5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

海鳴り

2019-10-11 21:46:10 | ことば

日没前の夕空を見上げると灰色の雲が北の方角に動いている。動きが速いというのは上空の風の流れが速くなっているということだ。昨日今日とふたたび最高気温が30度に近くなった。地上は風が止んで湿度も高いので、夏に逆戻りした感じがする。やはり、南海の台風が押し上げる熱い大気のせいだろう。

南知多の海岸に住むY君からメールが来た。古希を迎えたせいか身体の調子が狂ったとある。去年は膵炎で3か月入院したとも。予後はいいらしいが、3ケ月毎のチェックが要るらしい。家の近くの畑に出て農作業をする毎日だという。農作業をしながら海鳴りを聞く暮らしというのもなかなかオツなものだと思った。

坪内稔典先生の「季語集」にも「海鳴り」が載っている。室生犀星の詩集《抒情小曲集》に「そらは海鳴りをみなぎらす」という一節がある。曇天に海鳴りがひびいている海辺の情景。厚い雲に反響するのか、海鳴りは遠雷のように響くとある。

「百日草ごうごう海は鳴るばかり」

という三橋鷹女の句を引いて、海鳴りは台風や津波の前兆として、はるかな沖から鳴り響く。海鳴りが多いのは台風の発生があいつぐごろだと先生は書いている。こんどの台風は遅い秋台風だが、Y君も昨日あたりに海が鳴るのを聞いたのだろうか。

子供の頃の先生は、愛媛の浜で海鳴りを聞きながら、波打ち際の上方が平らになった「犬走り」を歩いて、魚や漂流物が打ち上げられているのを探すのが好きだったそうだ。やがて来る台風で、海岸の光景は一変してしまうのだが、その寸前にはらはらしながら歩いたのだという。それもあってか「海鳴り」には特別の気持ちが湧くらしく、歳時記には取り上げられていないこのことばを、秋の季語に推したいらしい。

台風19号は「ハギビス」というタガログ語の別名がついている。「素早い」という意味らしいのだが、秋台風には珍しくゆっくりとしたスピード(現在25km)で北上中、そろそろこのあたりも台風の外縁がかかってきたようだ。窓外では雨音がし始めている。気象庁のレーター画像でみると台風の西半分が広い雨域を形成し、三重県あたりでは強い雨が降り始めているようだ。

今日18時現在の台風は、大型で非常に強く、八丈島の南南西約490kmにあって、北北西へ進んでいる。中心気圧は 925hPa、中心付近の最大風速は50m/s 最大瞬間風速は70m/s。25m/s以上の暴風域は、東側が370km 西側が280km。15m/s以上の強風域は東側が750km 西側が650kmと大きい。さらに明朝06時には勢力を保ったまま、八丈島の南西約310km、明夕18時には石廊崎の西南西約30kmに達するという予報である。

「かくなるうえは、素早くお引き取りいただくようお願いするばかり」とは中日夕刊、夕歩道のコメントだが、明日はどうやら長い一日になりそうだ。





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