雫石鉄也の
とつぜんブログ
SFマガジン2013年12月号

SFマガジン2013年12月号 №693
早川書房
雫石鉄也ひとり人気カウンター
1位 ミス・ユニバース誕生! ジャック・ヴァンス 酒井昭伸訳
2位 暗黒神降臨 ジャック・ヴァンス 酒井昭伸訳
3位 世界捻出者 ジャック・ヴァンス 中村融訳
4位 ウンディ 草上仁
5位 パリンプセスト(後編) チャールス・ストロス 金子浩訳
ジャック・ヴァンス追悼特集
ジャック・ヴァンス年譜
追悼エッセイ
追悼・金子隆一
追悼エッセイ
「センス・オブ・リアリティ」再録
未発表原稿「中生代のシー・モンキー」
連載
椎名誠のニュートラル・コーナー(第40回)
過去行き、未来行き列車をまちがえると大変ですよ 椎名誠
近代日本奇想小説史(大正・昭和編)(第5回) 横田順彌
SFのある文学誌(第24回) 長山靖生
パラフィクション論序説(第14回) 佐々木敦
今月は、はからずも追悼特集が2本並んだ。ジャック・ヴァンスと金子隆一。ヴァンスは96歳。金子は57歳。長寿を全うしたベテラン作家と、志し半ばでたおれたサイエンス・ライター。ご両人の冥福を祈る。
さて、ジャック・ヴァンス。小生、ヴァンスにはあまりなじみはない。記憶に間違いがなければ、ヴァンスの単行本は一冊も読んでない。でも、SFマガジンに掲載されたり、アンソロジーに収録されていたら、素直に読んでいる。読んで別に不満のない作家だ。本棚を探したら銀背の「大いなる惑星」が「とりあえず買い」してあった。昭和42年発行。46年前。ずいぶんと長い「とりあえず」だ。これを機会に読むか。
追悼特集の3篇。いずれも面白かった。
「ミス・ユニバース誕生!」
カリフォルニア州三百年記念博覧会のイベントとして銀河一の美女を選出するミスコンを開催する。銀河各地から、それぞれの星の基準に沿って選ばれた選りすぐりの美女が集まってきた。
その星の人間?の目で見たら美女だが、地球人の目で見ればベム。ミスコン会場はベムのオンパレード、と、見える地球人には。もちろん地球代表もいる。こんなミスコンのミス・ユニバースはどうして決めるのか。
「暗黒神降臨」
老哲学者マグナス・リドルフの前に、ハワード・サイファーなる鉱山主がやってきた。強面でどでかくエラそうなサイファーはリドルフに仕事の依頼。鉱山の作業員が行方不明になる。なぜか調べてくれ。ハードSFといえばハードSFである。
「世界捻出者」超大ベテラン、ヴァンスのデビュー作。ラナークはおたずね者の女イザベル・メイを追う。ところでメイの囚人番号だが本文には、94E-627とあったが、イラストには94E-626とあった。どっちがほんまや。校正はちゃんとやるべし。
以上、ジャック・ヴァンス追悼特集の3篇は、スペオペ、お笑い、ハードとバラエティに富んでいて、ヴァンスの芸域の広さがよくわかる。
「ウンディ」ミュージシャン、シロウはウンディひき。相棒のウンディの名前はサッコ。サッコのレベルはセブン。本当はイレブンのウンディが必要なんだが、シロウにとってはサッコが最高の相棒。 なかなかの音楽小説。生きた楽器というアイデアが面白い。
「パリンプセスト」ストロスはどうも独りよがりでいかん。
ショートショートの公募企画である「リーダーズ・ストーリー」が終わった。豊田有恒氏が選者をやっているころから、何年ぐらい続いてたのだろう。もうずいぶん続いていたのではないか。ちゃんと調べていないが、もう30年ぐらい続いた企画ではないだろうか。これだけの長寿企画をなぜ突然打ち切る。なんだか唐突な感じがする。ともあれ、こういう公募企画はぜひ欲しいので、復活を強く願う。選者の星敬氏はどうもご苦労様でした。
「SF挿絵画家の系譜」も終わった。こちらは、もっと唐突な感じが強い。この連載もずっと読んでいた。連載当初は、主だった挿絵画家を一通り紹介したら終わると思っていた。ところがSFのイラストレイターを一通り紹介しても終わらない。昔の画家にまで言及しだした。これは、大橋博之氏は小生が考えていたよりも、もっと大きな構想でこの連載をしていると思っていた。こんな苦言をいったこともあったが期待していた。SF挿絵とはなんだということに迫ることを。で、まず、挿絵とはなんだ、という段階だと思っていた。そしてSFとはなんだ、まで行って、SF挿絵とはなんだ、と、大橋氏なりの結論を出して連載を終わると思っていた。それが突然の連載終了。大橋氏の意向とは違い、SFマガジン編集部の都合で打ち切られたように見える。
「リーダーズ・ストーリー」といい「SF挿絵画家の系譜」といい、終わった本当の理由はなんだ。それに編集後記で、「重大発表もあるかもしれません」と書いてあった。なんだかいい感じはしない。
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