<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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昨年のこと。
とある技術講習会でドイツ人の先生の手ほどきを受けることになった。

その技術講習会はある環境計測に伴う手法に関するものなのであったが、そこで一般的な機器を通じて測定する数値と生で測定する数値の間にいつも誤差のあることが課題に上がった。
その誤差は、常日ごろ私たちが顧客で接する「あやふやな数値」なのであった。
この「あやふやな数値」を説明するのに、いつも「誤差です」と説明していたのだが、どこかしっくりと来ないものがあった。
ちゃんと説明できない技術者としてのジレンマがあった。

なんといっても、私は芸大出。
何の因果か、巡り巡って技術屋の真似事をすることになってしまったが、出身が芸大だけにエンジニアリングのことになると、いささか劣等感を持っている。

そこでその「あやふやな数値」について質問してみたところ、ドイツ人の先生は、その「あやふやな数値」を、ある係数を含んだ数式を用いて計算してみせたのであった。

正直ビックリした。
どうしてその係数が導き出されたのが大きな関心事となった。

「先生、どうしてそういう数値が出てきたんですか?」
と訊いてみた。
もちろん私はドイツ語なんてできないので英語で訊いた。
すると先生は、
「100年にわたるドイツ科学の経験値です。」
と答えて悪戯っぽくニコッと笑ったのであった。

今考えてみれば、これは一種の絶対計算値だったのではないかと思い当たる。
色々と実験を重ねているうちに統計的に導き出された係数だったのではないか、と思えるのだ。

イアン・エアーズ著「その数学が戦略を決める」(文春文庫:山形浩生訳)は、ここ十数年の間に急速に発展してきた絶対計算に関するサイエンスノンフィクション。
コンピュータの処理能力が高度化してインターネットの登場により膨大な量のデータを簡単に処理することが出来るようになった。
このために今までは不可能だったようなデータの集計や分析が簡単にできるようになった。
その結果、多方面にわたり従来の専門家の分析や評価よりもより正確に予測のつく「数式」が現れてきた。
その数式を絶対式と呼び、本書のテーマになっているのだ。

本書ではフランスのワインの味の善し悪しから価格の予測までを、その年の降水量や気温から醸造前に評価予想を立てることから語り始められる。
数式が専門家の予想を上回り、市場に影響を与え始めてさえいるというのだ。

最も驚いたのは医療分野で、例えばGoogleを使って複数の症状を入力し検索して出てきた病名の方が、医者の見立てよりも当を得ている可能性が高いということだ。
たいてい医者の知識は大学を卒業した時点でストップしていて、勉強するヒマもないものだから、新しい知識には乏しい。
そこへいくとGoogleの検索機能は常に最新で、上位トピックをひき出すアルゴリズムが秀逸のため、約80%の確立で病名をピタリと言い当てるのだという。(間違っているかも知れませんけど)

あらゆるものが数値化され、計算式化される世界。

そのうち、
「あ~このプロジェクトは成功する可能性があるんでしょうか」、
と会社の会議で質問したりしたら、
「成功する確立は268.5分の1です、船長」
などと、Mr.スポックのように宣う人が出てくる時代が来るのかもわからない。

ところで、スタートレックで良くあるセリフの「○○分の1です」なんてセリフの数値は、やっぱりあてずっぽうなんでしょうか?

コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
Unknown (gato)
2011-05-08 20:23:10
>>ところで、スタートレックで良くあるセリフの「○○分の1です」なんてセリフの数値は、やっぱりあてずっぽうなんでしょうか?

 それがあてずっぽうである確立は13/15です、船長。
 あてずっぽうですけど。
 
 
 
ありがとうございます (監督@とりがら管理人)
2011-05-09 06:35:05
gatoさん
ありがとうございました。
やっぱり、あてずっぽですね(笑)
話はスター・トレックではありませんが、もしかすると、今回の原発事故にからむ政府や東電発表の放射線危険値や危険地域の指定も「あてずっぽう」ではないかと、最近思えているんですが、思い過ごしでしょうか。
 
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