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11月19日(月) 伯父を見舞った少女

 伯父から聞いた話。小生の伯父は戦時中満州にいた。関東軍の少尉として駐留していたが、現地で病気になった。高熱を発して数日間うなされていたら、窓から10歳前後の少女が顔をだした。中国人の少女か日本人の少女かよく憶えていないとのこと。会話を交わしたのだから日本人と思われる。
 少女は心配そうな顔で、病室の窓のワクを両手で持ちその上にあごをのせて「だいじょうぶ」と伯父の病状を気遣った。伯父は「だいじょうぶだよ」と答えた。伯父のよく知らない少女だが実に優しそうな少女だったそうだ。
 少女が去ったあと伯父は、その病室は4階で、少女が顔を出した窓は廊下側ではなく庭に面した窓だったことに気がついた。窓の外には足場になるようなものはなく、すぐ4階下の地面が見えた。
 その直後ソ連軍が侵攻してきて、伯父は病み上がりの身体でからくも逃げて、なんとか日本に帰ってきた。
 その少女は誰だったのか、実在の少女か、高熱のために見た幻影か、生前の伯父に、小生は聞き出すことはしなかった。
  
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