マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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能勢町長谷卯月ヨウカのテントバナ

2012年07月21日 07時52分44秒 | もっと遠くへ(大阪編)
70数世帯からなる長谷地区は棚田が広がる大阪府能勢町。

標高は500mも越えるという。

上から見下ろせばそこは原風景が広がる。

萱葺き民家も何軒か見られる長谷の地。

のどかな美しい里山に棚田が一望できることからその景観を描く写生人もいる。

数か所で鯉幟もあがっていた。

懐かしい風景に魅入られる。

その一角にテントバナを立てられたH家。

紹介してくださったのは隣村の平野の大石らんま製作所の親父さんだ。



H家では毎年揚げているという。

この日は前前日に立てたテンテバナの下にアミガサダンゴを供える。

お神酒口にはサカキを挿している。

立てる場所は庭の玄関先。

いわゆる家のカド(門)である。

敷地内に建築中の家屋。

新旧の家屋の間にそびえたつテントバナは倒れないように土台の杭に結わえておく。

5月8日は「ヨウカビ」。

ひと月遅れのヨウカビだという。

慈眼寺では甘茶で接待。

その甘茶を貰いにいくというからお釈迦さんの日。

レンゲやスミレの花を飾る御堂があるという。

テントバナは竹竿。

目線で測った長さはおよそ7m。

天頂には十字の花が縛られている。

花はアカバナツツジ。

大石らんま製作所もかつてテントバナを立てていた。

花はこれだと案内された田んぼの傍に咲くカキ色のツツジ。



遠めだがどうやら異種のツツジに見えた色花だった。

H家の話では、前日ではなく前前日の6日に立てる。

その理由に「ヨイバナ(宵花)はいかん」というのだ。



お供えはヨモギモチ。

二枚に重ねた中に餡が入っている。

その形からアミガサダンゴと呼んでいる。

お供えをするのは「ニッテンサンに供える」という。

ニッテンサンにご馳走をするのは日の照りのおかげ。

それで耕作がうまいことできると話す。

ニッテンサンはおそらく「日天」であろう。

太陽を「オテントサン」と呼ぶ地は多い。

我が家もそうだった。

そのオテントサンのおかげで米ができる。

ありがたい太陽に感謝して高く揚げるテントバナ。

お日さんが出る方向に向けるという。

まさに「オテントサン」に捧げる「ハナ」がテントバナ(天道花)なのである。

竿竹は毎年替える。

家の畑で家人と共に種植えをされていた三人の婦人がおられた。

話によれば能勢長谷の棚田オーナー制度に参加して以来、とても気にいったそうで、その後も度々訪れるようになったという。

この日も訪れていた婦人たちは同年代。

後述する八阪神社の御田植え祭りは始めて拝見されて、数々の能勢の話題に盛りあがる。

家人のご厚意でテントバナに供えられたアミガサダンゴをいただいた。

実に美味しいヨモギ味のダンゴ。

H婦人の手作りだという。

一般だったでしょうか、お店のヨモギダンゴとは違って格別のお味。

どこかが違う。

まさかと思うが、能勢の愛情ではないかと思った長谷の景観。

それまた美味しいものであったことを記しておく。

短時間の能勢取材を終えて一路奈良へ。

能勢を旅だったのは16時40分だった。

阪神高速大阪空港料金所、西名阪松原本線料金所、天理料金所を通過して名阪国道を東へと向かう。

急いでいるのは山添村の様子を確認することだ。

この日を逃せば一年後となる。

(H24. 5. 8 EOS40D撮影)