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藤枝MYFCを中心としたサッカー観戦記やサッカーに関する個人的な意見の書き込みが中心です。

書籍 「実況席のサッカー論」「続×実況席のサッカー論」

2012年02月15日 21時53分59秒 | その他
元NHKアナウンサーの山本浩氏とスカパーのサッカーアナウンサー倉敷保雄氏の対談本。
サッカー界の名アナウンサーが、サッカーに関する放送業界のことから個人のサッカー観まで語り合っている。
これまでに「実況席のサッカー論」「続×実況席のサッカー論」と2冊の本が出ている。

「実況席のサッカー論」はどちらかといえば放送業界に関する話が多く、実況の時の経験談などが数多く紹介されている。
「続×実況席のサッカー論」は放送業界の話はほとんどなく、サッカー好きのオヤジ2人が現在の日本サッカーについて熱く語り合っているという内容になっている。
個人的には「続×実況席のサッカー論」の方が読んでいて面白かった。実況アナウンサーを志している人なら「実況席のサッカー論」の方を読むべきだろう。

以下、印象に残った記述内容
・海外のクラブの練習を見る機会があるが、ゴールの数が非常に多い。ライプティヒは5面あるコートに計28台のゴールがある。そして様々なトレーニング、例えばボールの取り合いのトレーニングでも必ずゴールを置くようにしている。そうしないとゴールを意識しなくなってしまい、自分がどう立っているのかということを意識しなくなってしまう。日本の場合はゴールが3台以上あるところは極めて少ない。
・経験を積むと取材の取捨選択をするようになる。若いときは「何でもいいからそのへんにあるものを吸っちゃえ」というやり方になる。でも吸ったものをいちいち選別している時間がない。15年とか20年たつとそこにあるものとここにあるものを足せばOKというのがわかってくる。
・民放はハンディキャップを背負っている。スポンサーがバックについているが故に盛り上げる中継をしなければいけない。
・レフェリーについて、レフェリーのみならず日本人全ての中に「ファウルは起こってはいけないもの」という感覚がある。だからファウルが起こるとすごく腹が立ってくる。「何やってるんだお前」と。ゲームをコントロールできないレフェリーにはそういう人が多い。
・日韓W杯の日本対ベルギーの試合で、ベルギーの選手紹介の時に日本サポーターがちゃんとブーイングしてくれた。決してほめられたことではないがこの時本当に12番目の選手達だと感じた。でもベルギー国歌の時にはブーイングしなかった。これもまた日本人らしくてとてもいいなと感じた。
・日韓W杯での日本代表は23人ではなく50人。FIFAからIDカードが各国代表チーム50枚渡されていた。23枚は選手、残り27枚はスタッフに分けられたがその27枚の内訳をメディアはほとんど報じていない。監督やコーチ以外にどんな人がIDカードを受け取りチームに帯同していたのか、ドイツは選手の精神面をケアするためにカトリックやプロテスタントの聖職者を1人ずつ置いていた。またカウンセラーを置いていたチームもあった。日本は練習会場に広告がちゃんと出ているかチェックするために広告代理店の人が入っていた。
・Jリーグチームは結果が出ないとすぐに監督が首になってしまう。クラブの体力がないように感じる。
・「2-0を危ない点差」だと言っているチームは、結局弱いチーム。
・審判はだいたい1試合に11キロから15キロぐらい走る。あるデータによると、選手が6秒に1回体のコースを変えるのに対して、審判は4秒に1回変えているという。
・最近の子供はロングパスが少ない。子供の頃は筋力がないから長いレンジのパスが出来ない。途中でカットされちゃうのでショートパスが増える。例えば練習のボール回しでのサークルの大きさ、どこのチームを見ても大きくてもセンターサークル程度の大きさしかない。半径が小さい。キック力は蹴れば蹴るほど伸びるもの。
・サイドバックの攻撃がチャンスになるか否かはサイドバックのトラップ次第。
・Jリーグのチームはまず負けないサッカーを目指す。攻撃的なサッカーの試合はJリーグには少ない。
・プライドというのは、相手への敬意というものがどこかで支えてくれないと成り立たない。
・Jリーグは短いスパンでチームを増やしたが故に審判が足りなくなった。プレーのレベルが落ちたことでジャッジもぶれてしまう。
・選手のフィールド内での審判に対する発言というのは、非常に失礼な言葉がある。1回ラグビーみたいにレフェリーにマイクを付けてみたら良い。
・レフェリーには癖があるという事を理解しないといけない。ルールは一緒でも解釈は色々。
・レフェリングの基本は、プレーに最も近いところでどう見えたか、事実がどうだったかではない。
・ナビスコカップでベストメンバーを組まずに若い選手が出てきてもナビスコ側が怒らない。「若い選手が見られて良いじゃないですか」くらいの感じで非常にものわかりの良いスポンサー。
・Jのチームは常にカウンター対策に重きを置く。Jリーグの監督のビジョンは驚くほど似ている。選手をじっくり育てたいが「結果を出せ」と時間に追われている。
・育成について、最初からとことん教え込んじゃうとダメ。1から全部教えるんじゃなくて、自然に育ってきている選手をある程度の段階で取ってきて付け加えていく感じでないと。スポーツに関して言うと教育することで教えてあげられる部分は、良くてせいぜい6割。