「燈を入れず凩つまる常夜灯」
百合山羽公は水原秋桜子門の重鎮だったひとだが俳壇からは超越していたとは、「折々のうた」で大岡信が書いている。
石造りの常夜灯は神社や寺にある灯篭式が一般的だろうが、その灯篭に火が入っているのはついぞ見たことがない。夜に灯りが点かないのなら常夜灯ともいえまい。今の常夜灯は泥棒除けに住宅の玄関て灯るLEDのことになったようだ。
常夜灯が灯りもともさずに、木枯らしが吹きすさぶ中、ぽつんと立っているのを見た感慨を詠ったもの。「凩つまる」という表現が絶妙で息を呑む思いさえするとと大岡は書いている。暗ければ木枯らしの方で吹き方に詰まるだろうという意味なのだろうか。
さて、「木枯らし一号」という初冬の到来を知らせる気象庁の天気ニュースについて、今夜の中日夕刊「夕歩道」がこう書いている。木枯らし一号が吹いたと気象台が発表するのは東京と近畿地方だけなのだそうだ。知らなかった。
気象台が発表しようとしまいと、木枯らしはどの地方でも吹くわけで、近畿で「一号」が観測された昨日は、名古屋の街にも冷たい冬の訪れをしらせる強い風に枯れ葉が舞い散っていたとある。
名古屋地方気象台では、北寄りの風、最大風速8.6mを午後4時に観測したのだそうだ。冬型の気圧配置で最大風速8m以上が条件だという大阪管区気象台の発表基準に即せば、昨日は名古屋地方も木枯らし一番日だったということになる。
金曜日の8日は二十四節気の「立冬」。近頃は節気と陽気にズレがあるとよく言われるが、今年はほぼ暦通りに木枯らしが吹き出したということになる。暦便覧には、立冬を「冬の気立ち始めていよいよ冷ゆれば也」とある。たしかに最低気温が一ケタにまで落ちてきた。伊達の薄着のままで頑張ってはいるが、正直風邪を引きそうだ。我が家の超高齢者は薄い掛け布団を2枚合わせた上に羽毛蒲団を被っても「寒いなあ」と言いながらご就寝である。
昨今の異常気象の日常化を思えば、暦どおりの冬の使者にほっとするとは夕歩道氏の言だ。
「一番と言はず一号木枯吹く」 右城暮石
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