5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

秋の声、蓑虫

2012-10-08 21:55:21 | 自然
秋の気配がすこしずつ深まる。今日は体育の日、寒露、そして二十三夜である。

三連休の最終日でJRAが開催されているので午後は中京競馬場へ。アプローチ道の途中、眼の前に蓑虫がぶら下がった。天蓋から細い糸が垂れ下がりその先っぽに木灰色の袋がついている。蓑虫を見るなんて久しぶりだ。気が付けば、周りの木の葉にも秋色が加わってきている。

さて、金田一春彦の「ことばの歳時記」。10月5日の項が、この「ミノムシ」である。

細枝や葉を噛み切って口から吐いた糸でこしらえるものだが、良く見るとなかなか上手く出来ていると金田一先生は云う。粘性のある糸のせいか織りあがったテント地は簡単には裂けない。防水防風効果もありそうだ。たしかにうまく作ってある。形は枝の形が残っていてまるでスマートとは云いかねる。「非情を感じさせる造形」とはやはり金田一先生の見立てである。たしかに見方によればモダンな造形ではある。

「風の音を聞き知りて、八月ばかりになれば、父よ父よと儚げに鳴く、いみじう哀れなり」、ミノムシは鬼の捨て子だといったのは「枕草子」の清少納言。蓑は、秋田の「なまはげ」に見られるように、「神人が着ける」という約束があった昔のことだから、彼女の生きた平安時代に「ミノムシ」と「鬼」との連想はずっと容易だったろうとある。

ミノムシが鳴くはずはないのだが、清少納言は「秋風の中にわびしく、儚げに鳴く虫」だとして文学的に捉えている。芭蕉も同じで、彼にはこんな句を残している。

「蓑虫の 音を聞きに来よ 草の庵」



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