<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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これで最初で最後のタイ旅行、と思ったバンコク2泊3日白タクの旅は、1回では終わらず何回もリピートを繰り返した。
一応合計20回までは私も丁寧に数えていて、旅の資料もちゃんと整理していたのだが、それ以降は数えるのも資料を整理するのも面倒になり、今では何度訪問したのか記憶はグチャグチャだ。
でも白タクを使ったのは最初の一度っきりになった。
いま、プラトーナム辺りの中級ホテルの前で屯する白タクを見るにつけ、懐かしさがこみ上げてくる。
かといって、流しのメータータクシーはよく利用するようになった。
なんといってもバンコクは暑い。
その暑さは大阪の真夏に匹敵するものがあり、徒歩の移動=死を意味するのではないか、と思えるほど過酷である。
従ってスカイトレインや地下鉄が通じているところはそれらを利用するが、路線バスは文字が読めない、言葉が通じないなどのような問題点が影響し、まだ思うように目的地に行けないことがあるので、辺鄙なところ、例えば南バスターミナルへ行く時にはタクシーを利用することが多い。
そのタクシーよりも利用回数が増えたのがバイクタクシーなのであった。

バイクのタクシー。
バイクタクシー。
日本にはもちろん、ない。

バイクタクシーを初めて利用したのはベトナムなのであった。
ホーチミン市ことサイゴンに到着した私は、空港からタクシーに乗って予約していたドンコイ通りのホテルにチェックインをした。
ホントは著名なマジョスティックホテルに宿泊するつもりだったのだが、予算をケチってマジョスティックホテルにほど近いビジネスホテルを予約してしまったのであった。
さて、これから街歩きをしようと通り出て歩き始めた。
この時もそう何度もベトナムに来るとは思えなかったのでさっさと一日ツアーなんかを申し込んで機能的に動かなければ時間がもったいない、と思った。
ガイドブックによると、ベトナムでは「カフェ」というのがあって、そこでツアーを申し込むことができると書いてあった。
そのカフェの有名所である「シン・カフェ」や「キムカフェ」といった店はドンコイ通りではなく、ファングーラオ通りというところにあり、少しく遠い。
歩いて行けない距離ではないが、ここサイゴンもバンコク程ではないにせよ、暑い。

そんなことを思いながら歩いていると、ホンダスーパーカブを傍らに止めたお兄さんが英語で話しかけてきたのだ。
「タクシー?」
タクシー?
見たところ周囲にタクシーらしき自動車は止まっていない。
もしかすると白タクか。
雰囲気が初めてバンコクを訪れた時に使ったロイヤルホテル前の白タクの運ちゃんに似ている。
「タクシー?」
彼はもう一度言った。
「バイクタクシー?」
おお、バイクタクシーの兄ちゃんなのであった。
しかも白バイクタクシーなのであった、と思う。

バイクタクシーはバンコクでもあることを知っていて、認可番号と思しき番号のついたジャケットを着て走っているバイクタクシーをよく見かけたが、なんとなく「危なそう」と思っていたので利用したことがなかったのだ。
バンコクは交通渋滞も激しく、恐ろしく交通量も多い。
渋滞する自動車の群れの中をバイクですり抜けていくのは、
「50ccに乗ったらあきませんよ。わかりましたか。免許もダメです」
と言っていた高校の時の生活指導の先生の言葉を真摯に思い出すほど危険性を感じて、躊躇していたのだ。
しかし、サイゴンは違った。
ここサイゴンは大通りといえば2輪車がメインでそのバイクの群れは恐ろしく自然なのだ。

「ファングーラオ通りまでいくら?」

すでに値段交渉に入っている私なのであった。
記録していなかったのでいくらだったか忘れてしまったが、大変安い金額を提示されたのと、運転手の兄ちゃんが比較的真面目そうだったので即決して、ファングーラオ通りに向かうことにしたのだった。
バンコクでバイクタクシーに乗るとヘルメットをかぶらなければならない。
これが誰が冠ったかわからないようなヘルメットを渡されて、
「うわー、きったなー」
となるのだが、サイゴンではヘルメット無しでもOKなのだという。

私はスーパーカブの後ろ座席にまたがり、ヘルメット無しでサイゴンの街を疾走した。
風が耳をなで、心地いい。
違法で、そんなことしてはいけない、と云われそうだが、バイクはヘルメット無しがいかに清々しいものか改めて思い出したのであった。

サイゴンのバイクタクシーはバイクの爽快さを思い出させてくれる、なかなか憎めない存在なのであった。

つづく

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