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今年のアカデミー作品賞受賞作品「グリーンブック」を観てきた。

あの「ボヘミアン・ラプソディ」を抑えての受賞だっただけに、どんな映画なのか大いに気になっていたのだ。
それとタイトルの「グリーンブック」って何?という疑問もあった。


で、鑑賞してみた感想はといえば。

「良い映画」だった。

しかも静々としたストーリー展開で嫌味がなく上品で、それでいて強烈な人種差別への反発がある一方、クスクスと笑うことのできるスパイスが効いている。
「コメディ」に分類される映画とのことだが質の良い人間ドラマ。
最近のCGばかりで作られている映画とも異なり安心して楽しめる映画だった。

もちろん「ボヘミアン・ラプソディ」を抑えて作品賞を獲得する優れた映画だと納得したのは言うまでもなかった。

人種差別がテーマの映画といえば、とかく内容が暗く重苦しいものが多い。
私の場合はどうしてもミニTVシリーズの「ルーツ」、映画の「ミシシッピー・バーニング」を思い出す。
人権問題に直接繋がってしまいそうな残酷な描写が多く、決してニコニコ観ていられるドラマではない。
でも、内容は濃く、鑑賞後にいろいろと考えさせられるドラマでもある。
これは差別というテーマそのものが社会のダークサイドでもあるからだろう。

一方今回の「グリーンブック」はこのダークな部分を逆手にとってうまくアレンジしている。
とりわけ主人公の二人の関係が変化していく様は観ていて緊張感から清々しさに変わっていくのがなんともいえず心地よい部分でもある。

タイトルの「グリーンブック」は黒人のための旅行ガイドブックだということをこの映画のパンフレットを読むまで全く知らなかった。
1960年代まで黒人が主にアメリカ南部を旅行しようとすると、日本人の私達には想像もできないような規制があった。
それら不条理な差別を回避して安全に黒人が旅をするために必要な情報が書かれているガイドブック。
このようなものが存在したこと自体が悲劇だがこの映画では説明を加えることなく、ごく自然にその存在にスポットを当てている。

「グリーンブック」というタイトルだけでアメリカの観客はそれが何を意味しているのかわかったのだろうし、物語を想像することもできただろう。
その初期の印象はわからないが、タイトルの重々しさとは反対に上質なロードムービーに仕上がっているところに多くの人が感銘を受けたことは間違いない。

DVDになったらもう一度観たいと思う映画なのであった。


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