したのも大阪府だった。コロナ対策給付金の支給が断トツに遅れたのも、維新代表の松井が市長を勤める大阪市だ。
 
ところがマスコミはその事実を全然報道しない。大阪府市の行政を牛耳り、安倍政権とも仲の良い維新に遠慮して、御用報道に終始して来たからだ。
 
その様な「虚構人気」に支えられての維新の躍進である事を、まず見抜かなければならない。その上で、維新人気が、庶民の反エリート意識や差別意識に根ざした根深いものであり、決して侮れないものである事にも注意しなければならない。
 
どういう事か?維新は、地元で直接対峙する自民党大阪府連は批判しても、安倍・菅政権は絶対に批判しない。東京を見返す為に始めた大阪都構想も、担当部署名が「副首都推進局」である事を見れば分かる様に、東京の単なる猿真似に過ぎない。
 
維新は、地元の自民党大阪府連は批判しても、中央の自民党政府は決して批判しない。批判しても「福祉バラマキ反対、規制緩和で更なる成長を」と、自民党がこれまでやって来た福祉削減、規制緩和策を更に煽る様な事しか言わない。
 
大阪都構想も、東京一極集中を批判しているようで、実際は東京への権限集中、地方との格差を認めた上で、東京の「副首都」として「格差のお零れ」にあやかろうとしているに過ぎない。
 
本当の巨悪とは対決せず、それどころか逆に弱い者虐めの先陣を切る事で、No.2の位置を確保しようとしているだけだ。ジャイアンに媚びへつらい、のび太を虐めるスネ夫が、いわば維新の正体だ。
 
本当に日本を改革する気があるなら、ジェンダー後進国で外国人差別も強い日本で、女性解放やシングルマザーの権利擁護を主張してこそ、真の改革者と言えるのではないか。
 
しかし、維新が実際やっている事は、高校統廃合や福祉予算の削減、労働規制緩和=非正規雇用拡大、ブラック企業野放しなどの弱い者虐めばかりだ。それどころか、生活保護も失業保険も月数万円支給の「名ばかりベーシックインカム」に統合(縮小)しようとしている。
 
その挙句に、憲法9条は無くして逆に天皇を元首化すると主張している。こんな物は改革でも何でもない。単なる時代錯誤の戦前復古に過ぎない。
 
維新こそが最悪の自民党別働隊だ。池田のサウナ市長を始め、維新議員に不祥事の噂が絶えないのも、維新の体質が自民党と何ら変わらないからだ。マスコミの維新ヨイショの報道に騙されてはいけない。
 
以上、今回の衆院選での自民党の「持ち直し」は、実際は薄氷の辛勝でしかなかった。維新の「躍進」も、実際は自民党の別働隊でしかないのに、まるで反自民のホープであるかのように宣伝するマスコミ報道に支えられての、「虚構の勝利」である事を見抜かなければならない。
 
今回の衆院選と同じ時期に行われたドイツの総選挙では、地球温暖化防止、気候格差是正が争点になった。そして、6割台後半の投票率で、中道左派の社民党が保守のキリスト教民主同盟に勝利した。
 
それに引き換え日本はどうか?未だに時代遅れの新自由主義に囚われ、「成長か、分配か」の堂々巡りに落ち込んだ末に、「分配する為にも経済成長が必要だ」と言いくるめられてしまっているではないか。今まで散々格差を拡大して来た側が、少しばかり「格差是正」を言い出した途端に、また自民党に投票してしまう愚を繰り返している。庶民も現実の貧困に目を奪われるばかりで、気候格差是正は争点にもならなかった。「貧すれば鈍する」の格言そのままだ。
 
はっきり言って、余りにもレベルが低過ぎる。とても先進国の選挙だとは思えない。自分さえ助かればそれで良いのか?
 
何故そんな事になってしまうのか?有権者が諦めて投票に行かなくなってしまったからだ。
 
かつては7割台あった投票率が今や5割台。その上、選挙制度も大政党に有利な小選挙区が中心で、比例区も地方ブロックに分割。だから、得票率で見れば、リベラル票や左派票も合わせれば約31%と、そこそこあるにも関わらず、それらの票は全て分散され死票となり、数で勝る与党票や保守票に負けてしまうのだ。
 
 
ただ希望がない訳ではない。右も左も無党派層に切り込めない中で、唯一、れいわ新選組だけが無党派層にも切り込んで、今回も200万票以上集め、比例区で3議席を確保した。2019年参院選で初めて登場した新党故に、不慣れな面や疑問に思う点もないとは言えないが、それでも自民党や維新と比べたら遥かにマシだ。
 
もし仮に、れいわ新選組の山本太郎が共産党委員長に就任すれば面白い事になるのではないか?今のれいわ新選組代表の仕事については、共産党と統一会派を組む中で、共同代表に就任してもらえば良いのではないか?
 
発信力がピカイチの山本太郎に、野党の中では組織力に勝る共産党が加われば、鬼に金棒となるかも知れない。共産党も、本当に日本を変えたいと思うなら、これぐらい思い切った手段を取って欲しいものだ。

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