人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

現田茂夫 ✕ 森谷真理 ✕ 日本フィルでR.シュトラウス「4つの最後の歌」、バッハ「G線上のアリア」、ブラームス「交響曲第1番」を聴く~フェスタサマーミューザ参加公演

2022年08月11日 07時07分47秒 | 日記

11日(木・祝)。わが家に来てから今日で2769日目を迎え、米首都ワシントンの連邦控訴裁(高裁)は9日、トランプ前大統領の納税記録をめぐり議会への開示を支持する判決を下した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     トランプは監査中として開示を拒否していたが いつまで監査やってんだという話!

 

         

 

昨日、夕食に「赤尾鯛の粕漬け焼き」「生野菜と小海老とアボカドのサラダ」「冷奴」「白舞茸の味噌汁」を作り、「タコとマグロの刺身」と一緒にいただきました 赤尾鯛は柔らかくてとても美味しかったです

 

     

 

         

 

昨日、ミューザ川崎で「フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2022」参加公演「日本フィル 入門者も本格派も歓迎のドイツ音楽プロ」を聴きました    プログラムは①J.S.バッハ「G線上のアリア」、②リヒャルト・シュトラウス「4つの最後の歌」、③ブラームス「交響曲第1番 ハ短調 作品68」です 演奏は②のソプラノ独唱=森谷真理、指揮=現田茂夫です

 

     

 

オケは14型で、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという並び。コンマスは田野倉雅秋です

1曲目はJ.S.バッハ「G線上のアリア」です この曲はヨハン・セバスティアン・バッハ(1685ー1750)が1729年頃に作曲した「管弦楽組曲 第3番 BWV.1068」の第2楽章「エア」をヴァイオリニストのA.ヴィルヘルミが編曲し、独奏部分がG線だけで演奏できるようにした作品です

この曲は、バーバーのアダージョとともに、誰かを追悼する音楽として演奏される機会が多いのですが、この日の公演は、現田氏がプレトークでバッハ、ベートーヴェン、ブラームスの「ドイツ3大B」の話をしていたので、その線に沿って選曲したものと思われます 2曲目がベートーヴェンなら「ドイツ3大B」プログラムになっていました

現田氏の指揮で演奏に入ります 聴きながら、弦楽だけの演奏だからこそこの曲の純粋な良さが伝わってくるのかも知れないと思いました

2曲目はR.シュトラウス「4つの最後の歌」です この曲はリヒャルト・シュトラウス(1864ー1949)が1948年=84歳の最晩年の年に作曲されました 第1曲「春」、第2曲「9月」、第3曲「眠りにつくとき」、第4曲「夕映えの中で」から成ります 作曲の順番はアイヒェンドルフの詩による「夕映えの中で」が最初に完成し、ヘルマン・ヘッセの詩による残り3曲が後から作曲されました

ソプラノ独唱の森谷真理は武蔵野音楽大学を卒業、同大学院を首席で修了後、ニューヨークのマスネ音楽院を修了    リンツ州立歌劇場専属歌手を務めたのをはじめ、ウィーン・フォルクスオーパー、ライプツィヒ・オペラなどで活躍、現在 国内外の歌劇場で歌っています

オケは12型に縮小し、現田氏の指揮で演奏に入ります     森谷は息の長い旋律を芯のあるソプラノで朗々と歌い上げ、リヒャルト・シュトラウスの晩年の境地を見事に表現しました   「9月」ではホルン独奏、「眠りにつくとき」ではヴァイオリン独奏、「夕映えの中で」ではフルートとピッコロの独奏が森谷の熱唱に華を添えました

ところで、現田氏はプレトークで「よく、歌詞が聴き取れないという方がいらっしゃいますが、聴き取る必要はありません 作曲家は詩からインスピレーションを受けて、それを音符にして音楽として表現しているのですから、その音楽を楽しめばよいのです」と語っていましたが、全くその通りだと思います 私は事前に配布された歌詞対訳を読んでから本番を聴きますが、歌を聴いている間は対訳を見ません。耳だけで音楽を楽しみます

 

     

 

プログラム後半はブラームス「交響曲第1番 ハ短調 作品68」です この曲はヨハネス・ブラームス(1833ー1897)が1855~62年、68年、74~76年にかけて作曲(構想から20年以上)、1876年にカールスルーエで初演されました 第1楽章「ウン・ポーコ・ソステヌート ~ アレグロ」、第2楽章「アンダンテ・ソステヌート」、第3楽章「ウン・ポーコ・アレグレット・エ・グラツィオーソ」、第4楽章「アダージョ ~ ピウ・アンダンテ ~ アレグロ・ノン・トロッポ・マ・コン・ブリオ ~ ピウ・アレグロ」の4楽章から成ります

オケは再び14型に拡大します ここで初めて気が付いたのですが、オーボエに新日本フィルの特任首席・古部賢一氏が客演しています

現田氏の指揮で第1楽章がティンパニの連打で開始されます ゆったりと落ち着いたテンポで音楽が進みますが、決して弛緩することがありません 流れが自然で好感が持てます 第2楽章では古部のオーボエをはじめ、クラリネット、フルートが冴えた演奏を繰り広げます 終盤におけるコンマスのヴァイオリン・ソロが美しく響きました 第3楽章では低弦の重厚感が迫ってきました 第4楽章では、ブラームスが生涯想いを寄せたクララ・シューマンの誕生日に歌詞をつけて贈ったという旋律をホルンが雄大に演奏、次いで独奏フルートが同じ旋律を青空に突き抜けるかのように爽快に演奏しました そして、ベートーヴェンの「第九」の歓喜のテーマに似ている有名な旋律を、弦楽アンサンブルが気負うことなく自然に演奏しました 現田氏は終始テンポを維持し堂々たる演奏を展開、指揮者・現田氏よりも作曲者ブラームスが前面に出た本来あるべき演奏に、満場の拍手が送られました

現田 ✕ 日本フィルはアンコールにブラームス「ハンガリー舞曲第4番 嬰へ短調」を、一転して強弱・緩急自在、外連味たっぷりに演奏、再び満場の拍手に包まれました

7月23日に始まった「フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2022」も、本日の原田慶太楼指揮 東京交響楽団 による「フィナーレコンサート」で終了します    ということで、今日もミューザ川崎です

 

     

     

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「音大崩壊」~ 朝日新聞 書評欄から / カンテミール・バラーゴフ監督「戦争と女の顔」を観る ~ 原案は「戦争は女の顔をしていない」:新宿武蔵野館 / オリビア・ニュートン・ジョン死す

2022年08月10日 07時07分56秒 | 日記

10日(水)。6日付の朝日朝刊「書評欄」で、大内孝夫著「音大崩壊 音楽教育を救う たった2つのアプローチ」(ヤマハミュージック  エンタテインメント  ホールディングス)が取り上げられていました     一橋大学教授・労働経済学の神林龍氏による書評の概要は以下の通りです

「銀行出身のコンサルタントが音楽大学の現状を分析し、対応策を提案したビジネス書である     少子化のあおりを受けて大学進学者は毎年63万人程度で頭打ちだが、女子の数は増えている ところが、音大への女子進学者は減少の一途を辿り、名門といわれる首都圏私大でも定員割れを起こしている 著者は、所得の減少や女性の就業率の上昇によって、高価で、余暇と補完的だった音楽技能の相対的価値が低下したことが要因と示唆しているが、この説明は、スポーツや美術など諸芸にも当てはまる 音楽だけが苦境に立たされる理由の一端は、筆者によれば、現在の音大が、旧態依然とした古典楽器中心の、音楽専門職の育成に特化していることにある 本書が紹介する対応策は、新しい領域や複合的なコースの開拓などが中心だ 結局、音楽教育の本来の役割は社会の礎たる教養の涵養にあるという考え方こそが、音大再興の鍵なのである

私が思うに、女子を中心とする音大進学者の減少の一番の要因は、高い授業料を払って学んで卒業しても、学んだ知識を生かせる就職先がほとんどないということではないか、と思います そこで著者は、社会の多様なニーズに応えられるように「新しい領域や複合的なコースの開拓」を提言しているのだと思います しかし、音大側がその方向に舵を切ったとしても、卒業後にプロの演奏家になったり、希望する職業に就くには才能と努力に加えてコネとチャンスが必要かもしれません 音大を含めた芸術系大学はどこに向かっていくのでしょうか

いうことで、わが家に来てから今日で2768日目を迎え、トランプ前米大統領の所有する南部フロリダ州のマールアラーゴがFBIの家宅捜査を受けたことに関し、トランプ氏は8日、「FBI捜査官によって包囲を受けて急襲され、占領されている。こんなことは、これまで(歴代の)米大統領にはなかった」と訴えたが、FBI元幹部はCNNで「捜査令状の取得には何らかの連邦法に違反していると疑うに足る証拠が必要だ」と指摘した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     国立公文書館から機密文書を勝手に持ち出すなんて 大統領がやることじゃないだろ

 

         

 

昨日、夕食に「鶏の唐揚げ」を作りました 本来は隔週金曜日のローテで作っていますが、今週はコンサートの関係で繰り”揚げ”ました ビールはもちろんサッポロCLASSICです

 

     

 

         

 

新聞各紙によると、英国生まれ豪州育ち、「そよ風の誘惑」などのヒット曲で知られるオリビア・ニュートン・ジョンさんが8日朝、米カリフォルニア州で亡くなりました(享年73歳)。長らく乳がんと闘っていたとのことです

オリビア・ニュートン・ジョンといえば忘れられない思い出があります    大学の新聞学科を卒業して新聞関係団体の国際部に採用されて3年目のことでした 当時、日本とアメリカの新聞界で、お互いの国のコミュニケーション・ギャップを解消することを目的に「日米記者交換計画」というプロジェクトがあり、その年に約10名の米国記者団が来日し、私がその計画を担当することになりました 東京都内でセッションを開いた後、政府外郭団体の旅行社の担当者とともに記者団一行に同行して広島で原爆記念館を見学したり、大阪で大相撲を見学して高見山にインタビューしたり、司馬遼太郎さんの話を聞いたりと、観光を兼ねた取材活動をして東京に戻りました 最後の日に、銀座のレストランで彼らの歓送会を開いたのですが、その時、視察団の代表から「この2週間、つきっきりでお世話いただきありがとう」と、オリビア・ニュートン・ジョンの「Let  me be there」とヘレン・レディの「I  Am Woman」のLPレコードをプレゼントしてくれたのです 夜もろくに眠れない緊張続きのツアーだっただけに、その時は感激して涙が出そうでした それ以来、オリビア・ニュートン・ジョンという名前に接するたびに視察団一行の顔を思い浮かべました あらためて、オリビア・ニュートン・ジョンさんのご冥福をお祈りいたします

 

     

     

 

         

 

昨日、新宿武蔵野館でカンテミール・バラーゴフ監督による2019年製作ロシア映画「戦争と女の顔」(137分)を観ました

第二次世界大戦に女性兵士として従軍したイーヤ(ビクトリア・ミロ̪シ二チェンコ)は、終戦直後の1945年に荒廃したレニングラードの傷病軍人が収容された病院で、PTSDを抱えながら看護師として働いていた しかし、ある日、PTSDによる発作のせいで面倒をみていた子どもパーシュカを窒息死させてしまう そこにパーシュカの実の母親で戦友でもあるマーシャ(バシリサ・ペレリギナ)が戦地から帰還してくる。彼女もまた、イーヤと同じように心に大きな傷を抱えていた パーシュカの死を告白するイーヤをマーシャは責めないが、爆弾の破片を腹に受け、もはや子どもが産めない身体のマーシャはどうしても子どもが欲しかった そこで自分に代わってイーヤに子どもを産んでほしいと考え、病院のニコライ・イワノヴィッチ院長(アンドレイ・バイコフ)を巻き込んである計画を立てる

 

     

 

本作はベラルーシのノーベル賞作家スベトラーナ・アレクシエービッチによるノンフィクション「戦争は女の顔をしていない」を原案に、第二次世界大戦後のソ連(現ロシア)で生きる2人の女性の運命を描いた意欲作です 原作は独ソ戦に参加した女性兵士の証言を集めた本ですが、ソ連軍は女性を組織的に戦争に参戦させた点で、世界史にも稀な例となっています そのため、戦地では様々な出来事があったことは容易に想像が付きます

本作では戦場における惨劇は語られることがなく、2人の女性が精神的に受けたPTSDに焦点が当てられます イーヤは臆病でいつもびくびくしながら生きているし、マーシャはイーヤを許しながらも残酷な態度を取って自己嫌悪に陥ったりします 攻撃的なマーシャと従順なイーヤの関係性が、子どもの死によって一層強くなったと言えるかもしれません それでも何とか和解し、かすかな希望を見い出そうとするラストシーンに観衆は救われます

監督のカンテミール・バラーゴフは30歳そこそこの若いロシア人ですが、ロシアのウクライナ侵攻の直前に本作を撮りました この映画の特徴は、戦争の場面は一切映らないのに、戦争の残虐性を浮かび上がらせているところだと思います

本日、toraブログのトータル訪問者数が220万 I P を超えました( 2,200,297 IP。トータル閲覧数は7,155,914 PV)。これもひとえに普段からご覧くださっている読者の皆さまのお陰と感謝申し上げます これからも毎日休まず根性で書き続けて参りますので、モコタロともどもよろしくお願いいたします

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「タコ8」「べト7」問題 / エマニュエル・トッド「第三次世界大戦はもう始まっている」、曽野綾子「百歳までにしたいこと」、佐藤典雅「カルト脱出記」、中山七里「カインの傲慢」他を買う

2022年08月09日 07時11分05秒 | 日記

9日(火)。最近、クラシック関係のツイッターを見ていてよくお目にかかる言葉に「タコ8」「ベト7」「マラ3」「メンコン」というのがあります 普段からクラシック音楽をお聴きになっている方なら、ショスタコーヴィチ「交響曲第8番」、ベートーヴェン「交響曲第7番」、マーラー「交響曲第3番」、メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲」であることはすぐに分かるはずです これは、当初 限られた文字数の中で多くの情報を伝えるための技術として普及した「省略形」だと思われます ところが、最近では作曲者名や作品名をフルに書いても十分にスペースの余裕があるのに、わざわざ「タコ8」「べト7」と書いたりしているケースが多いように思います 「タコ8」なんてタコの八つぁんじゃあるめーし🐙 当ブログの読者の方ならご存じだと思いますが、私はこれまで一度も「タコ8」「ベト7」「マラ3」という省略形で書いたことはありません 「メンコン」の場合はあまりにも有名なので書くことはありますが、あくまでも「 」付です

私がこれらの省略形を使わないのは、作曲者や作品に対して敬意を表するためです あくまでも個人の感想ですが、ツイッターで「タコ8」とか「ベト7」という単語を見ると、いかにもクラシック通であることを誇示しているようで、「それってカッコいいんですか」とツッコミを入れたくなります まあ、私が時代遅れの頑固者というだけの話かもしれませんが

ということで、わが家に来てから今日で2767日目を迎え、松野博一官房長官は8日、岸田総理の意向を受け、閣議後の閣僚懇談会で内閣の閣僚に対し、「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係を点検し、厳正に見直しを行うよう指示した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     ここで明確にしないと 安倍元総理の死が無駄になるし 内閣支持率が低下するからね

 

         

 

昨日、夕食に「豚肉のスタミナ焼き鳥風」「生野菜とアボカドのサラダ」「冷奴」「もやしの味噌汁」を作りました 「豚肉~」は紫蘇を巻いてありますが、夏はさっぱりして美味しいです

 

     

 

         

 

手元の本が残り1冊となったので、猛暑の中 いつものようにジュンク堂書店池袋本店に行って10冊買ってきました

1冊目はエマニュエル・トッド著「第三次世界大戦はもう始まっている」(文春新書)です 本書はロシアのウクライナ侵略を受けて、この戦争の本質は何かを模索した本のようです

 

     

 

2冊目は曽野綾子著「百歳までにしたいこと」(文春文庫)です 「老いを生きる極意の数々」が語られているらしいです

 

     

 

3冊目は佐藤典雅著「カルト脱出記 エホバの証人元信者が語る25年間のすべて」(河出文庫)です 本書は親族全員がカルトの信者の中で育った著者の、洗脳からの脱出記です 霊感商法の旧統一教会がクローズアップされている現在だからこそ読むべき本です

 

     

 

4冊目はフジコ・ヘミング著「『幸福』と『不幸』は半分ずつ。」(PHP文庫)です 本書は高齢になってプロデビューした人気ピアニストのエッセイ集です

 

     

 

5冊目は原田ひ香著「ランチ酒」(祥伝社文庫)です 私は先に「ランチ酒 おかわり日和」を読みましたが、順番からいうと、これを先に読むべきでした

 

     

 

6冊目は中山七里著「カインの傲慢」(角川文庫)です 当toraブログの読者の方にはお馴染みの著者による文庫本最新作の1冊です。同氏の警察医療ミステリーシリーズ第5弾です

 

     

 

7冊目も中山七里で「帝都地下迷宮」(PHP文庫)です これも文庫最新作の1冊です。本書は東京の地下鉄を舞台に縦横に物語が展開するミステリーらしいです

 

     

 

8冊目は伊坂幸太郎著「クジラアタマの王様」(新潮文庫)です 伊坂幸太郎の作品も文庫化されるたびにご紹介してきましたが、本作は著者による文庫本最新作です

 

     

 

9冊目は道尾秀介著「いけない」(文春文庫)です どうやら周到な仕掛けが施されている作品のようです

 

     

 

最後の10冊目は西條奈加著「隠居すごろく」(角川文庫)です 本書は新聞の書評を読んで面白そうだと思いました 最初、西加奈子と勘違いしてしまいました

 

     

 

いずれも読み終わり次第、当ブログでご紹介してまいります

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ダン・エッティンガー ✕ 服部百音 ✕ 東京フィルでメンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲」、リムスキー=コルサコフ「シェエラザード」他を聴く ~ フェスタサマーミューザ

2022年08月08日 07時11分22秒 | 日記

8日(月)。わが家に来てから今日で2766日目を迎え、山口壮環境相は8月5日の記者会見で、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の関連イベントに祝電を送ったことがあることを明らかにしたうえで、「こういうのってどこでもそうだと思いますけど、いろんなとこから頼まれたら全部出しますけどね。だからまったく(問題)意識はありません」と語ったことに対し批判が相次いでいる  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     「政界が旧・統一教会と手を切る会」の設立総会を開いたら 祝電がもらえるようだ

 

         

 

昨日、ミューザ川崎で「フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2022」参加公演「東京フィル 名コンビとともにアラビアンナイトの世界へ!」を聴きました     プログラムは①ロッシーニ:歌劇「セヴィリアの理髪師」序曲、②メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64」、③リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」です 演奏は②のヴァイオリン独奏=服部百音、指揮=ダン・エッティンガーです

ダン・エッティンガーは2010年4月から東京フィル常任指揮者、2015年から同桂冠指揮者に就任しています また、現在シュトウットガルト・フィル音楽監督、イスラエル・オペラ及びイスラエル交響楽団音楽監督を務めています

 

     

 

会場はほぼ満席 男性客中心の服部百音効果でしょうか。休憩時間に分かるでしょう

オケは14型で、左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴォイラ、第2ヴァイオリンという対抗配置。コンマスは三浦章宏です

1曲目はロッシーニ:歌劇「セヴィリアの理髪師」序曲です この曲はジョアッキーノ・ロッシーニ(1792ー1868)が1816年にローマで初演したオペラの序曲です 

どおくまんプロの「嗚呼、花の応援団」の主人公・青田赤道が着ていた襟の高い学ランのような衣装を身に着けたイケメン、ダン・エッティンガーの指揮で演奏に入ります オーボエの加瀬孝宏、クラリネットのアレッサンドロ・ベヴェラリの演奏が素晴らしい 今にもオペラが始まるようなワクワクドキドキする、オペラ指揮者エッティンガーの面目躍如といった演奏でした

2曲目はメンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64」です この曲はフェリックス・メンデルスゾーン(1809ー1847)が1844年に自身が音楽監督を務めるライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のコンサートマスター、フェルディナント・ダーフィトのために作曲されました 第1楽章「アレグロ・モルト・アパッショナート」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「アレグレット・ノン・トロッポ ~ アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ」の3楽章から成ります

ヴァイオリン独奏の服部百音は1999年9月生まれの22歳 2009年にリビンスキ・ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクールで史上最年少第1位受賞をはじめとして、数々の国際ヴァイオリンコンクールでグランプリを受賞しています 現在、桐朋学園大学音楽学部大学院に在学中です

オケは12型に縮小します。服部百音がグリーンの鮮やかな衣装で登場、エッティンガーの指揮で演奏に入ります 服部百音の演奏は流麗そのものですが、芯があり 全くブレません エッティンガーがプレトークで語ったところによると、今年51歳を迎えた彼がこの曲を演奏するのは今回が初めてだそうです 彼の指揮はドラマティックで、まるでオペラ歌手に伴奏をつけているように感じます 服部との相性は抜群だと思いました

正直に告白すると、私はメンデルスゾーンよりもチャイコフスキーのコンチェルトの方が彼女に向いているように思うので、チャイコフスキーを演奏してほしかったのです でもそれは ないものねだり というものですね

メンデルスゾーンで思い出しましたが、この日の日経朝刊「My Story」でカレーハウスCoCo壱番屋創業者の宗次徳二さんが取り上げられていました 宗次さんと言えば、クラシックファンにはお馴染みの人で、NPO法人イエロー・エンジェルを設立し、若い演奏家にストラディバリウスなどの楽器を無償で貸し出したり、名古屋にクラシック音楽専用ホール「宗次ホール」を作ったり、調布市の桐朋学園大学に新たな「宗次ホール」を作ったりしているフィランソロピスト(寄付者、社会奉仕をする人)です インタビュー記事によると、高校時代に同級生からテープレコーダーを1回千円✕5回の分割払いで入手し、初めてテレビの音楽番組を録音してみたが、その時たまたま流れてきたのがN響の演奏するメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲(メンコン)だった 冒頭の旋律から引き込まれ、感動で胸がいっぱいになったーと語っています 「メンコン」との出会いがなければ今のクラシック音楽どっぷりの宗次さんはなかったわけです

閑話休題。

エッティンガー ✕ 東京フィルをバックに服部百音は、アンコールにパガニーニ「無窮動」を息つく暇も与えず鮮やかに弾き切り、聴衆を唖然とさせました そして、いつものように、身体を45度に折って前に一礼、後ろを向いて一礼、再び前を向いて一礼しステージ袖に引き上げていきました 彼女ほどステージマナーの良い演奏家はいないでしょう

休憩時間には男子トイレに長蛇の列が出来ていました。服部百音効果が証明されました

 

     

 

プログラム後半はリムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」です この曲はニコライ・リムスキー=コルサコフ(1844ー1908)が「アラビアン・ナイト(千一夜物語)」を題材に1888年に作曲、同年ペテルブルクで初演されました 第1楽章「海とシンドバッドの船」、第2楽章「カレンダー王子の物語」、第3楽章「王子と王女」、第4楽章「バグダッドの祭り、海、青銅の騎士の立つ岩での難破、終曲」の4楽章から成ります

オケは再び14型の拡大します。舞台下手にはハープがスタンバイします

エッティンガーの指揮で演奏に入ります この曲では独奏ヴァイオリンが可憐なシェエラザードのテーマを奏で、全曲を通して何度か登場しますが、三浦コンマスはその都度違う音色で演奏し、その弾き分けが見事でした エッティンガーの指揮はこの曲でもドラマティックで、物語が目の前で展開しているような気もちになりました 加瀬孝宏のオーボエをはじめ、フルート、ファゴットの演奏が冴えています 三浦コンマスのヴァイオリンに寄り添うハープの演奏が素晴らしかった 第3楽章冒頭におけるヴァイオリンセクションのソフトで優しい演奏が印象的でした 第4楽章ではオーケストラ総力あげてのスケールの大きな演奏を展開し、最後は女性不信のシャフリアール王の魂を浄化するように曲を閉じました

カーテンコールが繰り返されますが、まさかのアンコールがありました ロッシーニの歌劇「ウィリアム・テル」序曲から「スイス軍の行進」が軽快かつ勇ましく演奏され、会場の温度を2度上昇させました ロッシーニの前菜で始まり、ロッシーニのデザートで終わる、壇シェフの粋な計らいでした

チョン・ミョンフン(名誉音楽監督)、アンドレアス・バッティストーニ(首席指揮者)、ダン・エッティンガー(桂冠指揮者)、ミハイル・プレトニョフ(特別客演指揮者)・・・日本最大の楽団員数(160名)を誇る東京フィルは素晴らしい指揮者を擁しているなぁ、とあらためて思いました

 

     

     

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ブレイディみかこ著「ジンセイハ、オンガクデアル」を読む ~ 英国における「底辺託児所」の問題児たちとの交流を通じて学んだこと

2022年08月07日 07時05分20秒 | 日記

7日(日)。昨日午前10時から地元の集会所で、マンションの管理組合の新体制による第1回理事会が開かれたので、理事長として出席しました 管理会社から111ページに及ぶ議案書が配布され、報告に基づいて審議しました われわれの任期は2年間ですが、最大のテーマは2度目の大規模修繕とそれに伴う管理費・修繕積立金の値上げです 次回から具体的に詰めていくことになりますが、責任重大です 部屋番号によるグループ分けに基づく理事会ですが、今回は理事・監事9名中6名の出席でした。欠席者からは委任状が提出されていますが、8年前のローテ時の経験からすると、欠席者の一人は「理事会は出席してもしなくても自由だ」と考えているようです この人、先日の定時総会に欠席の上、議決権行使書で「新役員選出の件」を含めたすべての議案に反対したくらいなので、順番が決まっていても役員にはなりたくないようです こうした「決まったことが守れない、義務意識のない住人」が理事会メンバーにいると、公平の観点から好ましくありません こういう身勝手な人はどこの世界にもいますよね 何か問題が起こった時に理事会を頼ってきても、助けてあげようという気持ちになれません

当事者意識を持ってもらい、出席率を高めるためにはどうしたらよいのか、悩ましいところです 国会議員選挙の投票率を上げるにはどうしたらよいか、という問題と似ていますね

ということで、わが家に来てから今日で2765日目を迎え、米南部テキサス州の裁判所の陪審は5日、児童ら26人が死亡した銃乱射事件を「やらせ」と主張して遺族らの名誉を傷つけたなどとして、トランプ前大統領と親しく陰謀論を掲げる政治評論家アレックス・ジョーンズ氏(48)に総額約4930万ドル(約66億5千万円)の損害賠償を命じる決定を下したと米メディアが伝えた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     トランプのお友達はロクな奴がいない  21年1月の米議事堂襲撃事件もヤラセか

 

         

 

ブレイディみかこ著「ジンセイハ、オンガクデアル」(ちくま文庫)を読み終わりました ブレイディみかこさんは1965年福岡市生まれ。ライター、コラムニスト。音楽好きが高じて渡英、1996年から英国ブライトン在住。著書に当ブログでもご紹介した「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」「花の命はノー・フューチャー」「ヨーロッパ・コーリング・リターンズ」など多数

 

     

 

本書は2013年11月にPヴァインから刊行された「アナキズム・イン・ザ・UK ー 壊れた英国とパンク保育士奮闘記」の後半の章を中心に収録、大幅に加筆したものです 第1章「『底辺託児所』シリーズ誕生」と第2章「映画評・書評・アルバム評」から構成されています

第1章は、貧困層の子どもたちが集まるいわゆる「底辺託児所」保育士時代のエッセイ集です 日本では考えられないような暴力的で破天荒な子供たちが登場しますが、その背景には英国の貧窮、移民差別、DVなどの問題が存在していることが分かります

4歳の狂暴児ジェイクは赤ん坊の足を踏んでは泣かせ、「なんでそんなことをするの?」と尋ねると「俺のすることに理由はない。理由のないことをするのは楽しい」などとアナキーなことを答え、いきなり私の髪をひっつかんで10本ほど引き抜いていった 5歳児のレオは椅子の背中に紐をくくりつけて赤ん坊の人形を逆さに吊るし、それをめがけて玩具のナイフを連投しながら「醜い禿頭の小人は永遠に地獄で殺され続けるのだ」などと呟きつつ、完全にイッてる目つきでへらへら笑っている 1歳児のデイジーは「Thank you と言ってごらん」「FUCK」「スナックの前は手を洗おう」「FUCK」「みんなとお絵描きしょっか」「FUCK」「オムツからうんこはみ出てるよ」「FUCK」と暗い目をして世のすべてのものを否定する

こうした会話を通じて、みかこさんは次のように分析します

「子どもの前には無限の希望と可能性が広がっている。なんて一般論は大ウソである 英国では生まれた時から生きてゆく階級というものが決まっている。そこから這い上がっていけるのは能力と意志力に恵まれた一部のアンビシャスな子どもたちだけで、大半は有限の希望と閉ざされた可能性の中で成長し、親と同じ階級の大人になっていくのだ と言う殺伐とした現実がここにいると嫌と言うほどわかる

問題児たちのあまりの過激な行動に、みかこさんは「脳がぶち割れて絶命するのではないかと思ったことも1度や2度ではなかった」として、託児所の責任者に「こういう仕事はわたしには向いていないと思いますので、辞めます。そもそも子どもなんて大嫌いですし」と言うと、「あなたのような人は、うちのような託児所には向いているわ だって、あなたは子どもというものに対して全然夢を抱いていないんですもの 騙されたと思って、もう少しやってごらんなさい」と説得され、ずるずると続けることになります

そうした中、他の子どもに残酷な仕打ちをしていた2歳の野獣児アリスとの別れがやってきます

リボンを渡すと、「NO!」と言って投げ捨ててしまう。「わたしは醜い」「そんなことないよ。アリスはプリティだ」「プリティな服を着ても、わたしは醜い」「そんなことないよ。どうしてそう思うの?」「・・・そう言われたから」「誰に?」と尋ねるとアリスはきゅっと口をつぐむ そして、アリスはレースの飾りのカチューシャを差し出して「これを着けて、鏡を見てごらん」と言う。いつもアリスに言っていた台詞そのままだ わたしは言われるままに鏡の前に座って自分の顔を見た。ひらひらのレースのカチューシャを着けた44歳のばばあの滑稽な顔がそこにあった 「You are pretty.You are very pretty」。アリスはわたしが彼女にそうしていたように、わたしの背中をさすりながら言う 「ありがとう、アリス」。アリスは大きく見開いた目で、鏡の中のわたしをまっすぐに見て言った。「I’ll miss you」。ありきたりの言葉が、わたしのこころを蹴破った

みかこさんは「文庫版あとがき」の中で、「そうした時期に書かれたものをいま読みかえすと、はっきり言って玉石混交です」「この本には、わたし自身が戻ってきては読み返すだろう文章が含まれています。その度にわたしは嫉妬し、くそったれ、いつでも辞めてやる。ノー・フューチャー。と思うことになるのでしょう その覚悟が『玉』を書くための条件だったと思い出し、また振り出しに戻るのです」と書いていますが、その『玉』の一つが上記のアリスとの別れの文章だと思います

第2章には映画評・書評・アルバム評が収録されていますが、内容が英国中心、ロック中心で、残念ながら興味を抱く範囲がみかこさんと異なり十分理解できませんでした

ただ、本書は第1章だけでも読む価値のあるエッセイ集だと思います お薦めします

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尾高忠明 ✕ イリヤ・ラシュコフスキー ✕ 大阪フィルでラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」、エルガー「交響曲第1番」を聴く / 反田恭平の「リーダー論」その2 ~ 尊敬する指揮者は?

2022年08月06日 07時12分20秒 | 日記

6日(土)。4日付日経夕刊「ニュースぷらす」面にピアニスト反田恭平氏の「私のリーダー論㊦」が掲載されていました(㊤は7月29日付toraブログで紹介)。反田氏はピアニストであると同時に、ジャパン・ナショナル・オーケストラ(JNO)の経営者であり、指揮者でもあります 指揮者の役割について問われ、反田氏は次のように答えています

「経営面で言えば、スポンサーを持ってくる際に言葉で説得する必要があります オーケストラを食わせるため、一番の仕事だと思います。欧米では指揮者が楽団のポストに就く上で、重要な点として『どれだけスポンサーを持ってこられますか』と聞かれるそうです もちろん、高いレベルで指揮が振れるというのは大前提です。JNOでは、僕自身がスポンサーを見つけています

反田氏は現在、世界的指揮者のキリル・ぺトレンコさんらも指導した湯浅勇治氏に指揮を師事していますが、「尊敬する指揮者は?」という問いに次のように答えています

「アンドレア・バッティストーニはエモーショナルでありながら音楽の分析能力や話す力が優れています 韓国のチョン・ミョンフンはオペラを聴き、飛びぬけたものを感じました ロシアのミハイル・プレトニョフらピアニストとしても活躍する指揮者も尊敬しています 昔だとカラヤン、バーンスタインは好きですし、ムラヴィンスキーには音楽への真摯な姿勢を感じます

これを読んで、クラシックファンなら誰もがお気付きだと思いますが、バッティストーニも、チョン・ミョンフンも、プレトニョフも、東京フィルの定期演奏会の常連指揮者として知られているアーティストです ちょっと意外でしたが、ひょっとして反田氏は東京フィルの定期会員なのではないか、と思いました

ということで、わが家に来てから今日で2764日目を迎え、旧統一教会の名称変更を巡って末松文科相は、憲法が保障する信教の自由に配慮し、申請書に不備がなければ受理する制度だと説明した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     不当に高い壺や経典を信者に売りつけるのは 信教の自由じゃなく アコギな商売だ

 

         

 

昨日、夕食に「肉じゃが」「生野菜とアボカドのサラダ」「冷奴」「大根の味噌汁」を作りました 肉じゃがは前回、醤油を入れすぎたので今回は調整し、美味しく出来ました

 

     

 

         

 

昨夕、ミューザ川崎で「フェスタサマーミューザKAWASAKI2022」参加公演「大阪フィルハーモニー交響楽団 西に大フィルあり!マエストロの十八番」を聴きました プログラムは①ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18」、②エルガー「交響曲第1番 変イ長調」です 演奏は①のピアノ独奏=イリヤ・ラシュコフスキー、指揮=尾高忠明です

開演前に尾高氏のプレトークがありましたが、予定より10分遅れのスタートとなりました 7月29日の読響公演の時に尾高氏と同期の井上道義氏が「出来るだけ多くのお客さんに聞いてもらいたかった」として10分遅らせていたのに倣って遅らせたわけではないと思いますが、この2人の動機は同期だけに怪しげです

尾高氏は、エルガーの交響曲は特に緩徐楽章がブルックナーに似ていることや、大阪人の温かさや、英国のプロムスをはじめ世界の夏のフェスティバルなどについて流暢に語りましたが、次のようなエピソードを披露しました

「ウィーン国立音楽大学に留学していた若い頃、ザルツブルク音楽祭でカラヤンの指揮するコンサートがあり、枚数限定の安い席の当日券をとるために並んでいたら、高級リムジンから降りてきた背の高い紳士に声をかけられ、「自分は学生で、将来指揮者になりたいと思っています」と言うと、指定席券を譲ってくれたということです 当時の金額で5万円くらいの席だったそうですが、その紳士はわざわざホールまで来て、誰か代わりに聴ける人を選んでチケットを渡した この経験から、『自分が行けなくなったコンサートの席を空席のままにしてはいけない。これが『文化』であることを学んだ

実は私にも同じような経験があります もう40年近く前のことです。東京文化会館の当日券売り場に並んでいると、30代くらいの男性に「このコンサートを聴きに来たのですか?」と訊かれたので、「そうです」と答えると、「いただいた招待券ですが、自分は聴けないので差し上げます」と、招待ハガキをくださいました ハガキの宛名を見ると高名な日本人作曲家の名前が書かれていました 多分、彼は作曲家の弟子か何かで、「代わりに聴いておいで」とか言われたものの、都合がつかず困っていたのだと思います ハガキさえ主催者側に回収されれば作曲家本人かどうかは別として、誰かが聴いたことになるので、招待ハガキが無駄にならずに済んだことになります 当ブログの読者 ままはは さんによると、N響定期の古参会員の中には毎年、会員継続をしてお金を払いながら、まったくコンサートを聴きに来ない人が少なからずいるようです     もったいないことです。代わりの誰かに席を譲れる方法を考えた方が良いと思います

 

     

 

さて本番です 会場は9割方入っているように思われます

オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという並び。コンマスは須山暢大です 彼は「エピス・クァルテット」のメンバーです。チェロのトップは「エルディーディ弦楽四重奏団」のメンバー花崎薫です

1曲目はラフマニノフ「ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18」です この曲はセルゲイ・ラフマニノフ(1873ー1943)が1900年から01年にかけて作曲、1901年11月9日にモスクワで、ラフマニノフのピアノ独奏、アレクサンドル・ジロティ指揮モスクワ・フィルにより初演されました 第1楽章「モデラート」、第2楽章「アダージョ・ソステヌート」、第3楽章「アレグロ・スケルツァンド」の3楽章から成ります

ピアノ独奏のイリヤ・ラシュコフスキーはロシア出身で、2001年のロン=ティボー国際音楽コンクール第2位、第8回浜松国際ピアノコンクールで優勝など、数々の入賞歴があります 私は十数年前に浜離宮朝日ホールでショパンを中心とした彼のリサイタルを聴いたことがありますが、それ以来です

第1楽章がラシュコフスキーのソロで開始されます。彼の演奏は「真剣勝負」という言葉が似あう真摯なもので、打鍵の強さが際立っています 第2楽章では一転、ロマンティシズムの極致をいく演奏で、フルート、クラリネットなどの木管群が華を添えました 第3楽章はラシュコフスキーのパッションを感じる演奏で、彼の気迫がオーケストラに乗り移っているかのごとく熱い演奏が繰り広げられました

満場の拍手にラシュコフスキーは、アンコールにスクリャービン「エチュード作品8-12”悲愴”」を情熱的に演奏、聴衆の心をヒートアップしました 私はこの演奏を聴きながら、Kiriokaさんが吉祥寺のロンロン・コンサートで弾いた鮮やかな演奏を思い出していました

 

     

 

プログラム後半はエルガー「交響曲第1番 変イ長調 作品55」です この曲はエドワルト・エルガー(1857ー1934)が1907年から翌08年にかけて作曲、1908年にマンチェスターで12月3日にハンス・リヒター指揮ハレ管弦楽団により初演されました 第1楽章「アンダンテ、ノビルメンテ・エ・センプリーチェ ~ アレグロ」、第2楽章「アレグロ・モルト」、第3楽章「アダージョ」、第4楽章「レント ~ アレグロ」の4楽章から成ります

CDを持っていないし、この曲を聴くのは多分初めてです 尾高氏の得意とする作品だということは分かりますが、初めて聴く曲で1時間弱の演奏はかなりきついです 予習の時間が欲しかったところです ただ、聴いていて面白かったのは第2楽章です。冒頭の音楽はまるでアニメのテーマソングみたいで親しみを感じました また、第3楽章のアダージョは純音楽として素晴らしいと思いました

満場の拍手に尾高 ✕ 大阪フィルはアンコールに「六甲おろし」を颯爽と、演奏するわけがありません あなた、何を考えていますか いくら開幕9連敗の後に快進撃を続け現在セリーグ2位まで登り詰めた阪神タイガースを愛するからといって、アンコールに「六甲おろし」はありません エルガー「威風堂々」第1番を堂々と演奏し、会場をプロムスに変貌させ聴衆を興奮の坩堝に引き入れました

大阪フィルは今年、やっと念願かなって「フェスタサマーミューザ」に参加できたと喜んでいるとのこと 大阪フィルの皆さん、素晴らしい演奏をありがとうございました タイガースとともに快進撃を続けてください

 

     

     

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藤岡幸夫 ✕ リチャード・ストルツマン ✕ 東京シティ・フィルでコープランド「クラリネット協奏曲」、チック・コリア「スペイン」、レスピーギ「ローマの松」他を聴く ~ フェスタサマーミューザ

2022年08月05日 07時17分50秒 | 日記

5日(金)。わが家に来てから今日で2763日目を迎え、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の名称が変更された当時に文部科学大臣だった自民党の下村博文衆院議員は4日、「今となったら責任を感じる」と語った  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     どれだけ霊感商法の犠牲者が出たか知らないはずがないだろ  反省するのが遅すぎ

 

         

 

昨日、夕食に「豚しゃぶ」「生野菜サラダ」「冷奴」「舞茸の味噌汁」を作りました 豚しゃぶにはキャベツが合います

 

     

 

         

 

昨夕、ミューザ川崎で「フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2022」参加公演「東京シティ・フィル ジャズとスペインを巡る音の饗宴 チック・コリア  トリビュート Vol.1」を聴きました プログラムは①コープランド「クラリネット協奏曲」、②チック・コリア「スペイン ~ 六重奏とオーケストラのための」、③リムスキー・コルサコフ「スペイン奇想曲 作品34」、④レスピーギ:交響詩「ローマの松」です 演奏は①のクラリネット独奏=リチャード・ストルツマン、②のジャズ六重奏:ピアノ=宮本貴奈、ベース=井上陽介、ドラムス=高橋信之介、トロンボーン=中川英二郎、サックス=本田雅人、サックス&フルート=小池修、マリンバ独奏=ミカ・ストルツマン、指揮=藤岡幸夫です

 

     

 

オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという並び 中央にはハープとピアノがスタンバイします。管・打楽器はいません コンマスは戸澤哲夫です

1曲目はコープランド「クラリネット協奏曲」です この曲はニューヨーク生まれのアーロン・コープランド(1900ー1990)がジャズ・クラリネット奏者、ベニー・グッドマンの委嘱により1948年に作曲、1950年にグッドマンの独奏、フリッツ・ライナー指揮NBC交響楽団によりニューヨークで初演されました 第1楽章「ゆっくりと表情豊かに ~ カデンツァ、自由に」、第2楽章「速めに」の2楽章から成ります

今年80歳を迎えたストルツマンが矍鑠とした足取りで登場します    元気だなぁと思っていると、指揮台の下手の椅子に座って演奏するようです     第1楽章はハープとピアノに導かれてストルツマンのクラリネットが静かに入ってきますが、弱音の美しさが際立っています    終盤のカデンツァは高音から低音までの吹き分けが見事で、自由自在に演奏を繰り広げていました    第2楽章では軽快なテンポによりノリノリの演奏が展開しました

満場の拍手にカーテンコールが繰り返されますが、ストルツマンは小走りで出てきて指揮台でUターンし、再び舞台袖に引き上げていきました    椅子に座って演奏するほど身体の調子が悪いのかと心配していたのに、元気溌剌オロナミンCです    しかも、もう一度、ランニング・カーテンコールを繰り返しました     私も長い間コンサート通いをしていますが、2度も嬉々としてランニング・カーテンコールをする演奏家を見たのは今回が初めてです。しかも80歳の演奏家で    「ストルツマンはストレスマンかい」と言いたくなりました

2曲目はチック・コリア「スペイン ~ 六重奏とオーケストラのための」です この曲はジャズ・ピアニストで作曲家のチック・コリア(1941ー2021)の名作「スペイン」を元にした作品です 彼は1970年代に「リターン・トゥ・フォーエヴァー」を率いて活動しましたが、そのバンドの第2作アルバム「ライト・アズ・ア・フェザー」の中にチックの作曲した「スペイン」が収録されています ロドリーゴの「アランフェス協奏曲」の第2楽章のテーマを題材として組み立てています 今回は、ジャズ六重奏にマリンバを加えた七重奏とオーケストラが共演する編曲により演奏されます

オケの手前のスペースにジャズ集団が並びます 下手にピアノの宮本、上手にサックス&フルートの小池、サックスの本田、トロンボーンの中川が並び、その後方にベースの井上、ドラムスの高橋が控え、上手奥にマリンバのミカがスタンバイします 全体像としては、指揮者・藤岡氏とオケがステージ奥にスタンバイし、その手前のスペースにジャズバンドが控える形なので、指揮者はジャズバンドを背にして指揮をすることになります プレトークで藤岡氏は「とにかく楽しいセッションですが、どのタイミングでオケが出るのかが難しい曲です どこかおかしいと思ったら、すべて私の責任です 楽しみながらも緊張して演奏したいと思います」と語っていましたが、一番大変なのは藤岡氏です 曲の全体の流れは「オープニング・アンド・イントロダクション」 ~ 「スペイン・テーマ」 ~ 「終結」となります

結論から先に言うと、7重奏のソリストは滅茶苦茶上手いのです 各自がソロを演奏するシーンでは、会場から拍手が起きましたが、「これがジャズだ」というスカッとする演奏です 宮本の抒情的なピアノが素晴らしい ベースの井上とドラムスの高橋は確かな技術の裏付けがある安定した演奏です 破壊力があったのはサックスの本田、フルート&サックスの小池、そしてトロンボーンの中川の演奏です 聴衆の拍手もあり、演奏者はノリノリでした 藤岡幸夫 ✕ 東京シティ・フィルもしっかりと7人をフォローし、対等に張り合っていました

長い人生の中で、私は一時期ジャズに凝ったことがありますが、その時に悟ったのは「ジャズは肉体を解放し、クラシックは精神を解放する」ということでした    彼らの熱い演奏を聴いている間、足で拍子を取り、自然と身体がスウィングしていました    まさに肉体が解放されていました

 

     

 

プログラム後半の1曲目はリムスキー・コルサコフ「スペイン奇想曲 作品34」です この曲はニコライ・リムスキー=コルサコフ(1844ー1908)が作曲、1887年に初演されました

作品は、スペインのアストゥリアス地方の民謡を主体とし、ソロで活躍するパートが多いことが大きな特徴になっています 第1曲「アルボラーダ」、第2曲「変奏曲:夕べの踊り」、第3曲「アルボラーダ」、第4曲「ジターンの情景と歌」、第5曲「アストゥリアス地方のファンダンゴ」から成ります

この曲では、全体を通してクラリネット、コーラングレ、フルート、オーボエなどのソロの演奏が素晴らしい 戸澤コンマスのヴァイオリン・ソロによる演奏も冴えています

最後の曲はレスピーギ:交響詩「ローマの松」です この曲はオットリーノ・レスピーギ(1879ー1936)が1924年に作曲、同年ローマで初演されました 「ローマの噴水」(1916)「ローマの祭」(1924年)とともにローマ三部作と言われ、作曲者のローマに寄せる深い愛着を表現した作品です 第1部「ボルゲーゼ荘の松」、第2部「カタコンベ付近の松」、第3部「ジャ二コロの松」、第4部「アッピア街道の松」の4曲から成ります

第1部「ボルゲーゼ荘の松」では冒頭からイタリアの燦燦と輝く太陽のイメージが広がります 色彩感溢れる演奏が見事です 第2部「カタコンベ付近の松」に入ると一転、コントラバスやチェロによる重低音が共同墓地の不気味な様子を表します 第3部「ジャ二コロの松」ではクラリネットの弱音の美しさが際立っていました 竹山愛のフルート独奏も見事でした 終盤で鳥のさえずりがありますが、プレトークで藤岡氏は、「あまりにも多くの鳥が賑やかに鳴くと、それまでのロマンティックな雰囲気が台無しになるので、控えめに演奏するようにしたい」と語っていましたが、狙い通りの演奏だったと思います 最後の第4部「アッピア街道の松」は、ローマ軍が進軍する街道に生える松並木の情景を描いたものですが、ステージ上のフルオーケストラに、パイプオルガン、その左右にスタンバイした6人のバンダ(別働隊)が加わり、スケールの大きな音楽が色彩感豊かに描かれました プレトークで藤岡氏は、「この曲はクラシック音楽の中で一番派手な作品ではないかと思います」と語っていましたが、冒頭からフィナーレまでテンションが上がりっぱなしの作品ということで言えば、その通りかもしれません

この日の公演は、ジャズありクラシックありのアメリカ、スペイン、イタリアを巡る音楽の旅でしたが、このプログラミングを企画し、それにふさわしいアーティストを集めた藤岡幸夫氏は素晴らしく、頼もしいと思います

 

     

     

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梅田俊明 ✕ 新日本フィルによる「山本直純  生誕90年と 新日本フィル  創立50年を祝う!」公演を聴く ~ フェスタサマーミューザ参加公演

2022年08月04日 07時04分01秒 | 日記

4日(木)。わが家に来てから今日で2762日目を迎え、国連難民高等弁務官事務所は2日、ロシアによる軍事侵攻が始まって以来、ウクライナから国外に脱出した人が1千万人を超えたと公表した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     多くは難民ということだ  主権国家を侵略し 国民を追い出したロシアの罪は多大だ

 

         

 

昨日は、夕食に娘が職場の同僚から仕入れてきた「馬肉を刺身」にして、「生野菜サラダ」「冷奴」「マグロの刺身」と一緒に食べました 馬刺しは柔らかくてとても美味しかったです

 

     

 

         

 

昨日、ミューザ川崎でフェスタサマーミューザ KAWASAKI 2022 参加公演「新日本フィルハーモニー交響楽団 山本直純生誕90年と 新日本フィル創立50年を祝う!」を聴きました プログラムは山本直純作曲①シンフォニック・バラード、②和楽器と管弦楽のためのカプリチオ、③児童合唱とオーケストラのための組曲「えんそく」(抜粋)、④童謡メドレー「1年生になったら」~「こぶたぬきつねこ」~「おーい海」~「歌えバンバン」(山本祐之介編曲・指揮)、⑤山本正美「Spring has come」、⑥白銀の栄光(札幌オリンピック入場曲:1972年)、⑦NHK大河ドラマ「武田信玄」テーマ曲(1988年)、⑧CMソング、TV・ラジオ番組メドレー(山本祐ノ介編曲)=「森永チョコレート」 ~ 「サントリー純生」 ~「8時だよ!全員集合」 ~ 「マグマ大使」 ~ 「3時のあなた」 ~ 「小沢昭一の小沢昭一的こころ」~「ミュージック・フェア」~「男はつらいよ」です

なお、当初「田園・わが愛」より「ふるさと」他が演奏される予定でしたが、合唱団メンバーからコロナ陽性者が出たことから、演奏されませんでした

演奏は②の和楽器:箏=田村法子、三味線=野澤徹也、尺八=石垣征山、竜笛=伊崎善之、邦楽打楽器(和太鼓と鼓)=望月太喜之丞、富田慎平、長田伸一郎、ギター=尾尻雅弘、ドラムス=東佳樹、③④の合唱=東京音楽大学合唱団有志(女声6人)、指揮=梅田俊明(コロナ陽性となった広上淳一氏の代役)、山本祐ノ介(④のみ)です

 

     

 

2022年は山本直純(1932ー2002)の生誕90年・没後20年に当たります 彼は高校時代に齋藤秀雄の指揮教室で小澤征爾らと共に学び、東京藝大作曲家に入学、在学中から放送等の分野で作曲活動を展開しました その頃の彼の天才ぶりや捧腹絶倒の活躍ぶりは今年6月7日付の toraブログ でご紹介した岩城宏之著「森のうた 山本直純との藝大青春記」に詳しく書かれています 1968年からは森永チョコレートのCM「大きいことはいいことだ」の作曲と出演で日本中の話題をさらい、1972年には小澤征爾と共に新日本フィルの創立に参画しました 1972年~83年にはテレビ番組「オーケストラがやって来た」の音楽監督と司会で活躍、赤いタキシードに口ひげと黒縁メガネといういで立ちでクラシック音楽の普及に大きな貢献をしました

彼は4000曲もの作品を残しました この日演奏された作品はその中のほんの一部です

オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという いつもの新日本フィルの並び     コンマスは崔文洙、その隣はゲスト・コンマスの伝田正秀というダブル・コンマス態勢を敷きます    第2ヴァイオリンのトップには卒業生・吉村知子が一時 返り咲いています

1曲目は「シンフォニック・バラード(交響譚詩)」です この曲は1983年、「オーケストラがやって来た」の放送終了に際して、番組のメイン楽団・新日本フィルの委嘱で書かれた作品です 第1楽章「リソナンス」、第2楽章「ロマンス」、第3楽章「リメンブランス」、第4楽章「ダンス」の4楽章から成ります 第1楽章は和洋混合という感じの曲風です 第2楽章ではマルコス・ペレス・ミランダのクラリネットが良く歌いました 第3楽章ではホルンのアンサンブルが素晴らしかった

2曲目は「和楽器と管弦楽のためのカプリチオ」です この曲は日本フィルが1958年に開始した委嘱新作企画「日本フィル・シリーズ」の第10作です 1963年、藝大時代の師匠・渡邊暁雄の指揮で初演されました (前出「森のうた」に紳士の渡邊教授が出てきます)。この曲は全5楽章から構成されていて、日本の四季が描かれています 第2楽章以降は続けて演奏されます

オーケストラの手前の、下手側に箏=田村法子、三味線=野澤徹也、尺八=石垣征山、竜笛=伊崎善之がスタンバイし、上手側にドラムス=東佳樹、邦楽打楽器(和太鼓と鼓)=望月太喜之丞、富田慎平、長田伸一郎がスタンバイ、そのやや後方にギター=尾尻雅が控えます

梅田の指揮で演奏が開始されます 30分を超える大作ですが、洋風の曲想あり、和風の曲想あり、ラテン的な趣の音楽あり、ポピュラー音楽風ありといった、何でもありの賑やかな音楽でした 第1楽章では箏、尺八、三味線、竜笛の演奏が素晴らしい 第3楽章におけるドラムス・ソロは迫力満点でした その直後の2台の和太鼓のコンビネーションも腹の底にズシンと迫ってきました

 

     

 

プログラム後半の1曲目は、合唱とオーケストラのための組曲「えんそく」から「光る」と「おべんとう」が東京音楽大学合唱団の女声6人によって楽しく歌われました 少人数となったためマイクが入りました

ここで指揮者が梅田氏から直純氏の次男・山本祐ノ介氏に代わり、女声6人により童謡「1年生になったら」~「こぶたぬきつねこ」~「おーい海」~「歌えバンバン」が楽しく元気に歌われました この6人凄くいいと思います 祐ノ介氏の指揮はアクションが大きく、生前の直純氏の棒振りを意識して再現しているように見えました 聴衆を喜ばせるサービス精神は遺伝したようです

再び指揮が梅田氏に任され、山本正美「Spring has come」の演奏に入ります この曲は直純氏の妻・正美さんの交響組曲「日本のリズム」三部作の1曲です 柴田克彦氏のプログラム・ノートによると、直純氏と正美さんは藝大の同期生だったそうです(ドウキが不純だ、とは言うまい)。正美さんは上皇后美智子妃の詩に付曲した「ねむの木の子守歌」で知られているとのことですが、ちっとも知りませんでした 本作が1976年に秋山和慶指揮東京交響楽団のアメリカ公演で初演された時は大喝采を受けたそうですが、曲を聴くとよく分かります 楽団員の「いよー」という威勢の良い掛け声と手拍子による導入は極めて日本的で、中身は和風テイスト満載、最後も三三七拍子風に威勢よく締めくくられます 声と手拍子を楽器として活用するところは非凡だと思います

次の曲は1972年の札幌オリンピック入場行進曲「白銀の栄光」です この曲は壮大であるとともに軽妙さを持ち合わせた行進曲で、本人も気に入っていたそうです

続けて1988年に放映されたNHK大河ドラマ「武田信玄」のテーマ曲が演奏されます 私もこの頃は大河ドラマを観ていたので、何となく思い出しました。勇壮な音楽です

最後は山本祐ノ介編曲によるCMソング、TV・ラジオ番組メドレーです 「森永チョコレート」 ~ 「サントリー純生」 ~「8時だよ!全員集合」 ~ 「マグマ大使」 ~ 「3時のあなた」 ~ 「小沢昭一の小沢昭一的こころ」~「ミュージック・フェア」~「男はつらいよ」がメドレーで演奏されました 山本直純は「男はつらいよ」の1969年からの48作と特別編の全音楽を担当しました この曲の後半でマルコス・ペレス・ミランダがテーマのソロを吹きましたが、これがなかなか聴かせてくれました フルオーケストラで「男はつらいよ」を聴いたのは今回が初めてで、感激しました 世に数多の名曲はあれど、冒頭の音楽だけで曲名が分かるのは「男はつらいよ」くらいだと思います 名曲です

これで終わりか・・・と思っていると、舞台上に再びコーラス用のマイクが設置されました 女声6人が再登場し、アンコールの歌を歌い始めました いったい何の曲か・・・と思いながら聴いていると最後に「好きです  川崎  愛の町」と歌っています   「なんだ、ミューザ川崎の地元の歌か」と思いましたが、なぜアンコールに川崎のPRソングを歌うのか?と疑問に思いました    気になったので、帰りの電車の中で Wikipedia で検索してみたら「川崎市民の歌 :  好きです かわさき 愛の街」という曲であることが分かりました    まさか   と思って作曲者名を見ると「山本直純」とありました あらためて、音楽界のマルチタレント=山本直純を再認識し、凄い人だったんだなぁ、と思いました

曲間のインタビューで「リハの2日前に代役を依頼されまして・・・」と語っていた指揮者・梅田俊明氏に「プロフェッショナル」を見ました

 

     

     

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アラン・ギルバート ✕ 東京都交響楽団でプロコフィエフ「古典交響曲」、ビゼー「アルルの女」組曲、ラフマニノフ「交響的舞曲」を聴く ~ フェスタサマーミューザ参加公演

2022年08月03日 07時17分24秒 | 日記

3日(水)。わが家に来てから2761日目を迎え、UAE(アラブ首長国連邦)に滞在中のガーシー氏は、国会に海外渡航届を提出していたが、参議院議院運営委員会は2日の理事会で、海外渡航届を許可しないことを全会一致で決めた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     選挙で選ばれたのだから登院するのは当たり前 それが出来ないなら議員を辞めろ!

 

         

 

昨日、夕食に大学時代の友人S君が送ってくれた「鯵を塩焼き」にして、「マグロの山掛け」「生野菜サラダ」「豚汁」を作りました 鯵は大振りで美味しかったです

 

     

 

         

 

昨夜、ミューザ川崎で「フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2022」参加公演「東京都交響楽団 ゴージャス! 腕利き集団が奏でる名曲集」を聴きました プログラムは①プロコフィエフ「交響曲第1番 ニ長調 作品25 ”古典交響曲”」、②ビゼー「アルルの女」からパストラール(第2組曲)、メヌエット(第1組曲)、カリヨン(第1組曲)、アダージェット(第1組曲)、ファランドール(第2組曲)、③ラフマニノフ「交響的舞曲 作品45」です 指揮は都響首席客演指揮者アラン・ギルバートです

アラン・ギルバートはNDRエルプフィル首席指揮者、スウェーデン王立歌劇場音楽監督、ロイヤル・ストックホルム・フィル桂冠指揮者、ジュリアード音楽院指揮・オーケストラ科ディレクターを務めています また、2017年まで8シーズンにわたりニューヨーク・フィル音楽監督を務めました

 

     

 

オケは10型で、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという並び コンマスは矢部達哉、その隣は山本友重といったダブル・コンマス態勢を敷きます チェロのトップには1日 正式に首席となった伊東裕がスタンバイします また、フルートのトップにはN響の神田寛明が客演しています

1曲目はプロコフィエフ「交響曲第1番 ニ長調 作品25 ”古典交響曲”」です この曲はセルゲイ・プロコフィエフ(1891ー1953)が、「もしもハイドンが現代に生きていたら、こういう曲を作ったのではないか」というコンセプトのもとに1916年から翌17年にかけて作曲、1918年4月にペトログラードで初演されました 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「ラルゲット」、第3楽章「ガヴォット:ノン・トロッポ・アレグロ」、第4楽章「フィナーレ:モルト・ヴィヴァーチェ」の4楽章から成ります

アラン・ギルバートの指揮で演奏に入りますが、全体として弦楽セクションが重厚かつ切れの良い演奏を展開、フルート、オーボエといった木管楽器群が良く歌い、まさにハイドン的な明るく軽快な演奏を繰り広げました

2曲目はビゼー「アルルの女」からパストラール(第2組曲)、メヌエット(第1組曲)、カリヨン(第1組曲)、アダージェット(第1組曲)、ファランドール(第2組曲)です この曲はジョルジュ・ビゼー(1838ー1875)がアルフォンス・ドーデの小説に基づく戯曲を元に1872年に作曲、同年パリで初演されました 全27曲の中からビゼーが4曲を選んで「第1組曲」として大管弦楽用に編曲、ビゼーの死後の1879年に友人で作曲家のエルネスト・ギローが4曲を編曲し「第2組曲」を編みました

オケは14型に拡大し、アラン・ギルバートの指揮で演奏に入ります

最初の「パストラール」では、ホルン、トロンボーンといった金管楽器群が雄大な田園風景をダイナミックに描きますが、とりわけゲストで参加した住谷美帆のサクソフォンが素晴らしかった 「メヌエット」ではファゴットの演奏が印象に残りました 3曲目の「カリヨン」ではフルートとオーボエのアンサンブルが素晴らしかった 「アダージェット」では弦楽セクションのアンサンブルが美しく響きました 最後の「ファランドール」は勇壮なプロヴァンス民謡「3人の王の行列」と舞曲「ファランドール」が微妙に組み合わさって進行しますが、シャカリキの弦楽器、咆哮する金管・木管楽器、炸裂する打楽器によって聴衆は興奮の坩堝に引き入れられます 私は「ファランドール」を聴きながら、何故か先日亡くなった山本厚太郎率いるソルティー・シュガーの名曲「走れコウタロー」を思い浮かべていました

最初の「3人の王の行列」のメロディーのイメージ  ⇒  これから始まる大レース ひしめきあっていななくは 天下のサラブレッド4歳馬 今日はダービーめでたいな~

次に「ファランドール」のメロディーのイメージ  ⇒  走れ走れコウタロー 本命穴馬かきわけて 走れ走れコウタロー 追いつけ追い越せ引っこ抜け~

「フィナーレ」のイメージ (ラジオ実況風) ⇒ コウタローが追いつくか、ホタルノヒカリが逃げ切るか コウタローかホタルノヒカリ ホタルノヒカリかマドノユキ  あけてぞけさは別れゆく~

よい子はこういう連想を真似しないでね あちこちから石が飛んできますから

 

     

 

プログラム後半はラフマニノフ「交響的舞曲 作品45」です この曲はセルゲイ・ラフマニノフ(1873ー1943)が1940年に作曲、1941年にユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団により初演されました 第1楽章「ノン・アレグロ」、第2楽章「アンダンテ・コン・モート(テンポ・ディ・ヴァルス)」、第3楽章「レント・アッサイ ~ アレグロ・ヴィヴァーチェ」の3楽章から成ります

ギルバートの指揮で第1楽章の演奏に入ります 重苦しいリズムの行進曲に続き、住谷美帆の哀愁に満ちたサクソフォンが入ってきますが、この演奏が素晴らしい また、オーボエ、ファゴットとのアンサンブルも美しく響きました 第2楽章は弱音器付きトランペット、トロンボーンが不気味な響きにより悲劇的なワルツを奏でます 第3楽章のエクセントリックな音楽を聴いていたら、ベルリオーズの「幻想交響曲」の最終楽章を思い浮かべました 結尾のドラの響きが長く余韻を残して消え行ったのが印象的でした

この曲については、NAXOSのCDで予習しておいたのですが、ギルバート ✕ 都響によるダイナミックな演奏をライブで聴いて、この曲の本当の良さが解ったように思います

 

     

     

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都響:チェロ首席に伊東裕、新日本フィル:オーボエ首席に岡北斗 / 是枝裕和監督「ベイビー・ブローカー」を観る ~ 彼女はなぜ「赤ちゃんポスト」に赤ん坊を預けたのか?

2022年08月02日 07時11分16秒 | 日記

2日(火)。東京都交響楽団のホームページによると、8月1日付で伊東裕(いとう ゆう)氏がチェロ首席に就任しました 伊東氏は「葵トリオ」のメンバーとしても活躍しています

新日本フィルのツイッターによると、8月1日から岡北斗(おか ほくと)氏が正団員として首席オーボエ奏者に就任しました 岡氏は「藝大フィルハーモニア管弦楽団」の首席オーボエ奏者を務めていました これによりオーボエ首席が神農広樹氏と岡氏、特任首席が古部賢一氏となります

東京交響楽団のホームページによると、8月1日付で廣岡克隆(ひろおか よしたか)氏が楽団長に就任しました 廣岡氏は10月末まで演奏業務(現在、アシスタント・コンサートマスター)を兼任し、11月1日から楽団長に専任するとしています

ということで、わが家に来てから今日で2760日目を迎え、朝鮮中央通信によると、金正恩総書記が「建国以来の大動乱」と述べ、一時は1日40万人近く感染者が出ていた新型コロナウイルスは、7月30~31日に「発熱者」がゼロとなり、3か月ほどで収束した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     さすがは政府のプロパガンダ通信社 北朝鮮以外では誰も信じないことを報道してる

 

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昨日、夕食に「野菜とひき肉のドライカレー」を作りました 辛いカレーには甘い目玉焼きがマッチします 久しぶりに作りましたが、美味しく出来ました

 

     

 

         

 

昨日、日比谷のTOHOシネマズ・シャンテで是枝裕和監督による2022年製作韓国映画「ベイビー・ブローカー」(130分)を観ました

この作品は、「万引き家族」の是枝裕和監督が「パラサイト  半地下の家族」のソン・ガンホを主演に、初めて手掛けた韓国映画です

古びたクリーニング屋を営みながら借金返済に追われるサンヒョン(ソン・ガンホ)と、赤ちゃんポストのある施設で働く児童養護施設出身のドンス(カン・ドンウォン)には、「ベイビー・ブローカー」という裏稼業があった ある土砂降りの雨の晩、2人は若い女ソヨン(イ・ジウン)が赤ちゃんポストに預けた赤ん坊をこっそりと連れ去る しかし、翌日思い直して戻ってきたソヨンが、赤ん坊が居ないことに気が付いて警察に通報しようとしたため、2人は仕方なく赤ちゃんを連れ出したことを白状する サンヒョンの「赤ちゃんを育ててくれる家族を見つけようとしていた」という言い訳に呆れるソヨンだが、成り行きから彼らとともに”お金になる”養父母探しの旅に出ることになる 一方、サンヒョンとドンスを検挙するため尾行を続けていたスジン(ペ・ドゥナ)と後輩のイ刑事(イ・ジュヨン)は、現行犯逮捕を目論み彼らの後を追う

 

     

 

本作は、子どもを育てられない人が匿名で赤ちゃんを置いていく「赤ちゃんポスト(ベイビー・ボックス)」を介して出会った人々が織りなす物語をオリジナルの脚本で描いたものです この映画の大きな特徴は、舞台は韓国、スタッフとキャストはほとんど韓国人で固めながら、「万引き家族」と同様に、家族とは何かというテーマを描いたところです

冒頭のシーンが印象的です。土砂降りの雨の晩、低所得者層が暮らす古びた住宅街を赤ん坊を抱いた一人の女性が施設に歩いていく場面です これを観て、ソン・ガンホが主演した映画「パラサイト 半地下の家族」を思い出しました。あの映画でも土砂降りの雨が印象的でした

水がらみで言えば、サンヒョン、ドンス、ソヨンの3人による養父母探しの旅の途中で、ドンスが育った児童養護施設の男の子ヘジンが車に忍び込んで一緒に旅を続けることになりますが、ヘジンがガソリンスタンドの洗車場で車の窓を開けてしまい、4人とも水浸しになり大騒ぎになるシーンも印象的です この小さな事件をきっかけに4人は本物の家族のような関係が築かれます

傑作だと思ったのは女性刑事コンビです 物語の前半では、張り込みの車の中で何かしら食べているのです それが 後半になると、現行犯逮捕のチャンスがないので、物を食べる余裕もなくなるほどスジン刑事は焦りを感じ、偽の養父母希望者を仕立て上げて、サンヒョンが赤ちゃんを売る現場を押さえる「おとり捜査」を仕掛けます しかし、これはドンスに見破られて失敗してしまいます    イ刑事は「スジン刑事は赤ちゃんを売ってほしいんですか? まるで、われわれがベイビー・ブローカーみたいですね」と言います つまりサンヒョンらが赤ちゃんを売れば現行犯逮捕出来て手柄になるからです

【以下、ネタバレ注意】

映画の冒頭、「捨てるくらいなら 最初から産むなよな」というセリフが語られます これを観ているわれわれの多くは、「そうだ、その通りだ」と思っています しかし、父親が反社会的勢力で、産むのを反対されたソヨンが殺してしまったことが分かります ソヨンは、いずれ自分は殺人罪で逮捕されるだろうと思い、殺人者の母親から生まれた赤ん坊の将来を考えて「赤ちゃんポスト」に預けたのです ポストに赤ん坊を預ける人にはやむを得ない理由があるのだ、ということを知ったわれわれは、ソヨンに同情的な気持ちになります

ところで、日本の「赤ちゃんポスト」は熊本県の慈恵病院「こうのとりゆりかご」が有名ですが、この映画の中でもドンスとソヨンとの間で言い争いがあったように、この制度には賛否両論があります 「罪のない子どもの命を救うことができる」「子どもを持てない人の養子縁組の手助けとなる」という賛成意見と、「望まない妊娠をして子供を匿名で預ける施設があるということで、母親が望まない妊娠を防止するための自衛をしなくなる」「匿名をよいことに 安易に利用される恐れがある」という反対意見があります 難しい問題ですが、この映画を観た後では、「預ける人にはそれなりのやむを得ない事情があることを考慮すべきだ」と思いました

少し問題が広がりますが、テレビや新聞の報道で「母親が幼児を部屋に閉じ込めたまま、外に遊びに行って帰らなかったため、幼児が死亡した」というニュースに接することがありますが、長男が幼児の頃、保育園への送り迎えを95%以上やっていた私の立場から言えば、「母親もけしからんが、(正規・内縁に限らず)父親はどこでどうしていたのか」ということです すべての責任を母親に押し付けて批判するのは片手落ちではないか それにしても、現代の日本はシングルマザーが増えていないだろうか 値上げラッシュが続く現在の日本は、子どもを持つ彼女たちにとってますます住みにくい社会になっていくのではないだろうか

この映画を観終わって、そんなことを考えました

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