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ミャンマーでは、タクシーは外国人が利用できるものと、そうでないものにわかれていた。
当然のことながらミャンマーでは私は外国人なので、外国人の乗れるように認可されたタクシーに乗らなければならなかった。
急激な民主化が始まってから私はまだ一度も出かけていないのでわからないのだが、少なくとも軍政時代はそうなのであった。
外国人を乗せてもいいタクシーはナンバーが黒。
そうでないのは白。
白タクがあるかどうかは分からないが、軍政時代のミャンマーではあまり違法なことをすると面倒なことになるかも知れないと思い、ルールに則った規則正しく礼儀にかなった旅スタイルを厳守したのであった。

ヤンゴンやマンダーのような大きな街はともかく、田舎へでかけるとチャーターしていないとタクシーがない場合がある。
カローという街の秋祭りへ出かけた時は昼間歩き回ったこともあってかなり疲れていた。
カローの祭は各村々が自分たちで作った打ち合わげ花火をお寺に持込み順番に点火して、その暴発ぶりを競う結構乱暴な祭で、それはそれで非常に面白い。
このカローの祭は”地球の歩き方”にも掲載されておらず、たまたまカローを初めて訪れた際に遭遇したわけだが、疲れていても観るだけの価値はある素朴だが、面白い祭なのだ。
私のカローでのホテルはカローホテルという英国風の瀟洒な建物が印象的な素敵なホテルだ。
第二次世界大戦中ではこの地域における日本軍の司令部が置かれていた場所でもあった。
建物はその当時のまま。
カローそのものにも一時はかなりの日本人将兵が滞在していたという。
初めて訪れた時に、そんなことを知ったものだからこの街がすっかりお気に入りになってしまったのであった。

で、いざ祭の晩になったら疲れてホテルに歩いて戻るのが極端に億劫になってしまったことがあった。
祭の会場になっているお寺からホテルまでは歩いて20分ほどかかる。
祭は面白かったのだが、クタクタだし、早くホテルに戻ってビールでも飲みたいと思ったのだ。
カローのような田舎町で流しのタクシーを見つけるのは容易ではない。
日本でも田舎では流しのタクシーなんてほとんどいない。
ましてやミャンマーである。
タクシーそのものが無かったりなんかする。

そこで目をつけたのが馬車なのであった。

ミャンマーでは田舎の街に行くと乗合馬車が活躍している。
タイの田舎行くとソンテウが主な乗り物になるが、ミャンマーではガソリンの入手が難しいことからか、コストの問題か、馬車が主力となる。
カローでも馬車が活躍していて祭の会場の近くで客待ちをしているらしい馬車を捕まえて、
「ホテルまで行ってくれるのか?」
と、ガイドさんを通じて聞いてみた。
他の国での滞在のように自分自身でではなく、ミャンマーではガイドさんをお願いしていたのだった。

なぜミャンマーではガイドさんをお願いするようになったのか。
その理由はまた別の機会にということにして、ガイドさんを通じて運転手ならぬ馬車の御者に尋ねたところ○○チャットで行ってくれるということなので、馬車を使うことにしたのだった。
馬車に外国人認可もくそったれもないのかもしれない。
ちなみに馬はウンコたれなのであった。

何度も馬車は見てきたが、乗るのは初めてだった。
まず乗り方がよくわからない。
後ろから乗るのは分かるのだが、トラックの荷台のような乗車位置で、屋根になる幌もかなり低く、荷台によじ登り這いつくばらなければならない感じだ。
小柄なミャンマーの人たちはいいけれども、日本人の中でもどちらかというとデカイほうの私はかなり、乗りにくい。

「なにしてんるんですか。馬車に乗れませんか(笑)」

などとガイドさんに誂われながらも、なんとか乗って座席に腰をかけた。
見かけよりも狭く感じたが、それは幌が低くて景色がよくみえなかったためでもあった。
馬車に乗って景色を楽しむのは結構難しそうだ。
尤もこの時は夜だったこともあり、そんなことはどうでもよかったのだが、やはり、馬車はなかなか風情があった。

走りだすとパカパカパカパカという蹄の音が嬉しい。
静かだ。
ミャンマーでは馬も小柄だが、さすがに力持ちと見えて、軽快に走って行く。
自動車と違ってエンジン音はないし、スピードはゆっくりなので快適だ。

そうこうしているうちにホテルに到着。
自動車のタクシーと違うのは、馬車は生き物が引っ張って動いているので、なんとなく馬に対しても「ありがとう」という気持ちが生まれてくることなのであった。

電気自動車リーフもエコでいい。
プリウスもしかり。
でも、馬のエコと、生身の動物という生きとし生けるものに対する感謝と親しみまでは生まれない。

馬車は究極のタクシーなのかもしれないと、今思うのであった。

海外のタクシーは実に様々。
肝心なことは事故よりも事件に巻き込まれないようにすることが重要なのだ。

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