アフガン・イラク・北朝鮮と日本

黙って野垂れ死ぬな やられたらやり返せ 万国のプレカリアート団結せよ!

海上自衛隊 新人パイロット殺人調教物語

2006年09月04日 09時52分21秒 | 戦争・改憲よりも平和・人権
 安倍晋三の自民党総裁選正式出馬がもてはやされ、改憲・教育基本法改正や集団的自衛権容認や消費税10%などの言葉がマスコミ紙上を賑わせていますが、そんな世相だからこんな提灯番組が堂々と組まれたりするのでしょう。

 8月21日に、日本テレビ系列の「アンテナ22」という番組で、海上自衛隊の新人パイロット養成訓練の内容を取り上げていたのを見ました。海上自衛隊には航空機パイロット養成専門部隊が山口県下関市に在るのですが、其処の小月教育航空隊での、航空学生と呼ばれる新人研修生のパイロット養成訓練の様子を取り上げていました。

 まず最初の入隊式の直後に、教官が航空学生に対して喝を入れるシーンが出てきます。教官曰く、式を終えて教室で待機中に周囲の同期と雑談していたのが「弛んでいる!」という事なんだそうです。次の課業前の教室で隣同士ちょっと雑談するぐらい何でアカンのかと思いますが(そんな事なら最初から雑談禁止の旨を周知しておけよ)、軍隊だとそういう訳にはいかないのでしょう。
 そしてその後5分でジャージに着替えてグラウンドに整列させられるのですが、その間に別の教官が学生寮にある学生の私物を散らかし放題にしておきます。着替えに寮に帰って来た学生は散乱した荷物の中から自分の私物を探し出して着替えなければなりません。これは不測の事態にも冷静に対応出来るようにする為の訓練らしいのですが、それでなくても着替え時間が僅か5分しか無いのに、何でそこまでしなければならないのかと思いますね。これでは単なる虐めではないか。

 その後は航空学生はそれぞれの担当教官について練習機を使ってのマンツーマンの実機訓練となる訳ですが、ここでも私の目から見たらどうかと思う場面が出てきます。
 搭乗前の始業点検で、プロペラの下を覗き込んだ学生のお尻をいきなり教官が後ろから蹴り上げます。教官曰く「いつ不意にプロペラが回りだすかも知れないのに、無闇にプロペラの下に頭など突っ込むな」という事らしいのですが、何もいきなり蹴ったりせずに口頭で説明なり注意なりすれば済む問題だろうに。その始業点検が初回ならばそんな対応は論外でしょう。たとえそれが何度目かの点検で、既に学生が何度も同じ注意を受けていたとしても、その時の教官の教え方が悪くて学生が理解できなかった可能性もある。これも訓練に名を借りたシゴキ以外の何物でもない。

 実機訓練で離発着(タッチアンドゴー)の練習をする時も、学生は最初は機体を平衡に保って(アラインして)滑走路のセンターラインに沿ってのタッチアンドゴーがなかなか出来ないのですが、そこでも同乗の指導教官は「何故アラインしないんだ、このボケ!」という感じで隣の学生のヘルメットを小突き回します。何も小突き回す事ないだろうに。確かにこの教官は小突くばかりではなく、機内の計器類にばかり目を取られて外を見ない(だから機体を平衡に保ってのアラインが上手く出来ない)学生に対して、自転車で施設内道路をセンターラインを踏み外さずに周回させたりして、何とか平衡感覚をつかませようとようとする努力も見せますが。

 その他にも、「食事は10分間で済ませろ」とか、いろいろ疑問に思う指導場面に出くわしました。如何に不測の事態に対応しなければいけないからと言って、何も10分間で飯を食わせる事はなかろうが。こんな事を繰り返していたら胃潰瘍になってしまう。

 自動車の運転にしろパイロットにしろ、警察官や消防士にしろ、危険と隣合せの仕事に就こうとする以上は、一刻一秒を争う事態にも遭遇する訳ですから、理屈ではなく身体で覚え込まさなければならないという部分があるのは事実です。しかしそれでも、説明も抜きにいきなり「後ろからケツを蹴り上げる」とか「ヘルメットを小突き回す」とか、「飯は10分間で食え」は無いだろうと思いますね。そんな事をしなくても、学生に敏捷能力を身に付けさせる方法は他にいくらでも在るだろうに。

 これは、はっきり言って、番組で賞賛していた様な「愛のムチ」などでは更々なく、やっぱり単なる「シゴキ、虐め」ではないのか。何故なら、そこには一切「説明」というものが無いからです。説明も抜きにケツを蹴り上げる、頭を小突き回す、そうして理屈ではなく身体で覚えこませる。そうする事で、「危険なプロペラ回りには無闇に頭を突っ込むな」という、それ自体は真っ当な指導項目も、「飯は10分で食え」というような無意味な精神主義も、ごちゃまぜに無批判に叩き込まれていく。
 そこでは「一つ一つの訓練が自分にとってどういう意味を持つのか」何て事は一切考えさせない。かつて問題になった戸塚ヨットスクールの「教育方針」と同じです。その成れの果てが、旧日本軍のシゴキ・新兵虐めであり、中国戦線における略奪や民間人刺突訓練だったのではなかったのか。人間はウシやブタでは無い。

 
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3 コメント

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軍隊ならこの程度は当たり前 (原 良一)
2006-09-06 01:57:38
 正直なところ、この投稿を読んで、



>軍隊ならどこの国でもこの程度のシゴキは>当たり前。社会主義者様はカマトトだよ。



と苦笑してしまいました(失礼)。

 

 民放の報道番組の中で、自衛隊のこの種の訓練風景を紹介する特集コーナーは、失業中に何度か見ましたが、自分が見聞(主に海外の書籍の邦訳出版)した、各国の訓練と対比しても特に過酷でも理不尽でもないと判断します。



 一例を挙げれば、社会主義者様は



>「食事は10分で済ませろ」では

>これでは胃潰瘍になってしまう。



とお怒りですが、米帝の陸軍士官学校では、食事は8分で済ませるという規定です。またイラク戦争下でのクルド人の武装組織の訓練風景の取材映像では、昼食は椅子のない食堂で3分で済ますという具合です。イスラエルを含む中東主要国の軍隊は、旧宗主国の英軍仕立てが主流であり、英軍の訓練スタイルから取り入れられたようです。 



 てか、そもそもこの種の特集は、自衛隊が

お茶の間に流す「広報番組」にすぎず、



>我が軍は、こんなに頑張っていますよ

>頑張る自衛官を応援してね

>あなたも自衛隊にいらっしゃい



を強調したいのであって、自殺に追い込まれるほどの陰湿なイジメや、公金の不正流用など、軍隊の本質的な矛盾が報じられることなどまったく期待できません。



「広報番組」にマジレスするのは、より本質的な問題から目を逸らす結果にならないか?

と疑問を感じた次第です。
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Re:軍隊ならこの程度は当たり前 (社会主義者)
2006-09-06 22:57:53
 原さんどうもお久しぶりです。今後はこのブログを中心に活動していきますので宜しく。



 米軍士官学校やクルド武装組織でも、兵士の食事はそんなものですか。では以前TVで見た、ブッシュのバグダッド電撃訪問の時の兵士の和気藹々とした食事風景も、あれも完全なヤラセだったという事ですね。



 自衛隊の創設時には逆コースの時に公職追放を解除された旧軍関係者が力を発揮したと聞いてますので、今の自衛隊にも旧軍思想が未だに色濃く残っているのではないかと、私は思っています。しかしそれ以前の問題として、軍隊とはそもそもそんなモノなのでしょうね。同様の新兵虐めの事例は、米軍海兵隊などにも見られる様ですし。



 実はこのエントリーに対しては、他にもネットウヨと思しき連中から、「あれは愛のムチなんじゃ!」「軍事力でしか国を守れない以上、ああいう愛のムチは必要悪なんじゃ!」という荒らしコメントが少なからず寄せられました。鬱陶しいので公開せずに全部削除してやりましたが。



 確かに、当該エントリーでも例に出した、自転車で訓練生に平衡感覚を体得させようとした教官などには、そういう「愛のムチ」的な要素もあるのかなと思いますが、得てしてああいう環境においては、それ以上に「ストックホルム症候群」が幅を利かすようになります。実際には虐めでしかないのに、それを恰も「愛のムチ」であるかのように思い込ませるのに長けた輩が、大手を振ってまかり通るものです。



 日本も9条改憲で自衛隊が自衛軍になり、堂々と海外派兵が行われるようになれば、こういう「軍隊の論理」が民間にも浸出してきて、やがて社会の支配的な論理になってしまう。



 即戦力になるか否かで人間の価値そのものがランク分けされ、それにそぐわない人間は徹底的に排除される。戦前のハンセン病患者隔離の様に。これは何も戦前日本や今の自衛隊だけに限った事ではありません。

 思想差別や不当労働行為が蔓延り長時間労働や過労死に苛まされ「職場に憲法なし」と言われる様な職場の状況も、軍隊と似た様なものです。昨今の派遣・請負労働者が置かれている状況、成果主義賃金体系の下で休職者続出の富士通、典型的な「職場に憲法なし」職場の武富士、等々の例が示す通り。私はそんな社会はゴメンです。



> そもそもこの種の特集は、自衛隊がお茶の間に流す「広報番組」にすぎず、・・(中略)・・自殺に追い込まれるほどの陰湿なイジメや、公金の不正流用など、軍隊の本質的な矛盾が報じられることなどまったく期待できません。

「広報番組」にマジレスするのは、より本質的な問題から目を逸らす結果にならないか? <



 成る程仰る事もよく分ります。ただ、こんな「即戦力になるか否かで人間の価値そのものがランク分けされ、それにそぐわない人間は徹底的に排除される」 事を当然視しそれを「愛のムチ」などと賞賛するような価値観(所謂「軍隊の論理」)が、軍隊を頂点として、社会全体に蔓延してしまうようになってしまったら、それこそ北朝鮮の様な社会になってしまうのではないでしょうか。そうならないように、こんな論理には今からでも絶えず異を唱え続けていかなければならないと思います。
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Re:軍隊ならこの程度は当たり前(続) (社会主義者)
2006-09-06 23:05:44
(直近の同名タイトルのコメントの続きです)



 成る程仰る事もよく分ります。ただ、こんな「即戦力になるか否かで人間の価値そのものがランク分けされ、それにそぐわない人間は徹底的に排除される」 事を当然視しそれを「愛のムチ」などと賞賛するような価値観(所謂「軍隊の論理」)が、軍隊を頂点として、社会全体に蔓延してしまうようになってしまったら、それこそ北朝鮮の様な社会になってしまうのではないでしょうか。そうならないように、こんな論理には絶えず異を唱え続けていかなければならないと思います。



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 何回投稿し直してもコメントが中途で途切れてしまうので、今回は2つの投稿に分割してコメントしました。ブログのコメント欄は長文は受け付けないのだろうか? そんなに長文と言うほどの文章量でもないと思うのですが。
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