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探偵小説の街・神戸


 野村恒彦           エレガントライフ

 なんと神戸愛と探偵小説愛に満ちた本であることか。探偵小説ファンで神戸を愛する人が読めば、魅了されること間違いなしである。
 著者は神戸探偵小説愛好会代表で、稀代の探偵小説読みである。また神戸生まれで今も神戸在住。中央区の川崎重工本社近くにある横溝正史生誕地碑建立にも尽力された。小生とは、神戸文学館でこういう企画をやった時にごいっしょしたりして、ご厚誼をいただいており、年に何回か酒席をごいっしょする。
 神戸は日本の探偵小説にとっては大変に重要な街。大正11年9月17日。大倉山の神戸市立図書館に三人の男がいた。江戸川乱歩、横溝正史、西田政治。この三人が神戸に集まったことによって、日本の探偵小説は助走を始めた。
 その横溝正史、西田政治、そして山本禾太郎、戸田巽、酒井嘉七といった日本の探偵小説幼年期に欠かせない人たちを神戸は生んでいった。著者は彼らに関わる土地に可能な限り足を運んでいる。生誕の地、住んでいた所、彼らが会合を行った所。記録が残っていないこともある。同じ事柄でも資料によって違う記載がなされていることもある。それに神戸は、大水害、大空襲、大震災と大きな災害に見舞われ、街の様相が大きく変わっている。
 著者は神戸市の古い文書にあたり、存命の関係者、また他界されている場合は遺族に、実際に会われ話を聞き、現在の神戸の土地を特定し写真に収めている。そして、もちろん、往時の彼らの探偵小説への情熱を伝え、それを育んだ土地神戸という都市の魅力も表現している。労作。じつに丁寧な仕事だ。小生(雫石)にとっても、おなじみの場所ばかりで、興味深い。
 横溝正史生誕地碑建立の顛末も書かれていた。この横溝正史生誕地碑建立を記念して毎年11月に記念イベントが行われている。今年は16日に行われる。

 横溝正史生誕地碑建立9周年記念イベント
  日時 11月16日(土) 午後2時~
  場所 東川崎地域福祉センター
     神戸市中央区東川崎町5-1-1 ℡078-652-3866
     内容 講演「横溝正史と私」
     講師 綾辻行人
     参加無料

 後半は、「神戸とミステリー」と題して、神戸を舞台とした、いろんなミステリーを紹介している。神戸は実にミステリーの似合う街だ。神戸市民はもちろん、神戸市民でない人にもお勧め。探偵小説ファンはもちろん、そうでない人にもお勧め。現にSFファンの小生(雫石)が読んでも面白かったのだから。 
 
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