<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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ラーメン屋というのは何故にこんなに自己主張が強いのか。
例えば、
「京都〇〇通りで生まれて30年...」
とか、
「福岡の〇〇ラーメンを食べて衝撃をうけ、豚骨を極めるべく...」
とか、
「お釣りのないように厳守してください...」
とか、
「ちゃんと並ぶべし。自転車を入り口に置かないこと」
とか、
言ってみれば「それがどうしたんだ」という自己欺瞞や「客を客とも思わない」ぞんざいな発言をするところが少なくないように思う。
実際はどうかは知らないが、総主張する文章を大きくかげたり、入り口にダンボール製プレートに寺西化学工業製マジックで中学生のような汚い字で大書きしたりしているところを見ると、どうもいい感じがしないということも正直な感想である。

先日名古屋で入ったラーメン屋もそんな店の一つだった。
名古屋ではそこそこ著名なチェーン店のようだがメニューの横のご託がなかなかであった。
要約すると、
「この店の創業者は、九州のあるラーメンを食べて感動をした。あまりに感動をしたものだからそれを名古屋で再現しようと切磋琢磨した。それでもなかなか実現できなかったので修行の旅に出て自分の味を見出し、ついにこの店を開いたのだ〜」
みたいなことが書かれていた。
だから、
「うちのラーメンは美味いのだ!」
という論理なのであろう。
大変疲れる一文ではあった。

そういうこともあって名古屋の一等地に構えるその店には行列ができている。
この日、私は開店時間早々ということもあり並ばずに入ることができた。
もちろんこの店をターゲットにして立ち寄ったのではなく、昼前ということもあり単に腹が減っていたのでたまたまこの店に入ったのだ。
で、オーダーを選ぼうとするとメニューのヨコに目に飛び込んできたのは件の「主要趣意書」あるいは「創業者の苦労物語」なのであった。

目の前に文章があると無意識に読んでしまう活字中毒一歩手前の私なので当然この宣誓文書を読むことになってしまった。
で、読んで抱いた最初の感想は、
「.........ほんで、美味しいんやろな!」
ということであった。
クダクダ屁理屈を述べる前に味で勝負いただきたいと思った。
こういう苦労話や御託を色々並べる飲食店に美味いところがあるとは思えないからだ。

私はベーシックなスープの煮玉子入りラーメンとランチタイムのサービスである唐揚げセットを注文。
暫し待つこと運ばれてきたラーメンは九州ラーメン独特の白いスープでそこそこ美味そうであった。
ただ、丼の中央に渦巻状の鳴門かまぼこが1枚配置されているのが印象的なのであった。
鳴門かまぼこは直径2センチほど。
いかにも小さい。
しかもかなりの薄切りで歯ごたえはなさそう。
かまぼこのサイズに少々失望しながらスープをレンゲで掬って飲んでみると、これが美味い!
豚骨の出汁がよくできていて口に含んだ瞬間に「美味い!」と思える出来栄えなのであった。
流石に厳しい修行の旅の後に獲得したスープ。
創業者がそれを自慢するだけの価値のある素晴らしいものなのであった。

ところが、ランチサービスの唐揚げを食べてその印象は一変。

名古屋は手羽先が有名なように唐揚げも美味いことが多い。
しかしこの店の唐揚げはサイズが大きくビックリさせることを除くと、あまり良くなかったのだ。
良くないというより残念な出来栄えなのであった。

唐揚げそのものは一般的な唐揚げの倍サイズはある。
見た目は美味そうだが、実際に食べてみると「なんじゃこりゃ?」という代物なのであった。
唐揚げの上には何やらソースのようなものがかかっていたのだが、これが甘い。
ヒジョーに甘い。
唐揚げというどちらかというと塩味の大切なものに甘い汁をかけてどうするんだ。
私はこの残念な仕打ちに暫し呆然とした。
そして口直しに美味かったスープを口に含むと、愕然。
食べ合わせが悪いのかスープが美味いと感じなくなってしまっていたのだ。
「クドい」
という味に変化してしまっていたのだった。

塩辛いはずの唐揚げが甘い。
ナポリタンスパゲティの上に粒あんをドサッと乗っけて食べるこの地の文化は知っていたけれども手羽先の美味しい文化を持ちながらこの唐揚げはないやろうというものなのであった。

確かに主張の強い味ではある。
とかく名古屋は関西とも関東とも違う不思議な食文化が存在する。
しかし御託を並べて主張する前に普通のラーメンを食べさせていただきたいのであった。
独自の薀蓄を展開するのはその次で良いではないか。
ラーメン屋の味に妙な解説や御託は必要ないと感じた昼前のひとときなのであった。

帰宅してチキンラーメンで口直ししたのは言うまでもない。


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