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「ブラック・ホーン」はザンベジ川と香港を舞台に香港マフィアに復讐を果たすクリーシィの活劇

2017年04月04日 | 斜読

book437 ブラック・ホーン A.J.クィネル 集英社文庫 2001 
 もと傭兵クリーシィシリーズの4作目になる。私は1作目、2作目に次いで4作目を読んだ。多くのシリーズ物は主人公が様々な事件、状況のなかで活躍するが、それぞれ独立した展開で物語が完結する。対してクィネル著のクリーシィシリーズは、1作目を下敷きに2作目、2作目に続いて3作目、3作目を発展させて4作目へと連鎖していて、クリーシィも年をとっていく。
  1作目では、クリーシィがボディガードをしていた娘が誘拐され、殺された。その復讐を果たし、マルタ・ゴゾ島で平穏に暮らし.結婚し、娘が生まれた。
 2作目の冒頭で、クリーシィの妻と娘が飛行機爆破テロで命を落とす。復讐のために孤児のマイケルを養子にし、実戦力を身につけさせる。同じ飛行機で妻を亡くした資産家でアメリカ上院議員のグレインジャーの協力を得て、クリーシィとマイケルは復讐を果たす。

 3作目は読んでいないが、クリーシィとマイケルが奴隷売買組織からジュリエットを救い出し、クリーシィはジュリエットを養子にしたらしい。
 4作目ではジュリエットが留学のためにグレインジャーの邸宅に住むことになるが、これは本題ではない。グレインジャーの選挙区に億万長者のグローリアがいる。かつて事故で夫を亡くし、半身不随になった。
 グローリアには一人娘のキャロルがいたが、ジンバブエの奥地のザンベジ川のほとりでクリフ・コッペンという動物学者とキャンプをしていて、二人とも殺されてしまう。なんとか犯人を見つけ復讐したいとグレインジャーに話す。グレインジャーの依頼を引き受けたクリーシィとマイケルはグローリアとともにジンバブエに向かう。

 タイトルのブラック・ホーンは犀の角のことで、中国では強壮になる人気の漢方薬として知られていた。しかし、乱獲が進み犀は絶滅危惧種に指定された。香港マフィア三合会14Kの首領トミー・モーは密猟を重ねさせ、莫大な利益を上げていた。
 香港の医者グウォクは犀角に発がん物質が含まれていることを突き止め、その原因が生息地であるザンベジ川周辺の環境汚染にあると考え、犀の生態観測をしているクリフ・コッペンに手紙を出す。
 その一方で、トミー・モーに発がん物質が含まれているので犀角の乱獲を止めるよう手紙を出す。莫大な利益を上げていたトミー・モーはグウォク一家とクリフ・コッペンの殺害を指示する。グローリアの一人娘キャロルはクリフ・コッペンと一緒にいたため殺されたことがあとで分かってくる。
 クリーシィは、もとローデシア独立戦争でめざましい働きをしたセルー斥候隊のマキシーに応援を頼み、キャロル、クリフが殺害されたザンベジ川に向かう。マキシーの情報で、犀の密猟業者で殺しが好きなロルフ・ベッカーが浮かび上がる。

 話が前後するが、グウォクの娘であるルーシーは仕事のため家を離れていて、一家惨殺の難を逃れた。憔悴しているルーシーの前に、香港警察三合会対策部長のコリン・チャップマンが現れる。イギリスに詳しいルーシーと中国に詳しいコリンは次第に意気投合する。
 二人でグウォク一家殺害の手がかりを探したところ、父グウォクの研究メモや手紙の原稿が見つかり、トミー・モーの犯行を確信する。ところが、トミー・モーの配下が二人を殺しに来る。コリンは自分を犠牲にしてルーシーを助ける。
 ルーシーは父の手紙の相手であるクリフがキャサリンとともに殺されていること、キャサリンの母グロ-リアがザンベジ川にいることから、手がかりを得ようとザンベジ川のグローリアに会いに行く。

 クリーシィ、マキシー、マイケルたちは殺しの実行役であるベッカーたちを倒すが、マイケルは致命傷を負い、半身不随の宣告を受ける。車いすの生涯を悲観したマイケルは病院の窓から身を投げ、自らの命を絶ってしまう。
 クリーシィ、マキシーたちは、キャロルとクリフ、グウォク一家殺害の真の主犯でありマイケルの死の引き金でもあるトミー・モーに復讐するため、グローリア、ルーシーとともに香港に向かう。

 復讐戦開始の直前、ルーシーがトミーモーの配下に拉致され、身代金を要求されてしまう。クリーシィ、マキシーたちはこの難局をいかに切り抜け、復讐を果たすか、息をつかせぬ活劇が展開していく。
 クリーシィは、p27・・善良な生活を送るには正直でなければならない・・人生で他人を騙せば頭に岩が落ちる・・と語るが、これがクィネルの人生観であろう。しかし現実の社会には悪がはびこっている。
 クィネルは、p271・・娘の死に対するグローリアの復讐、家族の死に対するルーシーの復讐、マイケルの死に対するクリーシィの復讐・・がp335・・正義の大義・・と復讐劇を物語にした。現実を取材した虚構なだけに迫真的だが、真意はテロや殺人、騙しのない社会であろう。

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