人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ペトル・ポペルカ ✕ 森谷真理 ✕ 東京交響楽団でベルク:歌劇「ヴォツェック」から3つの断章、ラフマニノフ「交響的舞曲」他を聴く ~ 第702回定期演奏会

2022年08月21日 07時09分34秒 | 日記

21日(日)。わが家に来てから今日で2779日目を迎え、自民党の萩生田政務会長は、今年6月に生稲晃子参院議員と八王子市内にある旧統一教会の関連施設を訪れていたことに関し、岸田首相が「各自が点検し、見直すように」と指示したにも関わらず、旧統一教会との関係について「適切な対応をしていきたい」と繰り返し、最後まで「統一教会との関係を絶つ」と明翫しなかったことに対し、政権与党で連立している公明党が批判を強めている  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     創価学会の公明党が怒るのは当然だ 自民党は旧統一教会と連立を組んでたんだから

 

         

 

昨夕、サントリーホールで東京交響楽団の第702回定期演奏会を聴きました プログラムは①ウェーベルン:大管弦楽のための牧歌「夏風の中で」、②ベルク:歌劇「ヴォツェック」から3つの断章、③ラフマニノフ「交響的舞曲 作品45」です 演奏は②のソプラノ独唱=森谷真理、指揮=ペトル・ポペルカです

本公演は当初、マティアス・ピンチャーの指揮により②はピンチャー「牧歌」が演奏される予定でしたが、降板により指揮がペトル・ポペルカに代わったことに伴い、ベルクが取り上げられることになったものです

ペトル・ポペルカはチェコ・プラハ出身。2010~19年にドレスデン・シュターツカペレで副主席コントラバス奏者を務める傍ら、2016年から指揮を始め、翌年にはネーメ・ヤルヴィ賞を受賞 2020年8月ノルウェー放送管弦楽団首席指揮者を皮切りに欧州各地のオーケストラや音楽祭に招かれ絶賛を浴びています 2022年9月からプラハ放送交響楽団首席指揮者・芸術監督に就任する予定です

 

     

 

オケは16型で奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対抗配置をとります コンマスは小林壱成です

1曲目はウェーベルン:大管弦楽のための牧歌「夏風の中で」です この曲はアントン・ウェーベルン(1883ー1945)が1904年、ウィーン大学在学中に作曲した作品です ウェーベルンの意思により公表されませんでしたが、ウェーベルの死後、1960年代に入って音楽学者モルデンハウアーが勝手に出版し、1962年5月25日にシアトルでユージン・オーマンディの指揮により初演されました 作品はドイツの詩人ブルーノ・ヴィレの「風の中で」という詩を基にした一種の交響詩です

ペトル・ポペルカの指揮で演奏に入ります 弦楽を中心に展開する曲想は、ある時はマーラーを感じ、ある時はリヒャルト・シュトラウスを感じ、またある時は彼の後輩にあたるコルンゴルトの顔を見せ、ほとんど後期ロマン派のど真ん中をいく音楽に聴こえます 作曲者名を伏せて演奏を聴いたらウェーベルンとは答えらないでしょう ちゃんとメロディーがあって聴きやすい曲ですが、この線で突っ走ったらウェーベルンの名前は音楽史に残らなかったでしょうね

2曲目はベルク:歌劇「ヴォツェック」から3つの断章です 「ヴォツェック」はアルバン・ベルク(1885ー1935)がビュヒナーの戯曲を基に1924年に作曲、1924年6月11日にフランクフルトで初演された、無調主義の歌劇として初めて成功した作品です 物語は「しがない一兵卒ヴォツェックはマリーを情婦として子どももいるが、鼓手長と彼女との関係を知りマリーを殺害、自らも池に身を投げて死ぬ」というものです まさに「クライマックス」の曲です。「暗いMax」分かりますね

「3つの断章」はソプラノとオーケストラのための作品で、第1曲(行進曲)はオペラ第1幕第2場・第3場から、第2曲(変奏曲)は第3幕第1場から、第3曲(インヴェンション)は第3幕第4場・第5場から採られています

ソプラノ独唱の森谷真理は武蔵野音楽大学・同大学院修了後、ニューヨークのマスネ音楽院修了。リンツ州立劇場の専属歌手を務め、欧米の多くの歌劇場で活躍し、日本でも新国立オペラなどで活躍するなど、今や引っ張りだこのソプラノです

実はこの曲、今年5月24日の読響定期演奏会で指揮=上岡敏之、ソプラノ=森谷真理で聴いたことがあるので今回が2度目になります ひょっとして、東響の関係者が読響の公演を聴いて、ペトル・ポペルカにオファーしたのだろうか

ソプラノは第1曲と第2曲で歌われますが、特に第2曲における森谷真理のソプラノは破壊力があり、マリーの悲しみや怒りや絶望が見事に表現されていて、初めて聴いた時の感激を思い出しました ペトル・ポペルカ ✕ 東響はドラマティックな演奏でソリストを盛り立てました

 

     

 

プログラム後半はラフマニノフ「交響的舞曲 作品45」です この曲はセルゲイ・ラフマニノフ(1873ー1943)がロシア革命を逃れたアメリカで1940年に作曲、1941年1月にユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団により初演されました   第1曲「ノン・アレグロ」、第2曲「アンダンテ・コン・モート(ワルツのテンポで)」、第3曲「レント・アッサイ ~ アレグロ・ヴィヴァーチェ」の3楽章から成ります

ペトル・ポペルカの指揮で第1楽章に入ります    前半とはまるで人が変わったように精力的な指揮ぶりを発揮します    身体全体を使った躍動感あふれる指揮で各セクションに指示を出します オーケストラは彼の熱意に応えるかのようにアグレッシブな演奏を展開します オーボエの荒木奏美、クラリネットの吉野亜希菜、イングリッシュホルンの最上峰行、そしてサクソフォンの演奏が素晴らしい ヴィオラを中心とする弦楽セクションの渾身の演奏が光ります 第2楽章を聴いていて、この指揮者、オケの表情付けが上手いと思いました 第3楽章では最後のタムタム(ドラ)の一撃の余韻が会場を満たしていくのが印象的でした

ペトル・ポペルカはエネルギッシュな指揮でオーケストラを煽り立て、オケが必死に応えるという印象を受けました この指揮者、すごくいいと思います 結果的に代役で良かったのではないか、と思います

本公演は私にとって今年100回目のコンサートでした 今年も残すところあと132日。あと何回聴けるだろうか

 

     

     

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新日本フィル2023/2024シーズン定期公演プログラム決定 ~ 佐渡裕=第5代音楽監督に就任 / ロバート・ゼメキス監督「フォレスト・ガンプ/一期一会」を観る

2022年08月20日 07時09分47秒 | 日記

20日(土)。昨日、山形県鶴岡市に単身赴任している息子からメールが入りました 先日、牛肉を送ってあげたことへのお礼メールでした 娘が家付き・食事付きで自分の給料はすべて自分のものという恵まれた条件なのに対し、息子は家賃・水道・ガス・電気代・NHK受信料から食費・日用品に至るまで一人で賄っているので、たまには少しでも贅沢をしてもらおうと2か月おきに牛肉を送っています 今回は、今夏帰省できなかった息子がコーヒー豆を送ってくれたので、そのお礼も兼ねて送ったものです 「コロナと熱中症と異常気象に気を付けて」と返信しておきました

ということで、わが家に来てから今日で2778日目を迎え、トランプ前大統領の一族が経営するトランプ・オーガニゼーションで長年最高財務責任者を務めたアレン・ワイセンバーグ被告が18日、司法取引により、ニューヨーク州の裁判所で同社の15年に及ぶ脱税工作に関与していたと認め、検察側の証人として今後の裁判に出廷することに同意した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     共和党員はいい加減に目を覚ましたらどうだ  トランプの悪事が次々と暴かれてく

 

         

 

昨日、夕食に「チキンステーキ」「ウインナとキャベツのスープ」を作りました あとは”ビールのお供”枝豆です

 

     

 

         

 

新日本フィル「2023/2024シーズン定期演奏会」のプログラムが決定しました 新シーズンから佐渡裕が第5代音楽監督に就任します

 

     

     

     

「トリフォニー・シリーズ&サントリー・シリーズ」は、フル・オーケストラの醍醐味が味わえるラインナップになっています 目玉は6月のシャルル・デュトワ指揮による公演です ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」、ストラヴィンスキー「火の鳥」組曲、ベルリオーズ「幻想交響曲」の3曲ともデュトワの得意中の得意とする曲です

「すみだクラシックへの扉シリーズ」は、名曲を中心とするラインナップになっています 個人的には6月のデリック・イノウエ指揮、藤木大地カウンターテナーによる公演と、上岡敏之指揮、アンヌ・ケフェレックのピアノによるベートーヴェン「ピアノ協奏曲第1番」&シューベルト「グレイト」の公演が面白いと思います

 

         

 

昨日、新文芸坐でロバート・ゼメキス監督による1994年製作アメリカ映画「フォレスト・ガンプ/一期一会」(142分)を観ました

この映画は、1985年にウィンストン・グルームが発表した小説「フォレスト・ガンプ」をエリック・ロスが脚色して製作された作品です 「フォレスト・ガンプ」は主人公の名前で、「フォレスト」は白人至上主義団体であるクー・クラックス・クランの結成者として知られるネイサン・べドフォード・フォレストから採られ、「ガンプ」はアラバマ州の方言で「うすのろ」「間抜け」という意味があります 頭は少し弱いが、誰にも負けない俊足と純真な心と、母への愛とある一人の女性への一途な思いを持ち、心無い人からは嘲笑されながらも、それ以上に良心的な人々の協力を受けて数々の成功を収め、同時に周囲に幸福をもたらしていく「うすのろフォレスト」の半生を、アメリカの1950~80年代の歴史を交えながら描いたヒューマンドラマです

知能指数が他人よりも劣っていたが、母親に普通の子どもと同じように育てられたフィレスト・ガンプ(トム・ハンクス)は、小学校で優しく美しい少女ジェニー(ロビン・ライト)と運命的な出会いを果たす 俊足を買われてアメフトの選手として入学した大学ではスター選手として活躍する 卒業後は軍隊に入り、ベトナム戦争で仲間を救って勲章をもらい、除隊後はエビ漁を始めて大成功を収める しかし、幼い頃から思い続けているジェニーとは再会と別れを繰り返す 紆余曲折の後 ついに結婚を果たすが、彼女は病に倒れ、一粒種の男児を残す。それはフォレストの子だった

 

     

 

映画は、空中を漂う1本の白い羽が約2分かけてフォレストの足元に舞い降りるシーンから始まります 物語は、バス停に座るフォレストが、バスを待つ人々に語りかけながら過去を回想する形で進行していきます

思わず笑ってしまうのは歴代のアメリカ大統領との接見シーンです もちろん技術的に作り上げた映像ですが、それぞれの大統領が本物そっくりで驚きます どうやって撮影したのか興味深々です

フットボールの全米代表選手に選ばれた選手たちがホワイトハウスに招かれケネディ大統領と面会しますが、フォレストはコーラを飲み過ぎてトイレが我慢できません ケネディから「調子はどう?」と訊かれて「小便がしたい」と答えます これが本当の小休止か

ベトナム戦争で手柄を立て、ジョンソン大統領から勲章を贈られますが、大統領から「どこに銃撃を受けたんだい?」と訊かれ「尻です」と答えると、大統領がジョークで「見てみたいもんだね」と言うと、フォレストはズボンを降ろして尻を見せ、その様子がテレビで全国中継されます 大統領はそんなの尻たくなかった、かも

卓球の世界大会に出場することになったフォレストは、ピンポン外交の主役、ニクソン大統領にも接見するが、その夜にワシントンで宿泊した「ウォーターゲート・ホテル」の客室から道を挟んだ向かいのビルに侵入者がいるのを目撃して警察に通報する まさにニクソンの「ウォーターゲート事件」が起きていた

この映画は第67回アカデミー賞で作品賞ほか6部門を受賞、トム・ハンクスは前年の「フィラデルフィア」に続いて2年連続で主演男優賞を受賞しました 個人的にはダン・テイラー中尉(ダン小隊長)を演じたゲイリー・シニーズが素晴らしいと思いました

いかにもアメリカ人が好きそうな、ユーモア溢れる無垢なヒーロー物語と言うべきでしょう

 

     

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ファビオ・ルイージが見るロシア / 勢古浩爾著「定年後に見たい映画130本」を読む ~ 人間ドラマ、アクション、日本映画、戦争映画などジャンル別に紹介した手引書

2022年08月19日 07時10分09秒 | 日記

19日(金)。昨日午前、豊島区役所1階特設スペースで、新型コロナ・ワクチン4回目の接種をしてきました 4回ともモデルナです。接種した後、最後の問診の時に医師から「食事は普通に食べて良いし、風呂に入っても良いです」と言われたので、「夕食時にビールを飲んでもいいですか?」と訊いたら、こんなアホな質問をする者は他にいないようで、カカカカッと高笑いし、「いつもと同じようにしてください」と言われました ン、おぬし出来るな

話は変わりますが、昨日の日経「夕刊文化」ページで、N響首席指揮者に9月に就任するイタリア出身の指揮者、ファビオ・ルイージ氏が取り上げられていました 彼はN響を鍛えた功労者の一人であるドイツの指揮者、ヴォルフガング・サヴァリッシュ氏を「音楽家としても、人間としても私のロールモデル」と尊敬しているとのこと ロシアのウクライナ侵攻については、「問題はプーチンであって、プーシキン(ロシアの著名な詩人)ではない。私はロシアの文化に深い敬意を持っているし、ロシアの音楽家とも、ウクライナの音楽家とも、これからも一緒に仕事をするつもりです」と語っています N響9月のA定期=ヴェルディ「レクイエム」と B定期=ベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」&ブラームス「交響曲第2番」のファビオ・ルイージ首席指揮者就任記念演奏会が楽しみです

ということで、わが家に来てから今日で2777日目を迎え、安倍晋三元首相の死去に関し、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を批判する偏向報道で被害を受けているとして、韓国国内の信者らが18日、ソウル中心部の光化門広場周辺で抗議デモを行った  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     洗脳された信者たちが 組織の命令で統一デモに動員されたんだろう 憐れな人たち!

 

         

 

昨日、夕食に「肉じゃが」「冷奴」「生野菜とツナのサラダ」「大根の味噌汁」を作りました 和食はいいですね   「 いつもと同じように」ビールを飲みました もちろん、平熱を確かめてからです 人によって違うので よい子は真似しないでね

 

     

 

         

 

勢古浩爾著「定年後に見たい映画130本」(平凡社新書)を読み終わりました   勢古浩爾氏は1947年大分県生まれ。明治大学政治経済学部卒業。洋書輸入会社に34年勤務の後、2006年に退職。1988年、「第7回毎日二十一世紀賞」を受賞。著書に「定年後のリアル」「会社員の父から息子へ」など多数

 

     

 

著者は「まえがき」で、「子どもの頃から映画を見るのが好きで、読書より好きだった」と告白しています 小3あたりから東映映画を見始め、学生時代は安映画館の3本立てを、社会人になってからはビデオを借りて見た その後DVDの時代になり、今に至るまでTSUTAYA通いが続いているーと書いています そうした豊かな映画体験の中から厳選したのが本書で紹介されている130本の映画です ただし、これ以外に「その他のお薦め」として紹介している作品もあるので、総数は300本を超えています

本書は次の各章から構成されています

第1章「人間ドラマは映画の王道」(14作品)

第2章「なんでもできる人間ドラマ」(17作品)

第3章「映画は凡作だけど、個人的に好きだ」(5作品)

第4章「わたしの一番好きなアクション&ミステリー映画」(21作品)

第5章「日本映画の光と影」(16作品)

第6章「社会派映画はリアルさが命」(10作品)

第7章「スポーツ映画があまりヒットしない理由」(9作品)

第8章「人間の業と戦争映画」(14作品)

第9章「定年・老年映画が心に沁みる」(9作品)

第10章「これは傑作だ!  わたしのベスト15」(15作品)

全部読み終わって、数えてみたら、私が観たことのある映画は40本程度でした いかに私が映画を観ていないかを知らされたようで恥ずかしい限りです どの映画を観たかをいちいちご紹介することはできませんが、「誰が観ても良い映画は良い」と言えるのは、黒澤明の「七人の侍」「用心棒」「椿三十郎」の3部作です 世界に通用する不朽の名作です

第4章でマーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演「タクシードライバー」が紹介されていました 物語は「タクシー運転手のトラヴィス(デ・ニーロ)は次期大統領候補者の集会に銃を隠し持って現れるが、警備に不審者と見られ逃走する。その後、売春宿に行き男3人と撃ち合いをして殺す」というものです 私は安倍元首相暗殺事件を思い出しました

私が唯一不満なのは、ロバート・ベントン監督、ダスティン・ホフマンとメリル・ストリープ主演による1979年製作アメリカ映画「クレイマー、クレイマー」が紹介されていないことです 涙なくして観られない映画です。ヴィヴァルディ「マンドリン協奏曲」がテーマ音楽として使われていたのが印象的でした

ところで、著者は映画を「見る」と書いていますが、その理由を次のようにコメントしています

「『聞く』は集中して聞くという意味で『聴く』と書くことはある しかし『見る』を集中して見るという意味で『観る』と書くのは、ちょっと感覚的にマッチしない 『観劇』あたりから来た用法だと思えるが、いまだになじまないのだ

I like watching television . (私はテレビをみるのが好きです)

What film are you going to see this evening? (今晩どんな映画をみるのですか?)

英語の表現も2通りありますね。日本語ではどちらのケースも「見る」でも「観る」でも良いような気がします 私は「鑑賞・観劇」という観点から「観る」を使用します

著者は「自由な時間が比較的多く取れる定年後の趣味には、手っ取り早く気軽に楽しめる映画はお薦めである」と語っていますが、まさにその通りだと思います そのための手引きとして本書は最適の手引書になると思います どんな映画が紹介されているか? 自分は何本観たことがあるか? 書店で本書を手に取ってお確かめください

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濱口竜介監督「偶然と想像」を観る ~ 「魔法(よりもっと不確か)」「扉は開けたままで」「もう一度」の3つの物語からなるオムニバス:シューマン「子どもの情景」がテーマ音楽

2022年08月18日 07時13分22秒 | 日記

18日(木)。わが家に来てから今日で2776日目を迎え、AP通信によると、米西部ワイオミング州で16日、11月の中間選挙に向けて共和党の候補者を絞り込む連邦下院選予備選の投開票があり、トランプ前大統領の党内の政敵として象徴的存在である現職のリズ・チェイニー氏が、トランプ氏が推す弁護士のハリエット・ヘイグマン氏に敗れ、トランプ氏の影響力の大きさが改めて浮き彫りになった  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     トランプは公文書秘匿で訴追されるだろうに 共和党員はどこまで阿呆ぞろいなんだ

 

         

 

昨日、夕食に「真鱈のムニエル」「生野菜とアボカドのサラダ」「白舞茸の味噌汁」を作り、「マグロとイカの刺身」と一緒にいただきました ムニエルはとても美味しかったです

 

     

 

         

 

ギンレイホールで濱口竜介監督による2021年製作映画「偶然と想像」(121分)を観ました この作品は濱口監督による3編から成る初の短編オムニバスです

濱口竜介監督と言えば、2020年のベネチア国際映画祭で、共同脚本を手掛けた「スパイの妻」が銀獅子賞(監督賞)を受賞、2021年のカンヌ映画祭では「ドライブ・マイ・カー」が脚本賞など4冠に輝き、この「偶然と想像」が第71回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞するなど、世界の映画界が最も注目される監督の一人となっています

 

   

 

第1話「魔法(よりもっと不確か)」

撮影帰りのタクシーの中で、モデルの芽衣子(古川琴音)は、仲の良いヘアメイクのつぐみ(玄理)から、彼女が最近会った気になる男性(中島歩)の話を聞かされる 芽衣子は話の途中でその男性が2年前に別れた元カレ・和明(中島歩)だと気づく つぐみが先に下車したあと、ひとり車内に残った芽衣子は運転手にある場所に行くよう伝える。そこにいたのは和明だった。芽衣子はつぐみの話から和明がまだ自分に未練があると確信し、和明にどっちを取るかと揺さぶりをかける

⇒ こういう偶然はあり得るのではないか、と思います 世の中、誰が誰とどう繋がっているか表面的には分からないものです    Facebookだって完璧ではありません 内緒話のはずが全部バレていたなんてことにならないように、お互いに気を付けたいものです それにしても、芽衣子は怖い 

第2話「扉は開けたままで」

50代にして芥川賞を受賞した大学教授の瀬川(渋川清彦)は、出席日数の足りないゼミ生・佐々木(甲斐翔真)の単位取得を認めず、佐々木の就職内定は取り消しになった 逆恨みした彼は、同級生で人妻の奈緒(森郁月)に色仕掛けの共謀を持ちかけ、瀬川にスキャンダルを起こさせようとする。研究室で奈緒は瀬川の作品の濡れ場シーンを朗読し、瀬川とのやり取りを含めて録音するが、瀬川は色仕掛けに乗らず、奈緒の声がきれいだと誉め、逆に声を聴きたいから録音データを研究室あてに送るよう依頼する しかし、奈緒は送信の宛名をsegawaではなくsagawaとしたことから大学内にバレ、大問題になる

⇒ タイトルの「扉は開けたままで」は、瀬川教授が常に研究室の扉を開けっぱなしにして、オープン・マインドな姿勢をアピールしていることから付けられています したがって、奈緒が濡れ場シーンを朗読している間も、声が廊下に駄々洩れ状態になっていたわけで、これでは色仕掛けもうまくいくわけがありません 結局、瀬川教授はこの事件が元で退職し、奈緒は離婚を余儀なくされます 数年後、バスで出版社に就職した佐々木に再会した奈緒は、新しい名刺を渡し、別れ際に彼の唇を奪ってバスを降ります この行動は、尊敬する瀬川教授と自分を不幸に陥れるきっかけを作った佐々木に対する復讐の狼煙ではないか、と想像します

第3話「もう一度」

高校の同窓会に参加するため20年ぶりに仙台にやってきた夏子(占部房子)は、仙台駅のエスカレーターで あや(河合青葉)とすれ違う 2人はお互いを見返し、あわてて駆け寄る。あやの自宅に招かれた夏子は、久しぶりの再会に興奮を隠しきれず話し込むが、途中から会話がすれ違っていくことに気付く   あらためてお互いに名前を名乗ると全くの他人であることが分かる しかし、あやは 本当のあやに成り切って芝居をすると提案する

⇒ 時間は残酷です。20年という時間経過で人は等しく歳を取ります 面影を残す人もいれば、まったく別人のように変わってしまう人もいます 夏子は、出会った彼女に昔の面影を見い出したのだと思います この作品のポイントは、お互いに別人だと気づいてからの2人の関係にあると思います 相手の女性が”想像力”を働かせて本物の あや に成り切って会話を始めたことをきっかけに、夏子も20年前に言うべきことを言えずに別れた あや への想いを素直に表すことができたのだと思います 20年ぶり、30年ぶりの同窓会に出席する時は、まず自分の名前を名乗り、相手の名前を確かめましょう

全3話に共通しているのは「会話」の力です 芽衣子とつぐみの会話、瀬川と奈緒の会話、夏子とあやの会話・・・すべてが、会話に魅力を感じます

ところで この映画では、シューマンの「子どもの情景」の第1曲「見知らぬ国の人々について」がテーマ曲のように使われ、第7曲「トロイメライ」が間奏曲のように使われています この映画の場合、ショパンでもだめだし、モーツアルトでもだめで、シューマンの「子どもの情景」がピッタリくるように思います 濱口監督の音楽センスの良さを感じます

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ユライ・ヴァルチュハ ✕ 読響 ✕ 河村尚子のブラームス「ピアノ協奏曲第1番」他のチケットを入手 / 杉田協士監督「春原さんのうた」を観る ~ ギンレイホール

2022年08月17日 07時14分37秒 | 日記

17日(水)。8月28日(日)午後2時から東京芸術劇場で開かれる「読売日響第249回マチネーシリーズ」のチケットを入手しました これは時々コンサートでお目にかかる川崎市在住のS氏から実費で譲り受けたものです プログラムは①ブラームス「ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 作品15」、②メンデルスゾーン「交響曲第3番 イ短調 作品56 ”スコットランド” 」です   演奏は①のピアノ独奏=河村尚子、指揮=ユライ・ヴァルチュハです

 

     

 

ということで、わが家に来てから今日で2775日目を迎え、大阪府の小学校で、旧統一教会系の関連団体CARPが17年前から科学実験の講座を開いていたことが分かり、学校側は講座を止める方針である  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     正体を隠して接近し 知らぬ間に洗脳するのが旧統一教会のやり口だ 気を付けよう

 

         

 

昨日、夕食に「ビーフカレー」と「生野菜と小海老とアボカドのサラダ」を作りました ビーフはブロックでなくバラ肉切り落としです 久しぶりに作りましたが美味しく出来ました

 

     

 

         

 

昨日、神楽坂のギンレイホールで杉田協士監督による2021年製作映画「春原さんのうた」(120分)を観ました

「映画.com」の解説によるとこの映画は、作家・歌人の東直子の第1歌集「春原さんのリコーダー」の表題歌「転居先不明の判を見つめつつ春原さんの吹くリコーダー」をもとに、喪失感を抱える女性がささやかな暮らしを続ける姿を映し出した作品で、物語は「24歳の沙知(荒木知佳)は美術館での仕事を辞め、カフェでアルバイトを始める    常連客から勧められたアパートの部屋で新しい生活をスタートさせたが、もう会うことの叶わないパートナーの姿が残っていた」という内容となっています

しかし、そのパートナーとは誰でどういう関係だったのか、また、次々と登場する人たちは紗知とどういう関係なのかが全く分からないのです 終盤になってやっと、宛先不明で戻って来た春原さんあてのハガキが出てくるので、パートナーとは春原さんだったと分かります しかも、その人は、時々顔が映し出される女性のようです

 

     

 

この映画は主人公の日常生活を淡々と静かに映し出しているのが特徴で、「静」か「動」かと問われれば「静」の映画です 静的な主人公が一瞬 動的に変貌するシーンが一つだけあります 客に頼まれてカフェの2階で、太い筆に墨を含ませて大きな紙に「風林火山」という文字を紙幅いっぱいに力強く書くシーンです このとき沙知は過去の悲しい思い出を吹っ切るキッカケを掴んだのではないかと思います

映画を観ていて気が付くのは、コロナ禍での撮影ということで登場人物の多くがマスクをしていること、物を食べるシーン(食事やおやつ)が多いこと、人を写メするシーンが多いことです 登場人物がやたらと写真を撮りたがるのはなぜだろうと思ってしまいます

沙知を演じた荒木知佳は、静かでふんわりとした感じで、ナイーブな主人公にピッタリだと思いました

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キウィ・チョウ監督「時代革命」を観る ~ 2019年、民主化を求めてデモを繰り広げる香港の若者たちを追った迫真のドキュメンタリー映画:ユーロスペース

2022年08月16日 07時13分03秒 | 日記

16日(火)。わが家に来てから今日で2774日目を迎え、北朝鮮の対南宣伝サイト「わが民族同士」によると、北朝鮮の朝鮮アジア太平洋平和委員会は13日、統一教会(現世界平和統一家庭連合)の創設者、文鮮明氏の死去から10年を前に 文氏と遺族に弔電を送ったが、文氏は1991年11月末に訪朝し金日成主席と会談、離散家族捜索事業の推進や統一教会グループによる北朝鮮での経済事業支援展開などで合意していた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     「経済事業支援」の資金源は 日本で霊感商法で搾取した献金だ 北朝鮮よ お前もか!

 

         

 

昨日、夕食に「サーロインステーキ」「卵スープ」を作りました 野菜類はワンプレートに収めました。ステーキはレアに焼けて美味しかったです

 

     

 

         

 

昨日、渋谷のユーロスペースでキウィ・チョウ監督による2021年製作香港映画「時代革命」(158分)を観ました ユーロスペースで映画を観るのは3日連続です

2019年、中国当局の締め付けにより自由が失われてゆく香港で、民主化を求める大規模デモが起きた デモの発端は、犯罪容疑者の中国本土引き渡しを可能にする「逃亡犯条例改正案」が立法会に提出されたことだった 参加者たちは同案の完全撤回や普通選挙の導入などを5大要求として掲げ、6月16日には香港の人口の約3割を占める約200万人にまでデモ参加者が膨れ上がったと言われる デモ参加者には10代~30代の男女が目立ったが、70代の男性の姿も見られた。映画では、警察との衝突が激しさを増していく最前線の様子を中心に、中核的な組織体やリーダー不在の運動ながらもSNSを駆使して機動的に統制されていく実態が明らかにされていく 立法会、地下鉄駅、香港中文大学、香港理工大学など各地のデモの様子を約180日間にわたって記録し、大きな運動のウネリを多面的に描き出す 運動が激化するにつれ、逮捕者が増え、香港を離れる人も増えていく 民主化運動は「逃亡犯条例改正案」の撤回を勝ち取ったものの、2020年夏には、中国当局の意向を踏まえ、より強圧的な「香港国家安全維持法」が施行され、自由への制限・圧迫はますます強まっていく 当局は新型コロナウイルス感染症拡大を理由にデモを禁止し、言論・表現の自由は封じられる

 

     

 

この映画を観て印象的なシーンがいくつかあります。その一つは、立法会占拠のシーンです 急進派の学生たちが立法会の建物に突入して占拠した後、警官隊が逮捕に来るという情報が流れます 彼らは最後まで立て籠って警察に抵抗しようとしますが、穏健派の学生たちが建物に入り、引き上げるよう説得します 女子学生に「(これから警官隊が来るかもしれないときに)建物の中に入るのは怖くないか」と問うと、彼女は「中に4人の仲間がいます。その4人が(警察に連れていかれて)いなくなる方が怖いです」と答え、入っていきます その様子はSNSを通じて仲間たちに発信されますが、急進派の一人は後で彼女の言葉を知り涙が出た、と語ります 彼らにはお互いに思いやる心がある、と思わされるシーンです

2つ目は、警官隊に追われる時のデモ隊の鮮やかな逃走シーンです ブルース・リーの武術哲学と言われる「水のように」逃げていきます デモ参加者はスマホで連絡を取り合って集合し、「光復香港、時代革命」「香港人、加油(がんばれ)」と叫びながらデモを続け、警官隊に追われると「水のように」飛散していきます ドローンで上空から撮影されたデモ隊の逃走の様子はまるで水が四散してビルの谷間に流れて消えていくように見えます

3つ目は、最後のクレジットです 監督の名前でも製作者の名前でもなく「香港人作品」と表示されます これは、本作が一監督の作品ではなく、一人ひとりは「無名」だが、香港人が力を合わせて製作した「香港人の魂がこもった作品である」という意味が込められていると思います

それにしても酷すぎると思うのは警官隊の非情な暴力です 無抵抗な人々を数人で囲んで容赦なく警棒で殴る 報道陣にも襲い掛かり、最も酷いのは報道陣の目の前で若者を銃殺してしまう ところが、彼らは権力側の人間なので裁判にかけられても何の罪も問われません

2時間38分に及ぶこの映画でチョウ監督が一番言いたいことは何か? この映画の核心は何か? と考えるに、私は「香港と台湾を完全に吸収して一つの中国を完成させることにより、習近平の名が毛沢東らと並ぶ偉大な人物として歴史に残るようにするため、香港は犠牲にされている 次は台湾だ」ということではないか、と思います

周知の通り、香港は1997年7月1日に英国から中国に返還されましたが、中国はそれから50年間は「一国二制度」の元、香港に高度な自治を認めると約束していました しかし、習近平政権は上記の目的のため、その約束を反故にし、香港傀儡政権のもと「香港国家安全維持法」を根拠に香港人の言論・行動の自由を奪っているのです 中国共産党の強国路線・覇権主義は留まるところを知らず、次は台湾に向かい、尖閣列島、重要な海上輸送路である南シナ海に及ぶ可能性が高いと思います この映画を注意深く観ると、香港問題は日本にとって決して他人事ではないことが分かります

8月11日の朝日新聞朝刊「ひと」欄でキゥイ・チョウ監督が取り上げられています 超略すると次の通りです

「当局が放つ催涙弾やゴム弾を浴びながらカメラを構えた 『香港の自由を守るため、何ができるのか。映画人なら、大きな事件と一人一人の思いを映画に記録することだと思いました』と語る 中国という国家の安全に危害を与えることを禁じる香港国家安全維持法では、『革命』などの言葉を発することすら逮捕の理由になりうる この作品は、タイトルだけでも問題視されかねない 香港の劇場では公開できない。それでもスタッフでただ一人名前を明かす 『危険を承知で撮影や取材に応じてくれた人たちの思いを世界に伝える責任があります』。香港には家族と残る覚悟だ。東京、仏・カンヌの映画祭や台湾などで上映された。『映画館で見られる皆さんがうらやましい。今ある自由を大切にしてほしい』」

チョウ監督はよくこの映画を撮ってくれたと思います 命がけの覚悟がなければ実現不可能だったでしょう 彼の強い責任感と不屈の意思を無駄にしないためにも、彼の言葉を重く受け止めなければならないと思うと同時に、一人でも多くの人に観てほしいと思います

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ユライ・ムラヴェツJr.監督「ウクライナから平和を叫ぶ Peace to You All」を観る ~ ウクライナ側と親ロシア派側 双方からの証言を記録したドキュメンタリー:ユーロスペース

2022年08月15日 07時20分16秒 | 日記

15日(月)。わが家に来てから今日で2773日目を迎え、トランプ前米大統領が大統領退任時に機密文書を持ち出したとされる疑惑に関連して、米連邦捜査局(FBI)がトランプ氏の自宅を捜査したことを巡り、米紙ニューヨークタイムズは13日、トランプ氏の弁護士が今年6月、自宅にある機密文書をすべて政府に返却したとの書面に署名していたと報じたが、FBIはトランプ氏側がこの誓約に反し、機密文書がまだ自宅に残っていたことから強制捜査に踏み切った可能性がある  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     悪智恵の働くトランプのことだから 機密文書をメルカリに出品しようとしてたかも

 

         

 

昨日、渋谷のユーロスペースでユライ・ムラヴェツJr.監督による2016年製作スロバキア映画「ウクライナから平和を叫ぶ Peace to You All」(67分)を観ました

この映画は、2010年から旧ソ連の国々を取材してきたスロバキアの写真家ユライ・ムラヴェツJr.が2015年にウクライナ入りし、親ロシアのドネツク側とウクライナ側の両方の生の声を記録したもので、2022年2月のロシアのウクライナ侵攻の背景に迫るドキュメンタリーです

2013年9月、当時の親ロシア派のウクライナ大統領・ヤヌコーヴィチが欧州連合との連合契約に署名しなかったことから、親欧米派の野党や大統領の汚職を批判する市民による大規模な反政府デモ(ユーロマイダン)が勃発し、翌年、ヤヌコーヴィチ大統領は国外に逃亡、親欧米派の政権が樹立された その後、ロシアによりクリミア半島が併合され、分離主義勢力によって14年4月にドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国の独立が宣言された 15年4月に分離主義勢力が支配する東部のドネツクに向かったユライ・ムラベツJr.は、人々に取材を敢行する ドネツク側では、戦場に参加した鉱夫と参加しなかった鉱夫、ウクライナ兵にスパイと間違えられて拘束された男性、「プーチンに助けてほしい」と訴える高齢女性などの声を聞く 16年2月、入国禁止ジャーナリストとして登録されたことでドネツクに入れなくなったムラベツは、ウクライナ支配下の村や紛争の最前線マリウポリでウクライナ側の人々への取材を開始し、ウクライナ軍の大佐、手榴弾で手足を失った退役軍人、老女や少女、ホームレスの男性など、幅広い証言を拾い集める ドネツク側とウクライナ側、双方の証言を集め、当時の記憶を辿ることで紛争の本質や、人が戦争を繰り返す理由を問いただしていく

 

     

 

この映画を観ると、今年2月にロシアがウクライナに侵略する8年も前からウクライナの東部地区でウクライナ軍と親ロシア派の間で紛争が続いていたことがハッキリと分かります

ウクライナ側と親ロシア派、双方の様々な立場の人々の証言を聞くと、「誰も戦争を望んでいないし、常に犠牲になっているのは一般市民である」ことがあらためて浮かび上がってきます 市民の立場から言わせれば「いったい何のための、誰のための戦争なのか?」ということです 「なぜ、この戦争が起こったのか?」という問いに、ウクライナ軍の大佐は「歴史を学んでこなかったからだ」と答えます しかし、どこの国にも自国の「歴史」の授業はあるでしょう。問題はどういう教え方をするかです。一つの出来事は見方によって事実は異なりますが、真実は一つです なぜ戦争が起こったのかは「確かに事実としての歴史を学んだが、真実の歴史に学んでこなかった」からではないかと思います

この映画がドキュメンタリーとして説得力を持っているのは、ウクライナ側と親ロシア派の双方の住民から平等に「声」を聞いているところです これが片方だけの声だけなら「プロパガンダ」に過ぎません 異なる立場の意見を取材し報道するーこれがジャーナリズムの根本精神です

ところで、この映画を観終わって頭に浮かんだ疑問は、ロシアがウクライナに侵略する前にゼレンスキー大統領が「国内問題」として東部地区の紛争を終わらせることが出来なかったのか、ということです

しかし、これは実際には難しかったようです この日(14日)の朝日朝刊「The  GLOBE」が「プーチン  戦争への道」という特集を組んでいますが、概要次のように書かれています

「2019年12月9日、4か国首脳会議(フランス、ドイツ、ウクライナ、ロシア)がパリで開かれた この会議は2014年に始まったウクライナ東部の紛争の和平プロセスについて話し合うものだが、この時初めて、半年前に大統領に就任したゼレンスキーがプーチンと顔を合わせた。ゼレンスキーはロシア語を話す地域(クリビーリフ)の出身であることから、ウクライナ語ではなくわざわざロシア語でプーチンに話し合いを仕向け、ロシア側が突き付けた条件を丸のみにした しかし、ゼレンスキーの対話路線はプーチンを動かすことはできず、首脳会議では兵力引き離しや4か月後の会議の再開には応じなかった 7か月後に完全停戦の措置が決まったが、プーチンは翌21年に軍をウクライナ国境に集結させ、米国に、ウクライナを北大西洋条約機構(NATO)に加盟させないと確約するよう要求を突き付けた そして今年、侵攻前日の2月23日夜、ゼレンスキーは演説でプーチンに電話協議を申し入れたが拒否されたと明かした

この時、プーチンは「ウクライナは1991年のソ連崩壊で歴史の必然性なく独立し、欧米の手先となってロシアに脅威をもたらしている」という強迫観念で頭がいっぱいになっていたのです

ロシアの武力侵略によりウクライナから国外に避難した国民は1000万人を超えると言われ、国内避難民も数百万人になると言われています まさか21世紀にこのような戦争犯罪が起ころうとは誰が予想できたでしょうか    いったいいつこの戦争は終わるのか・・・残念ながら、歴史に学ばない人間がトップにいる限り終わらないように思います

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オーケストラの楽団員数 / チャン・ジーウン監督「Blue Island 憂鬱乃島」を観る ~ 香港で自由を求めて闘った人々の姿を描いたドキュメンタリー:ユーロスペース

2022年08月14日 07時01分40秒 | 日記

14日(日)。在京を中心とする各オーケストラはいつ創立され、何人の楽団員がいるのか? 「フェスタサマーミューザ」に参加したオーケストラのプログラムに掲載された「出演者プロフィール」を元に調べてみました 楽団員が多い順に次の通りです

①東京フィルハーモニー  1911年創立:160人

②NHK交響楽団      1926年創立:114人

③読売日本交響楽団    1962年創立:100人

④東京都交響楽団     1964年創立: 94人

⑤新日本フィルハーモニー 1972年創立: 90人

⑥東京交響楽団      1946年創立: 83人

⑦日本フィルハーモニー  1956年創立: 80人

⑧大阪フィルハーモニー  1947年創立: 64人

⑨神奈川フィルハーモニー 1970年創立: 61人

⑩東京シティ・フィル   1975年創立: 60人

上記の通り、楽団員数が最も多いのは東京フィルハーモニーの160人ですが、これは2001年に「新星日本交響楽団」と合併したことにより一気に拡大したものです 東京フィルは「新国立オペラ」のオーケストラ・ピットに入りますが、同じ日に別の会場でコンサートを開いていることもあります これは160人の楽団員が2つに分かれて出演しているから可能なのです

なお、楽団員数が少ないからといって、演奏水準が低いかと言えば、決してそうではありません ここ数年の東京シティ・フィルの躍進ぶりがそれを証明しています

ということで、わが家に来てから今日で2772日目を迎え、米フロリダ州の連邦地裁は12日、連邦捜査局(FBI)がトランプ前大統領の自宅を捜査した際の、捜査令状と押収品リストを開示したが、「トップシークレット(最高機密)」を含む11組の機密文書などが押収され、特に防衛機密に関わる文書に司法当局が関心を寄せていたことが判明した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     防衛に関する最高機密文書を私物化するなど 大統領がやることではない 恥を知れ!

     

         

 

昨日、渋谷のユーロスペースでチャン・ジーウン監督による2022年製作 香港・日本合作映画「Blue Island 憂鬱乃島」(97分)を観ました   

この映画は香港市民の自由が急速に縮小していく中で、時代を超えて自由を守るために闘う人々の姿をドキュメンタリーと再現ドラマによって鮮明に描き出した作品です

中国は20世紀後半には文化大革命(1966~1976)、六七暴動(1967)、天安門事件(1989)と、世界に大きな波紋を広げた様々な事件に遭遇してきました   その後、1997年7月1日、香港は英国から中国へ返還されましたが、「一国二制度」のもと「50年不変」とされた高度な自治の約束は踏みにじられていきます これに対し、2014年には香港の若者たちが自由を求めて立ち上がり「雨傘運動」を展開しました そして、2019年6月には「逃亡犯条例改正案の完全撤回」「普通選挙の導入」を求める大規模デモが繰り広げられました しかし、中国・習近平政権の支配下にある香港傀儡政権は市民を暴力で押さえつけ、権力に逆らうものは牢屋にぶち込む政策を取りました

 

     

 

この映画は、①天安門事件を経験して脱獄兵と自認する林、②文化大革命を逃れ恋人と共に命がけで海を渡り香港に辿り着いた陳、③反権力から経済人へ転身した石という、異なる時代を生きた実在の3人の人物を中心に、自由を守るために闘った人々の記憶をドキュメンタリーと再現ドラマによって丁寧に描いています

この映画に登場する人物の何人もの人々(学生、教師、議員、ユーチューバー等々)が、現実の世界で有罪判決を受け、ある者は現在も投獄され、自由を奪われています ある者は警官への暴力だったり、ある者は政府への批判的言動だったりしますが、とにかく政権に逆らう者は暴力で従わせ牢屋にぶち込むというのが中国傀儡政権である香港政府のやり方です 映画はその本質を捉えています

この映画を観て一番印象的だったのは、暴動罪で逮捕・起訴された社会福祉学科の学生レイモンド・ヤンを主役とする再現ドラマです 最初のシーンは英国支配下の香港で、反政府的な態度を取って尋問を受けるヤンに対し、英国側の人物が「英国に逆らわず、英国人として生きよ」と言うと、彼は「自分は中国を愛している。自分は中国人だ」と答えます その次のシーンは中国傀儡政権下の香港で、反政府的な態度を取って尋問を受けるヤンに対し、政府側の人物が「中国に逆らわず、中国人として生きよ」と言うと、彼は「私は香港を愛している。私は香港人だ」と答えます これを観て、現在の多くの香港市民は中国人というよりも香港人として生きることに誇りを持っているのだな、と思いました

また、別のシーンで、「どこまでも信念を貫いて、香港を捨てず ずっと留まることが出来るか?」と問いかけられて、返事がないまま画面が切り替わる場面がありますが、これも印象的です   この日(13日)の朝日朝刊 国際面に「香港の人口 減少幅が最大 1年で12万人 ~ 統制強化 移民が急増」という見出しの記事が載っていました    記事を要約すると次の通りです

「香港政府が11日に発表した統計によると、6月末時点の人口は729万1600人で、1年前から約12万人(1.6%)減少した 1997年の英国から中国への返還以来、最大の人口減となった 中国共産党の統制強化で、移民が急増したことが響いた 香港では2020年に「香港国家安全維持法」が施行され、当局による言論弾圧や民主派の逮捕が続いた 人口は香港返還時の約650万人から増え続けていたが、19年の750万人をピークに減少に転じた。今年6月末までの3年間の合計では約21万6千人減少した

この傾向はまだまだ続くのではないか、と懸念されます

中国の習近平国家主席は、「偉大なる中華民族の復興」を最大目標として、強国・覇権主義路線をひた走っています アメリカを中心とする民主主義よりも中国の社会主義の方が優れているというイデオロギーを前面に出して、政治・経済・軍事等のあらゆる面で世界一を目指しています それが時に日本をはじめ周辺諸国との摩擦を引き起こしています 香港の次は台湾が危ないというのは世界の共通認識です 「大国」を装う「中国」はどこへ向かうのか・・・香港をテーマにした本作を観ながら、そんなことを思いました

本作は多くの人々のクラウドファンディングにより製作されています エンドロールで協力者の名前が流れますが、日本人の名前が本名であったりニックネームだったりするのに対し、香港人と思われる人たちの多くが「無名」という表記で出てくるのが印象的です 間違いなく本作は中国本土でも香港でも上映されないであろうことは容易に想像できますが、それでも「匿名」にしなければならない事情があるということに恐ろしさを感じます

エンドロールが終わって、席を立とうとしたら、スクリーンにチャン・ジーウン監督が映し出され、この映画が上映されるまでの経緯を語り、製作に協力してくれた日本の人々へのお礼を述べ、最後に「この映画が香港で上映されることはないと思うが、日本では一人でも多くの人に観てほしい」と訴えました この映画を観たからといって、香港に自由な社会が戻るわけではありませんが、現在香港が置かれている現状を知ることは同じアジアに暮らす日本のわれわれにとって意義のあることだと思います 一人でも多くの人に観てほしい映画です。お薦めします

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高関健 ✕ 東京シティ・フィルでマーラー「交響曲第7番ホ短調”夜の歌”」他を聴く ~ 第50回サントリー音楽賞受賞記念コンサート

2022年08月13日 07時10分55秒 | 日記

13日(土)。山形県鶴岡市に単身赴任している息子が、コロナによる自粛でお盆休みに帰省しない代わりに、ということでコーヒー豆を送ってくれました 息子の説明によると、発酵させる時に果物とワイン酵母を加えてフルーツの香りを付けたコーヒーだそうです。朝の楽しみが増えました

 

     

 

ということで、わが家に来てから今日で2771日目を迎え、韓国の旧・統一教会(世界平和統一家庭連合)がソウルで国際会議を開催し、世界各国の著名人が出席したが、アメリカのトランプ前大統領がビデオメッセージを送ったほか、安倍元首相に対する追悼の時間も取られた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     これで旧統一教会・阿部元首相・トランプ前大統領の関係が浮き彫りにされるよね

 

         

 

昨日、夕食に「豚肉の生姜焼き」「生野菜とツナとタコのサラダ」「ダイコンの味噌汁」を作りました 夏は生姜焼きが美味しいですね

 

     

 

         

 

昨夜、サントリーホールで「高関健 第50回サントリー音楽賞受賞記念コンサート」を聴きました     プログラムは①ノーノ「『2)進むべき道はない、だが進まねばならない・・・アンドレ・タルコフスキー』7つのグループのための」、②マーラー「交響曲第7番 ホ短調 ”夜の歌”」です 演奏は東京シティ・フィル、指揮は高関健です

 

     

 

会場は7~8割の入りでしょうか 自席は1階13列17番、センターブロック左から2つ目です

1曲目はノーノ「『2)進むべき道はない、だが進まねばならない・・・アンドレ・タルコフスキー』7つのグループのための」です この曲はサントリーホール国際作曲委嘱シリーズNo.8委嘱作品で、1987年11月28日に高関健指揮東京都交響楽団により初演されました

開演に当たり、高関氏が曲目解説をしましたが、それによると、オケは本体のほかに6か所(2階の正面と左右、奥の左右と中央)にバンダ(別働隊)が配置され、観客は音に囲まれて音楽に耳を傾けることになります 「何の予告もなく突然大きな音がするので、近くの席の人は気を付けてください」と注意がありました

ステージ上のオケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという並び。コンマスは名古屋フィル客演コンマス、藝大フィルハーモニアのソロ・コンマスを務める植村太郎氏です 各セクションを見渡すと、ヴィオラのトップに広島交響楽団首席の安保惠麻さんが客演し、チェロ トップの2人の男性も客演奏者です これは最近の東京シティ・フィルの超過密スケジュールの影響と思われます

高関氏の指揮で演奏に入ります。曲はひたすら雅楽のようなピアニッシモの音が会場のあちこちから聴こえてきて、時々突然爆音が轟いて、寝入りの聴衆を叩き起こします いい夢を見ていた人にはノーノではなくオーノーでしょう その昔、4チャンネルステレオというサラウンド効果を狙ったオーディオ装置が流行った時期がありましたが、この曲は7チャンネルステレオのサラウンド効果を狙った音楽とでも言うべきものです 高関氏は前を向いて指揮をしたり、後ろを振り返って指揮をしたりと八面六臂の活躍でした

 

     

 

プログラム後半はマーラー「交響曲第7番 ホ短調 ”夜の歌” 」です この曲はグスタフ・マーラー(1860ー1911)が1904年から1906年にかけて作曲、1908年にプラハで初演されました 第1楽章「ラングサム ~ アレグロ・リソルート、マ・ノン・トロッポ」、第2楽章「ナハトムジーク:アレグロ・モデラート」、第3楽章「スケルツォ(影のように)~流れるように、しかし速すぎず」、第4楽章「ナハトムジーク:アンダンテ・アモローソ」、第5楽章「ロンド・フィナーレ」の5楽章から成ります

マーラーは交響曲第2番~第4番の3曲を声楽を伴った作品として作曲、第5番~第7番の3曲を純器楽曲として作曲しました マーラーとしてはここで一区切りしたのでしょう 次の第8番は声楽入りとなっています

オケは14型で左から第1ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、第2ヴァイオリン、その後ろにコントラバスという対抗配置に変更されます

高関氏の指揮で第1楽章に入ります 冒頭、テノールホルンによる序奏で開始されますが、この音がとてつもなく大きく聴こえました 演奏自体がそのような力演だったのか、壁に反射して音が増大する会場特性によるものなのかは分かりませんが、まるで拡声器で音を拡大しているかのように聴こえました 弦楽セクションがキレッキレの演奏を展開しました 第2楽章では、ホルンが朗々と歌うなか、舞台裏でカウベルが長閑に鳴らされるシーンがとても心地よく聴けました 「夏休み作曲家」マーラーはこういう自然の中で第5番から第7番までの交響曲を作曲したんだろうな、と想像して思わずほくそ笑みました 第3楽章のスケルツォはヴィオラの安保さんの演奏に象徴されるように、終始グロテスクな音楽が展開しました 第4楽章ではコンマス植村氏のヴァイオリン・ソロが素晴らしかった この楽章ではマンドリンとギターが演奏されます。夜曲=セレナーデだからマンドリンでありギターだというのは理解できるものの、楽器の特性から音が小さいのでオーケストラの中では、音が消されてしまいやすい欠点があります マーラーはなぜマンドリンとギターを採り入れたのか? 非常に疑問に思います 第5楽章は一転、「今までの『夜の世界』はチャラね」とでもいうようなノー天気で楽天的な音楽が展開します まるで「終わり良ければ総て良し」とでもいうようなフィナーレです この辺がマーラーが分かりにくい原因になっているのかもしれません

高関氏は緻密な曲目分析を元に、長い曲を弛緩することなくまとめ上げ、スケールの大きなマーラー像を描きました

終演後のカーテンコールでは、会場のそこかしこでスタンディングオベーションが見られ、会場を出たのは21時20分を回っていました

 

     

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原田慶太楼 ✕ 岡本誠司 ✕ 東京交響楽団でコルンゴルト「ヴァイオリン協奏曲」、プロコフィエフ:バレエ音楽「ロメオとジュリエット」組曲(抜粋)他を聴く

2022年08月12日 07時09分02秒 | 日記

12日(金)。わが家に来てから今日で2770日目を迎え、北朝鮮国営の朝鮮中央通信は11日、全国非常防疫統括会議が10日に平壌で開かれたと報じ、金正恩朝鮮労働党総書記が、新型コロナウイルスを撲滅し、最大非常防疫戦で勝利したことを宣言したが、金正恩氏の妹・金与正党副部長も出席し、金正恩氏について「高熱の中、ひどく患いながらも、自身が最後まで責任を負わなければいけない人民たちを考えて一瞬も横になれなかった元帥様」と言及し、金正恩氏自身も新型コロナに感染し、回復した可能性を示唆した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     最初は感染者ゼロとか言って自慢してたけど 結局は元帥様もコロナに感染したのね

 

         

 

昨日、夕食に「筑前煮」「生野菜とアボカドと小海老のサラダ」「冷奴」「もやしの味噌汁」を作り、キュウリの浅漬けと一緒に食べました デザートは今年初の巨峰です(小粒ですが)。筑前煮はフライパンで作りましたが、とても美味しく出来ました

 

     

 

         

 

昨日、ミューザ川崎で「フェスタサマーミューザ 東京交響楽団 フィナーレコンサート 故郷はシェイクスピア、そして映画」を聴きました プログラムは①コルンゴルト:組曲「から騒ぎ」より「序曲」「花嫁の部屋の乙女」「ドグベリーとヴァージェス」「間奏曲」「仮面舞踏会(ホーンパイプ)」、②同「ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35」、④武満徹:3つの映画音楽 ~ 映画「ホゼー・トレス」から「訓練と休憩の音楽」、映画「黒い雨」から「葬送の音楽」、映画「他人の顔」から「ワルツ」、④プロコフィエフ:バレエ音楽「ロメオとジュリエット」組曲から「情景」「少女ジュリエット」「モンタギュー家とキャピュレット家」「仮面」「ロメオとジュリエット」「タイボルトの死」「ジュリエットの死」です 演奏は②のヴァイオリン独奏=岡本誠司、指揮=原田慶太楼です

 

     

 

フィナーレコンサートということでか、満席まではいかないものの結構な客入りです

オーケストラ公演(全11回)を同じ席で聴いてきましたが、1C8列14番の席ともこの日を最後にお別れです

弦楽器奏者が配置に着きます 左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンの対抗配置ですが各2本という小規模編成です 上手にハープとハーモニウムが控えます。コンマスは水谷晃です

1曲目はコルンゴルト:組曲「から騒ぎ」より「序曲」「花嫁の部屋の乙女」「ドグベリーとヴァージェス」「間奏曲:庭の情景」「仮面舞踏会(ホーンパイプ)」です この曲はオーストリアの作曲家エーリヒ・ウォルフガング・コルンゴルト(1897ー1957)がシェイクスピアの同名の劇を題材に1919年に作曲した作品です

コルンゴルトは、9歳で作曲したカンタータを聴いたマーラーが「天才だ!」と驚嘆したという神童でした ミドルネームがモーツアルトと同じことから「モーツアルトの再来」と讃えられました 「から騒ぎ」は、お互いに憎まれ口をばかりを叩き合う男女がやがて恋に落ちるという喜劇です

原田の指揮で演奏に入ります 「序曲」と最後の「仮面舞踏会」を中心に、文字通り「から騒ぎ」といった雰囲気の賑やかな音楽が展開しますが、「花嫁の部屋の乙女」「間奏曲」では、伊藤文嗣のチェロが抒情的な演奏を展開し聴衆を魅了しました

 

     

 

2曲目はコルンゴルト「ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35」です この曲は自身の4つの映画音楽を素材に1945年に作曲され、1947年12月15日にルイヴィルでヤッシャ・ハイフェッツの独奏により初演されました 第1楽章「モデラート・ノビレ」、第2楽章「ロマンツァ」、第3楽章「アレグロ・アッサイ・ヴィヴァーチェ」の3楽章から成ります

オケは12型となり、原田の指揮で第1楽章が開始されます 冒頭から独奏ヴァイオリンが入ってきますが、岡本は弱音重視なのか若干大人しくナイーブな印象を受けます もっと前面に出ても良いように思いました それでも演奏自体は柔軟性があり「最後のロマン派」を感じさせる豊饒な音楽づくりに徹していました それが一番感じられたのは第2楽章です。岡本はゆったりしたテンポでロマンティシズムの極致をいく演奏を繰り広げました 第3楽章に入ると一転、躍動感溢れる演奏を展開、オケとの丁々発止のやり取りでフィナーレになだれ込みました

満場の拍手に岡本はアンコールにクライスラー「レチタティーヴォとスケルツォ 作品6」を超絶技巧で演奏し、聴衆を黙らせました 演奏直前に、原田は舞台から飛び降り、コロナ感染対策のため空席になっている最前列の座席に陣取って耳を傾けていました ミューザの舞台は他のコンサートホールよりも高さが低いからこそ飛び降りることが出来るのです

ところで、この曲には思い出があります 今からン十年前の独身時代に、神保町のS楽器の2階にあったヤマハ・フルート教室に毎週水曜日夜、1年間通っていました 男女各3人のクラスでしたが、その中にW大学大学院に通うO君がいました 彼の専門は英国中世の美術史とかで、音楽も英国のクラシックを中心に聴いていました クラシック音楽という点で気が合い、休みの日に横浜にあるO君の家に遊びに行くことになりました 当時、お互いに1000枚以上のLPレコードを所有していましたが、驚いたことに共通して持っているレコードがほとんどないことが分かりました 彼が最も好きなアーノルド・バックスをはじめ、私の知らない作曲家のLPレコードがレコード・ラックを占有していました 彼が「この曲良いですよ」と言ってかけてくれたのがコルンゴルト「ヴァイオリン協奏曲」だったのです 初めて聴く曲でしたが、一度聴いただけですっかりその音楽の虜になり、また、灯台のサーチライトのような独特のデザインのLPジャケットにも惹かれました 翌日、彼に教えてもらった神保町のレコード・ショップ「バイロイト」(今はない)に行って、ウルフ・ヘルシャーのヴァイオリン独奏によるLPレコードを入手しました このレコードは、たった1000枚のレコードを持っているだけで、クラシック音楽は何でも分かると思い込んでいた私の傲慢な思いを見事に打ち砕きました 自分が知らない作曲家、知らない作品、知らない演奏家が世の中にいかに多く存在しているかをこのレコードを通して学んだのです もし、所有レコード1500枚の中から1枚だけ残してあとは全部捨てろと言われたら、このレコードを残すでしょう

 

     

 

プログラム後半の1曲目は武満徹:3つの映画音楽 です  映画「ホゼー・トレス」から「訓練と休憩の音楽」、映画「黒い雨」から「葬送の音楽」、映画「他人の顔」から「ワルツ」です 1995年にスイスで開かれた第1回グシュタード・シネミュージック・フェスティバルのテーマ作曲家となった武満が、音楽祭用に旧作の映画音楽からこの3曲を選んで、弦楽合奏のための組曲に仕立てたものです

オケは14型に拡大し、原田の指揮で演奏に入ります 第1曲「訓練と休憩の音楽」はジャズのイディオムを採り入れたノリノリの曲で、「武満ってこういう曲も作曲したのか」と意外に思いました 第2曲「葬送の音楽」は文字通り暗く重い音楽です 第3曲「ワルツ」はラヴェルばりノリのいい音楽で、思わず身体が揺れます いつかどこかで聴いた記憶があります

最後の曲はプロコフィエフ:バレエ音楽「ロメオとジュリエット」組曲から「情景」「少女ジュリエット」「モンタギュー家とキャピュレット家」「仮面」「ロメオとジュリエット」「タイボルトの死」「ジュリエットの死」です この曲はセルゲイ・プロコフィエフ(1891ー1953)が1935年から36年にかけて作曲、1938年に初演されました 第1組曲(7曲)、第2組曲(7曲)、第3組曲(6曲)がありますが、この日は全体から7曲が選ばれています

原田の指揮で「情景」の演奏に入りますが、福士マリ子のファゴットの演奏が素晴らしい 「少女ジュリエット」では吉野亜希菜のクラリネット、相澤政宏のフルートが冴えています 「仮面」では疾走する弦楽器が鮮やかです 「ロメオとジュリエット」では中盤での水谷コンマス、第2ヴァイオリン首席・清水、ヴィオラ首席・武生の三重奏が美しく響きました 原田は全曲を通して、メリハリの利いた指揮でドラマティックに仕上げていました

会場いっぱいの拍手に原田 ✕ 東響は、アンコールにプロコフィエフ:バレエ音楽「ロメオとジュリエット」組曲より「朝の踊り」をアグレッシブに演奏、19日間にわたる「フェスタサマーミューザ Kawasaki  2022」のフィナーレを飾りました

7月23日のオープニングコンサートから、ほぼ毎日のように通ったミューザ川崎ですが、この間 全13公演を聴きました 地元・巣鴨から川崎まで往復1000円弱の交通費がかかるのが最大の難点ですが、ミューザのコンサートホールはサントリーホールに次いで好きなホールなので、さほど痛い出費とは思いません 次にミューザに通うのは9月3日の「モーツアルト・マチネ」公演です 今より少しは涼しくなっているとよいのですが

 

     

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