人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ブレイディみかこ著「ジンセイハ、オンガクデアル」を読む ~ 英国における「底辺託児所」の問題児たちとの交流を通じて学んだこと

2022年08月07日 07時05分20秒 | 日記

7日(日)。昨日午前10時から地元の集会所で、マンションの管理組合の新体制による第1回理事会が開かれたので、理事長として出席しました 管理会社から111ページに及ぶ議案書が配布され、報告に基づいて審議しました われわれの任期は2年間ですが、最大のテーマは2度目の大規模修繕とそれに伴う管理費・修繕積立金の値上げです 次回から具体的に詰めていくことになりますが、責任重大です 部屋番号によるグループ分けに基づく理事会ですが、今回は理事・監事9名中6名の出席でした。欠席者からは委任状が提出されていますが、8年前のローテ時の経験からすると、欠席者の一人は「理事会は出席してもしなくても自由だ」と考えているようです この人、先日の定時総会に欠席の上、議決権行使書で「新役員選出の件」を含めたすべての議案に反対したくらいなので、順番が決まっていても役員にはなりたくないようです こうした「決まったことが守れない、義務意識のない住人」が理事会メンバーにいると、公平の観点から好ましくありません こういう身勝手な人はどこの世界にもいますよね 何か問題が起こった時に理事会を頼ってきても、助けてあげようという気持ちになれません

当事者意識を持ってもらい、出席率を高めるためにはどうしたらよいのか、悩ましいところです 国会議員選挙の投票率を上げるにはどうしたらよいか、という問題と似ていますね

ということで、わが家に来てから今日で2765日目を迎え、米南部テキサス州の裁判所の陪審は5日、児童ら26人が死亡した銃乱射事件を「やらせ」と主張して遺族らの名誉を傷つけたなどとして、トランプ前大統領と親しく陰謀論を掲げる政治評論家アレックス・ジョーンズ氏(48)に総額約4930万ドル(約66億5千万円)の損害賠償を命じる決定を下したと米メディアが伝えた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     トランプのお友達はロクな奴がいない  21年1月の米議事堂襲撃事件もヤラセか

 

         

 

ブレイディみかこ著「ジンセイハ、オンガクデアル」(ちくま文庫)を読み終わりました ブレイディみかこさんは1965年福岡市生まれ。ライター、コラムニスト。音楽好きが高じて渡英、1996年から英国ブライトン在住。著書に当ブログでもご紹介した「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」「花の命はノー・フューチャー」「ヨーロッパ・コーリング・リターンズ」など多数

 

     

 

本書は2013年11月にPヴァインから刊行された「アナキズム・イン・ザ・UK ー 壊れた英国とパンク保育士奮闘記」の後半の章を中心に収録、大幅に加筆したものです 第1章「『底辺託児所』シリーズ誕生」と第2章「映画評・書評・アルバム評」から構成されています

第1章は、貧困層の子どもたちが集まるいわゆる「底辺託児所」保育士時代のエッセイ集です 日本では考えられないような暴力的で破天荒な子供たちが登場しますが、その背景には英国の貧窮、移民差別、DVなどの問題が存在していることが分かります

4歳の狂暴児ジェイクは赤ん坊の足を踏んでは泣かせ、「なんでそんなことをするの?」と尋ねると「俺のすることに理由はない。理由のないことをするのは楽しい」などとアナキーなことを答え、いきなり私の髪をひっつかんで10本ほど引き抜いていった 5歳児のレオは椅子の背中に紐をくくりつけて赤ん坊の人形を逆さに吊るし、それをめがけて玩具のナイフを連投しながら「醜い禿頭の小人は永遠に地獄で殺され続けるのだ」などと呟きつつ、完全にイッてる目つきでへらへら笑っている 1歳児のデイジーは「Thank you と言ってごらん」「FUCK」「スナックの前は手を洗おう」「FUCK」「みんなとお絵描きしょっか」「FUCK」「オムツからうんこはみ出てるよ」「FUCK」と暗い目をして世のすべてのものを否定する

こうした会話を通じて、みかこさんは次のように分析します

「子どもの前には無限の希望と可能性が広がっている。なんて一般論は大ウソである 英国では生まれた時から生きてゆく階級というものが決まっている。そこから這い上がっていけるのは能力と意志力に恵まれた一部のアンビシャスな子どもたちだけで、大半は有限の希望と閉ざされた可能性の中で成長し、親と同じ階級の大人になっていくのだ と言う殺伐とした現実がここにいると嫌と言うほどわかる

問題児たちのあまりの過激な行動に、みかこさんは「脳がぶち割れて絶命するのではないかと思ったことも1度や2度ではなかった」として、託児所の責任者に「こういう仕事はわたしには向いていないと思いますので、辞めます。そもそも子どもなんて大嫌いですし」と言うと、「あなたのような人は、うちのような託児所には向いているわ だって、あなたは子どもというものに対して全然夢を抱いていないんですもの 騙されたと思って、もう少しやってごらんなさい」と説得され、ずるずると続けることになります

そうした中、他の子どもに残酷な仕打ちをしていた2歳の野獣児アリスとの別れがやってきます

リボンを渡すと、「NO!」と言って投げ捨ててしまう。「わたしは醜い」「そんなことないよ。アリスはプリティだ」「プリティな服を着ても、わたしは醜い」「そんなことないよ。どうしてそう思うの?」「・・・そう言われたから」「誰に?」と尋ねるとアリスはきゅっと口をつぐむ そして、アリスはレースの飾りのカチューシャを差し出して「これを着けて、鏡を見てごらん」と言う。いつもアリスに言っていた台詞そのままだ わたしは言われるままに鏡の前に座って自分の顔を見た。ひらひらのレースのカチューシャを着けた44歳のばばあの滑稽な顔がそこにあった 「You are pretty.You are very pretty」。アリスはわたしが彼女にそうしていたように、わたしの背中をさすりながら言う 「ありがとう、アリス」。アリスは大きく見開いた目で、鏡の中のわたしをまっすぐに見て言った。「I’ll miss you」。ありきたりの言葉が、わたしのこころを蹴破った

みかこさんは「文庫版あとがき」の中で、「そうした時期に書かれたものをいま読みかえすと、はっきり言って玉石混交です」「この本には、わたし自身が戻ってきては読み返すだろう文章が含まれています。その度にわたしは嫉妬し、くそったれ、いつでも辞めてやる。ノー・フューチャー。と思うことになるのでしょう その覚悟が『玉』を書くための条件だったと思い出し、また振り出しに戻るのです」と書いていますが、その『玉』の一つが上記のアリスとの別れの文章だと思います

第2章には映画評・書評・アルバム評が収録されていますが、内容が英国中心、ロック中心で、残念ながら興味を抱く範囲がみかこさんと異なり十分理解できませんでした

ただ、本書は第1章だけでも読む価値のあるエッセイ集だと思います お薦めします

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